講演する野地博行教授
中央大学創立125周年を記念して、「理工学 学術・研究交流会」(理工学研究所など主催)が11月1、2の両日、後楽園キャンパス3号館で開かれた。会場には理工学研究所や大学院生らによる研究成果約60件がポスター展示され、研究者と来場者らが活発に意見交換する場面がみられた。
交流会のメインイベントは、1日に行われた東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻教授の野地博行氏の特別講演会。研究の発展が著しい「ナノバイオ」の研究者である野地氏は、『生体分子機械のナノメカノケミストリー&デジタルバイオ計測デバイス』という題目で講演した。
野地氏は、最初に、生命体の細胞の中で重要な機能を担うタンパク質を顕微鏡で撮影した動画で紹介。スクリーン上には、きれいな蛍光色を発しながらあちこち動き回るタンパク質が映し出された。この“運動”をするタンパク質を見た野地氏のお子さんからは、「これは何の虫なの?」と質問されたというエピソードも紹介した。これは、最近の研究成果で、まだ高校の生物や化学の教科書には書かれていないという。
また野地氏は、世界で初めて顕微鏡で見て確認した“モータータンパク質”を紹介。この“モータータンパク質”は、大きさがナノメートルサイズ(1メートルの10億分の1)しかなく、細胞のミトコンドリアに存在する小さな物質で、細胞のなかで機械のモーターのように回転する。
この“モータータンパク質”が回転することによって、「生命体が活動するのに必要なエネルギーをつくり出す」という。しかし、その仕組みには謎が多く、30年程前から世界中の研究者が研究に取り組んでいた。東京工業大学の研究グループにいた野地氏は、回転する様子を実験で示す研究に取り組み、1997年にその様子を確認し、発表した。
野地氏は、「研究成果を出すのに、研究室の方々と膨大な時間を費やしてディスカッションをした。また他の大学の先生の新しい実験技術が無くてはならなかった。さまざまな研究者との協力のもとでの成果です」と振り返った。
最後に野地氏は、若い研究者に向けて「今までにない新しい発見や解明は、学際領域から生まれる。そこでは、頭で悶々と考えるより、実際に手を動かしてまず“やってみる”ことが何より重要だ」と自身の経験をもとにしたメッセージを送った。
(学生記者 小室靖明=理工学研究科物理修士1年)