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トップ>Hakumonちゅうおう【2010年夏季号】>【創立125周年を迎えて】「国際化」推進座談会 ~世界トップクラスの大学を目指して~

Hakumonちゅうおう一覧

【創立125周年を迎えて】「国際化」推進座談会

世界トップクラスの大学を目指して地球的視野に立ったリーダー育成を

 中央大学は、世界トップクラスの大学を目指し、「国際化」の推進に積極的に取り組んでいる。建学の精神である「實地應用ノ素ヲ養フ」に立ち返り、「地球的視野に立って諸問題の解決へ向けてリーダーシップを発揮しうる人材を育成する」ことを使命に、諸施策を推進していくことにしている。そこで「国際化」推進を担当する3人の先生と、海外インターンシップの支援活動をしている学生、そして本学で4年間学んだ経験のある中国人留学生の5人に、「国際化」の現状と展望について語り合っていただいた。 (編集室)

出席者
荒井敬彦 執行役員会特別顧問 国際戦略担当
林田博光 商学部教授 国際化推進担当学長専門員
ヘッセ・スティーヴン 法学部教授 国際交流センター所長
宮崎野の香 文学部3年
徐 菲鴻 2009年法学部卒
司会
伊藤 博 「Hakumonちゅうおう」編集長

伊藤 早速ですが、まず「国際化」について、皆さんそれぞれの立場から見解をお聞かせください。国際ビジネスに関わられてきた荒井特別顧問からお願いします。

「若い人は国際的センサーを働かせて」と荒井特別顧問

荒井 国際化とは大上段に構えなくとも、すでに私たちの日常生活はそうなっているのです。私は今朝、鮭と納豆と味噌汁という典型的な和食を食べてきましたが、鮭は南米チリ産です。納豆の大豆はアメリカまたは中国産です。味噌汁の味噌もしょうゆも原料はみんな輸入物です。したがって、私どもの体はすでに国際化されたボディなのです。

 着ているものも、Made in China、Made in Taiwan、Made in Vietnamのものが多いです。そのぐらい生活の中で日常的に国際化は浸透しているわけです。それだけに、日本の将来を考えたとき、かなり意識して国際的な事柄にセンサーを働かせていかないと、日本は世界でだんだん孤立化しかねない。

 リーマンショック、最近ではギリシャの財政危機の問題で世界中にあっと言う間に影響が広がって、東京株式市場も毎日その影響を受けているわけです。そういう意味で、特に若い人たちには国際的な事柄にセンサーを働かせていただきたいというのが私の率直な考えです。

伊藤 若い人たちを教育する立場から林田先生いかがですか。

林田博光 商学部教授
国際化推進担当学長専門員 前副学長 元国際交流センター所長

林田 いろいろ問題がありますが、留学生の受け入れ数が大学の国際化の程度を示す一つのバロメーターになっていますね。もちろんただ多ければいいというものではありませんが。

 教育の現場では、留学生の国際間のモビリティが高まっています。そうした中で、学ぶ側の国際化に応えるために教育する側の国際化が今、求められています。

 ヘッセ先生はアメリカから日本に来られていますが、毎年、学生諸君と一緒にインドへ行っておられます。若い人たちの国際交流が日常的になってきている時代です。そういう大きなうねりの中で、中央大学はどのような存在感を示していくのかといったことが問われる時代に今、入ってきたのではないかと思います。

伊藤 ヘッセ先生は、国際化の最前線で学生たちを教育されていますが。

ヘッセ 今まで日本人は「国際化」と言うとアクションと思っていますが、これからはアクションだけではなくて、考え方が一番大事だと思います。先週、私はドイツへ行ったのですが、飛行機の中で私が箸で食べていたら、隣の日本人が私を見て、「おお、箸の使い方が上手ですね」と(笑)。彼女はスプーンで食べていたので、私が「おお、スプーンの使い方が上手ですね」言ったら、彼女は「ああ、失礼しました」と言ったのです(笑)。

 箸、味噌、寿司といったものはもう日本のものではなくて国際的なものです。インドへ行ったら、インドの人たちの考え方を理解するだけではなくて共感する。ほかの国の人たちの考え方がアクセプトされている、それが国際化です。中央大学ではそういう国際化をこれからつくらなければなりませんね。

まずは「胃文化理解」から

林田 最近、異文化理解という言葉をよく聞きますが、「異文化理解」は「胃文化理解」ですね(笑)。例えばインドの人はこういうものを食べているんだ、というストマックの文化、食文化を知っていくこと。その国の固有の風土の中で作られた物を一緒に食べたりすることが、まずは理解の一歩なのだと思います。「異文化理解」はまず「胃文化理解」からということです。

荒井敬彦 執行役員会特別顧問
国際ビジネスコンサルタント 法学部卒。カリフォルニア大学(UCLA)留学。(株)リコー、ドッドウエル、住友スリーエムを経て、Tokyo Consulting and Trading Co., Ltd.設立

荒井 アジアほどストマック文化の異なるところはないです。彼らとコミュニケーションが一番取れるのはローカルフーズを一緒に食べること、飲むことなのです。家庭料理を食べることが一番ですが、レストランでも、たとえばイスラム文化圏に行けば豚は食べられないわけです。インドへ行けば牛を食べない。まさに日常的な食事、フーズの文化が一番コミュニケーションが取りやすいのです。

 それから音楽で、できればギターが弾けるとかピアノが弾ければいい。あるいはスポーツ。一緒に遊ぶわけです。食べて、飲んで、遊ぶ。もちろん言葉ができればいいですが、相手を知り、共感しあうという点ではものすごくそれが有効です。我々は「飲みニケーション」とよく言いますけれども(笑)。

林田 賛成ですね。

伊藤 ヘッセ先生が指摘されたのは、その国の風土、文化を理解し、共感することが国際化ということですか。

ヘッセ そうですね……。でも、それはなかなか難しい。私は日本に来てもう19年ぐらいになるので、日本人の考え方にはだんだん慣れてきましたけれども……。たとえば日本では、お父さんが家にいないことが多いとかで、お母さんが強い(笑)、それは子どもに影響がありますね。でも、外から日本の文化を勉強すると、そういうことはわからないから、国際化は本当に時間がかかりますね。その国へ行って勉強して帰るだけでは足りないと思います。その国の方と一緒に住まなければならないと思います。

伊藤 菲鴻さんは中国から日本へ留学されて、中央大学で4年間学ばれ、そして今は東京大学で勉強されています。ヘッセ先生から国際化というのは時間がかかるというお話がありましたが、留学体験を通して、そのへんはどうお感じになりますか。

国際的マインドを育ませる

 私はヘッセ先生の今のご意見にすごく共感します。というのは、この前、アメリカ人やイギリス人の学生たちとご飯を食べに行ったときに、せっかくだから日本食を食べようと言っても、彼らはハンバーガーが食べたいと言うのです。

 日本ではよく「外人」という言葉を使いますよね。けっこう、日本食が好きな外国人や、日本の社交辞令をよくわかっている外国人もいて、「外人」というのはたぶん人種的なカテゴリーではなくて、社会的なカテゴリーなのではないかと感じました。つまり一つの国に来て、その国の食文化など、いろいろな文化を学びたがる視点がすごく大事なのではないかと思います。

 大学の国際化、つまり人材の国際化のスタートは、まったく海外のものに興味がなかった人に興味を持つように手助けをしてあげることだと思うのです。先ほど荒井さんがおっしゃっていた、センサーを働かせる、つまり外の情報に対して当事者意識を持たせることが、大事なのではないかと思います。国際的なマインドを持つことが大事ではないかと思います。

伊藤 アイセック(編集室注:AIESEC。世界107の国と地域にネットワークをもち、海外インターンシップ事業を通して国際社会で活躍し得る若者の育成に取り組む)で海外インターンシップの活動をしている宮崎さんは、どういう動機で始められたのですか。

アイセックでは「国際化が起きている」と宮崎さん

宮崎 私がアイセックに興味を持った理由は二つあって、大学4年間で何か一つしっかりしたことを成し遂げたかったというのが、まずありました。もう一つは、国際的なものに興味があったので入ったのですが、入ってからは、続けることに自分は重きを置いてきました。というのも、アイセックでは世界各国の人と出会うので、実際に自分がその国に行かなくても日本にいるだけで、国際化が起きているのではないかと思っています。昨日も夜中に、インドの人とチャットしていたのですが、今、そういった環境に自分がいることは、とても貴重な経験だと思います。

 私は渉外でいろいろな企業の方々にお会いする機会が去年は特に多かったのですが、皆さん、私たち学生をすごく支援してくださるのです。そういった(海外インターンシップに関わる)学生が必要だとも言ってくださります。私たちはその気概をもっと持つべきだと感じています。

減少する日本人留学生

ヘッセ・スティーヴン 法学部教授
米バーモント法科大学院卒 環境政策専門 国際交流センター所長

ヘッセ ご存知でしょうけれども、最近、外国へ行きたくないという学生が多いです。外国は危ないし、面倒くさいし、あまりチャレンジしたくないという学生が増えていますが、どう思いますか。アイセックは逆ですか。

宮崎 逆ですね。特に今年は顕著なのですが、アイセックに入ってきた1年生の数がどこの大学も格段に増えたのです。ということは、日本人の学生がそういった意識を持ち始めたということがあるのではないかと思います。

 ただ、就活が学生にとって一つのネックではあると思います。4年間で卒業するために、3年生のころから就活をやらなければいけない。大学4年間の中でたぶん一番活動できる3年生で、就活に時間を割かれてしまうというのはとってももったいないことだと思います。アイセックには5年生がいます。学生のうちにもっとやりたいことがあるからと、就活を蹴って5年生で活動して、海外のアイセック事務所で働く人もいますし、インターンシップに1年間行く人もいます。そういった学生は正直、増えてきていると思います。

伊藤 一般的には、海外留学する日本人学生が減少しているということですか。

ヘッセ ええ、少し。それはちょっと怖いことだと思います。

荒井 日本全体で海外で学ぼうという学生が少ないという傾向が見られます。たとえば最近では世界一の大学のハーバード大学では日本人(留学生)は1名でした。

ヘッセ そうですね。2009年の9月から1名だけ。

荒井 中国が500人、韓国が300人いましたけれども。

ヘッセ それはハーバード大学の学部の1年生。大学院生はもっといっぱいいますけれども、去年、2009年9月に入った日本人は1人だけです。この数十年で本当にいちばん少ないです。

 アイセックの学生たちは本当に大事だと思います。アイセックの学生が外国へ行った経験を持って日本に戻ってきて、周りの友達と話をして、“受粉”のようにほかの周りの学生に、「ああ、僕もできる」「宮崎さんもしたので、私もやりたい」と思わせる。それは本当に大事と思いますね。

伊藤 なぜ日本の学生は海外留学しなくなってきたのでしょうか。

林田 よく言われている理由として二つありますね。一つは今、宮崎さんがおっしゃった就活の時期が早くなって、留学もしたいけど、就活に乗り遅れてはいけないということです。それと留学には親の経済的な援助が必要だとすると、今の厳しい経済状況の中でそう多くの親御さんがお金を出してくれないのではないかと思います。大きいブレーキが少なくとも二つ掛かっているのではないかと思います。

荒井 確かにハーバードは授業料が4万ドル以上ですね。100円換算としても年間400万円ですから膨大な金です。だから私費ではなかなか行けないのは確かですけれども、ほかの国から見たら日本はリッチカントリーのはずですよね。でも、行かないというのはちょっと違う理由もあるのではないかと思うのです。

海外を見る動機付けを

林田 私も詳しく調査したわけではありませんが、最高レベルの学問をすることができる言語というのは英語と日本語らしいのです。これ以外の言語を使っている人たちが高いレベルの学問をやろうと思えばほとんどの場合、英語を勉強するということになります。そうなると最先端の研究が行われていて、ブレーンが集中しているのはアメリカだろうと思いますから、英語を学ぶことを否定する人は誰もいないと思います。

 ただ、日本の大学での授業は、たぶんアメリカでやっている授業と内容的には変わらないと思います。すばらしい研究であればすぐに翻訳されるでしょうから、アメリカに行かなければ学べないものが、どのくらいあるのかということが留学に対してブレーキになっているかもしれませんね。簡単に海外に行けますから、掻き立てられるような憧れをいだく人が少なくなっているのでしょうか。

伊藤 菲鴻さんは中国から中央大学に留学された体験を通して、留学したい大学というのはどういう大学だとお考えですか。

徐菲鴻(Feihong XU)さん
2009年法学部卒 東京大学新領域創成科学研究科 国際協力専攻

 難しい質問ですね。一つは魅力的な学生たちがいるとか、魅力的な教育を行っているということが大事ではないかと思います。私が中央大学に来た理由は、高校3年生のときに英語のスピーチ・コンテストの全国大会に出て、横浜だったのですが、ついでに大学を回ろうと思って中央大学のオープン・キャンパスに来たら、先輩たちがすごく生き生きしていて、この大学、いいなと思って、それが決め手になったのが一つです。

 もう一つは、パンフレットの法学部の紹介で、「やる気応援奨学金」のプログラムがすごく魅力的で、決め手はその二つだったのです。あと中央大学は法律についてすごくいい教育をしているということで、実際に学生が考える魅力的な大学というのはそういうところではないかと思います。

 それと関連して、日本人の学生たちが海外に行くモチベーションがないというのは、一つには海外の世界を見る動機がまだないのではないかと思います。中国の場合、ハーバード大学を卒業した多くの先輩がすごく活躍していて、それが今の学生たちのモチベーションになって、自分たちも行こうという大きな動機付けになっていると思います。日本でそのように活躍している人たちが学生の目からはあまり見られないというのが一つです。

 それから、日本という社会は単一民族で、みんな同じように生きている雰囲気があります。アメリカの大学に行くと、「University」が「universe」から来ているように、つまり大学に何でもあります。学生の多様性もあるので、学生の目から見ると可能性はかなり広いということではないかと思っています。

欲しい外国人留学生との交流場

伊藤 宮崎さんは、中央大学の国際化の現状をどうみていますか。

宮崎 正直、(国際化)されていないと思います。そういった環境にはないと思います。いろいろな日本人の学生と話していると、中央大学は保守的で閉鎖的、閉じこもっているというイメージがあるのです。立地的なものもあると思いますけれども、外に出て行くという環境があまりないというのはあると思います。だから学生自体のマインドもそうだし、国際化はまだあまりされていないと思います。

荒井 国際化の環境にないというのは、具体的にどういうことですか。

宮崎野の香さん
文学部3年 特定非営利活動法人アイセック・ジャパン 中央大学委員会委員長

宮崎 まず、留学の話から言うと、小さいことから言えば休学をするのに学費の半分を払わなければいけない。それだけリスクを負うことになります。行くのであればかなりのリスクを背負って行かなければいけないということで、行きたいけれども、すぐポンと行ける状況にはないです。法学部の「やる気応援奨学金」は、ほかの学部の学生でも知っているぐらい有名ですけれども、ほかの学部にはそういう奨学金はないので、やはり難しい。

 また学内を見ると、留学生の数が少ないというのもあって、普通に留学生とすれ違って気軽に声が掛けられる状況にはないというのがあると思います。早稲田は留学生が3000人いるということですし、かつ学部としても英語で授業をやるのが当たり前の学部があります。そういったところで学生の意識のレベルも差があると思います。

伊藤 身近に留学生を感じないという指摘がありましたが。

林田 出会う場所がないのではないでしょうか。

ヘッセ 場所は本当に大事です。けれども、中央大学の外国人(留学生)はほとんどアジア人です。だから、日本人にとってその留学生は青い目の外人とは違うという問題もありますね。

留学生の国際寮建設を

林田 出会う場所というのは、寮だったりするのだろうと思います。今、ヘッセ先生が先頭に立って国際寮をつくる提案をしているところです。そこ(国際寮)にグローバル・ラウンジのようなものがあれば、留学生と出会え、いろいろな国のテレビも衛星中継で見られる。今は、そこへ行けばどこかの国の留学生と会えるという場がないし、残念です。

宮崎 Cスクエアがありますよね。あのCスクエアは場所としてはとてもいいので、あそこに集まれればいいと思います。

ヘッセ そうですね。

「グローバル・ラウンジを」と林田教授

林田 なるほどね。でも場所としてCスクエアが最適かどうか問題はありますね。

荒井 中央大学の国際化はまだそういう環境にないということでしたが、まずはフィジカルに目に見えないとだめなんです。僕は去年からこの仕事を大学の執行役員会から仰せつかったのですが、国際交流センターを探すのに一苦労したのです(笑)。モノレールから降りて、キャンパスのマップを見たら、ない。書いていないのです。総合政策学部の中にあるということを聞いて、総政のビルディングへ行ったら、ようやくそこにあった。やはりフィジカルに見えるようにしなければいけない。

 そして、建物です。今、進められている国際寮をつくろうという計画ですが、これはやらなければだめです。箱ものをつくることによって、そこが注目される。海外から来る学生も、宿泊は整備されているし、セキュリティもあるということで、快適性が一つの魅力になるわけです。環境というのはそういうことだと思います。

林田 そうですね。

伊藤 林田先生、韓国の大学ではどうですか。

林田 たとえばトップクラスの延世大学ですが、私が覚えている数字では、延世大学が海外に送り出している学生が1000人ぐらいいます。受け入れが4500人ぐらいでしょうか。最近、電子ブックが話題になっていますけれども、延世大学の図書館へ行くと新聞もそうなっています。図書館に行って勉強することがもう当り前という感じになっているんです。もちろん頭のいい子たちが来ていますけれども、ここで勉強して、さらに1番になってやるんだという意欲をかき立てるような雰囲気が用意されているんです。

伊藤 荒井先生は目に見えるかたちが重要だとおっしゃいましたが。

林田 大事ですね。

「21世紀館」に国際センター

荒井 「21世紀館」(編集室注:多摩キャンパスに建設する計画の中央大学の過去・現在・未来を結ぶ複合施設の仮称)は「国際交流センター」となるべきなのです。21世紀なんですよ、まさに、これからは。

 留学生を増やすとか、英語の授業を増やすというのは、今、大学の国際化水準を評価する基準になっていますが、やはり日本人の学生にもっと国際的なマインドを持たせることが大事で、インタラクションをする場や機会を提供することが大事ではないかと思います。

 私は4年間在学して、最初の二年間は日本語の授業がありました。そのクラスは学部を超えた授業で、法学部以外の学部の学生もいました。ほかの学部の学生たちはかなりの時間数を使ってバイトをしているので、授業を終えると、すぐバイトに行ってしまう。だから留学生は、日本人の学生と交流したいけれども時間がないということを言っていました。留学生と日本人の学生との交流の手助けをするのも重要ではないかと思います。

 たとえば留学生に対する奨学制度の充実をさらに図るべきです。また、各学部で一つの部屋を使って、お昼の時間でもいいですし、何かの話題についてみんなで語り合う場を提供する。外国人と交流するために、そうしたオーガナイズした場があったほうがいいのではないかと思います。

ヘッセ 100パーセント、賛成します。

荒井 目に見えるかたちというのは建物もそうですが、イベントのあり様を考えなければいけない。もう半世紀前になる話で恐縮ですけれども、私は1960年(昭和35年)に中央大学を出て、UCLA(University of California at Los Angeles)へ留学しました。UCLAでは留学生のフェスティバルがしょっちゅう企画されました。留学生に対して大学側、あるいは学生のボランティアが、内容のあるイベントを企画するわけです。大学が場所と機会、場合によってはマネタリー・サポートもする。そういうところを意識的にやらないとインタラクションにならないということです。

林田 韓国の延世大学ではグローバル・ラウンジというところで、今、荒井先生がおっしゃったようなイベントができるわけです。頻繁に何らかのイベントをやっていますから、それで延世大学の学生さんが、ああ、きょうはネパールの何とかをやっているのかと、自然に交流がうまれています。

ヘッセ 中央大学でもインターナショナル・センターやインターナショナル・ラウンジが入った「21世紀会館」をキャンパスの真ん中に造れば、国際化は中央大学のポリシー、政策になります。今、アジアで(大学ランキングが)2番目か3番目の香港大学にはインターナショナル・ラウンジがあって、ネパールウィーク、インドウィークというように毎週、違う国のイベントがあります。誰でも入って食べたり、音楽を聴いたりできる。こういう場所が本当に大切です。

 宮崎さんが言ったCスクエアはいいですね。Cスクエアはいいですけれども、実は私の考え方はもうちょっと真ん中のところです(笑)。各学部の近くにある建物ですね。だから食事のときや、授業が終わったときに、3、4分歩いて国際センターに入れる感じが本当に大事です。

林田 そこにフード・コートのようなものがあってもいいと思います。

国際化でブランド力高める

荒井 大学間の競争が激しくなってきていますから、生き残っていくには全国から優秀な学生、高校生を集めなければならない。そのためには大学の魅力を高めていかなければならない。もちろん司法試験など国家試験の合格者も伸ばしていく。しかし、今、中央大学はブランド力のランキングで私立大学の9位になっていますが、はっきり言って国際性がなければブランド力は上がりません。中央大学に行ってよかった、中央大学を出てよかった、と評価され、ブランド力を上げるには、国際性がなければならないということです。

伊藤 教育的観点から国際化はどうあるべきとお考えでしょうか。

林田 これは難しいとは思いますけれども、教育のための言語をどうするということにまで行かざるを得ないだろうと思います。私たちもよく知っている大学で全部、英語で授業をやる学部ができたりしていますけれども、現時点ではどこまで評価をしていいのかわかりません。しかし、日本人の学生諸君のコミュニケーション能力を高める、あるいは外国語の運用能力を高めるという意味で、英語で行う授業を増やしていくべきだと思います。

 もともと言語能力が高い学生は、さらに伸ばしていかなければならないけれども、そうではない、今は言語能力が高くない学生も中央大学で学んでいるうちに、海外に行って何かにチャレンジするんだ、という気持ちにさせていくことがやはり必要だと思います。

 たとえばゼミに海外から多くの留学生が入る、あるいは受け入れるといったことが求められるのではないかと思います。留学生が留学生だけで固まって勉強しているうちは、日本人学生とのインタラクションができていないわけです。日本に留学したら日本の学生と親しくなったり、日本の文化を楽しんだりできるということが魅力になっていなければ日本に来ないと思います。

ヘッセ 最近、五つぐらいの国へ行っていろいろな話をしましたが、日本語で勉強したい外国人は少なくなっています。彼らは日本に来る前に2年、3年、日本語を勉強しなければならないのでつらいです。

 でも日本のビジネスやマネジメント、日本の文化に深い興味があって、日本で勉強したいという外国人の学生は多いです。だから、これからはそういう学生のためのプログラムをつくらなければいけない。日本語ができるわけではない学生が増えてくると、中央大学の学生は(語学習得のため居ながらにして)駅前留学ではなくて、学内留学ができる。ですから、そうやって生(なま)外国人が増えてきたほうがいいと思います。

荒井 おっしゃる通りです。留学生の寮を造る考えの中に、住宅公団の3DKの部屋を借り上げるという発想があります。2部屋は留学生2人、1部屋は日本人を入れようというコンセプトなんです。共同生活をすることによって刺激し合って学ぶというわけで、そういうやり方はほかの大学ですでにやっています。今、我々も検討しています。

宮崎 シェアハウスのような感じですか。

ヘッセ そうですね、シェアアパート。

宮崎 一人ひとりの部屋だけれども、ご飯を食べるのは一緒というような寮があるといいですね。

ヘッセ ほかの大学は、たとえば四つの部屋があって、一つの台所を使って、日本人1人と外国人3人とか、あるいは2人と2人とかで共同生活しています。そういう施設があれば、中央大学の学生は外国人との生活にだんだん慣れて、自信がついたら外国に行けるようになる。今、ほとんどの学生は自信がないですね。

外国人と組んでゼミで勉強

宮崎 海外留学に行く日本人学生が少なくなっているというのは、自信がなくて、自分にはできないと思ってしまう。ハードルが高いというイメージがあると思います。

ヘッセ 今の学生は「できない」とよく言います。たぶん、荒井さんの時代は、「できないけれども、がんばります」と言いましたね(笑)。

荒井 その通り。

ヘッセ 今はできるけれども、「できない」とよく言います。どうして?(笑)

宮崎 一つは、日本の学生が安定志向にあると言えると思います。今、(国内で)中国や韓国の学生がすごく伸びてきていて、就活にしても、日本人だけを相手にしていたらこれから私たちは勝っていけないです。あと、何だかんだ言ってもとりあえず生きていけるということがあると思います。自分が挑戦しなくても、何とかなる状態にあるので、危機感が学生には芽生えないというのはあると思います。

「国際化」について、それぞれの立場から語り合う出席者

伊藤 菲鴻さんはどう思われますか。

 重要なキーワードは「インセンティブ」だと思います。学生にはがんばるインセンティブがあまりないように思います。中国や韓国の学生は、がんばればもっといい生活ができるというインセンティブがあると思うのです。

 先ほどの話に戻すと、大学内でいかに学生がもっとアクティブに活動できるようなインセンティブを与えることができるかということを、大学側が考えたほうがいいと思います。英語で行われる講義だけ増やせばいいという問題ではないです。学生たちや教授の英語水準などのこともありますので、英語で専門科目の講義をやるとかえって学生たちの学力が低下する可能性があります。ですから、英語の授業はもちろん増やすべきですけれども、そのやり方を考えたほうがいいのではないかと思います。

 グローバルに活躍できる、リーダーシップを発揮できる人はどういう人かというと、常に問題意識を持って何かについて考えていて、かつ何か意見を求められたときにしっかりと言える人だと思います。それにプラスして英語で話さなければいけない。そういう能力を持つ人材を育てることを目指すなら、たとえば交渉能力を学生に学ばせる英語の授業は置いておいたほうがいいと思います。

 それから、ゼミで日本人の学生2人と外国人の学生1人と組んでグループで勉強させるなどのことは考えられる。これはコストがかからないので、そういう工夫は大学としては重要なのではないかと思います。

ヘッセ 本当に賛成です。いいチャレンジだと思います。

実践的に役立つ英語力を

林田 先ほど宮崎さんがおっしゃったことで思い出したのですが、中央大学へ入って、海外の協定校に行きたいと思っても、就職活動が早くなってきているので、3年生のときに留学しようと思うと、入学して1年ちょっとしたぐらいの2年生の段階でTOEFLを受けなければいけない。さらに1年あると全然、違うと思うのですが、早い時期にTOEFLにチャレンジしなければならないので、点数が伸びないですね。

荒井 それ(TOEFLの勉強)は大学へ入ってからでは遅いのではないですか。

ヘッセ そうですね。国際化は中央大学の附属中学校からインターナショナル・トラック、インターナショナル・コースをつくったほうがいいですね。

荒井 そうそう、せっかく附属中学校も附属高校もあるのですから、附属からやる。英語のレベルを高めるようなことをしなければならない。

 TOEFLを受けるとすると、550が普通ですよね。それを1年間でやるというのは中国や韓国は当たり前の話で、大学側で1人、TOEFLにすごく詳しい先生を付けてしっかり指導すれば、学生にやる気があれば何とかできると思います。

 アメリカにGRE(編集室注:Graduate Record Examination、アメリカやカナダの大学院に進学するのに必要な共通試験)という試験がありますが、中国の北京大学の学生たちはアメリカの大学院に行きたくて、GREの9000の単語を3か月で覚えるのが普通らしいです。だから、やる気がある学生は、しっかり指導できる先生がいれば、やるのではないかと思います。

ヘッセ 私はTOEFL、TOEICはそんなに大切ではないと思います。一番大事なのはその前に学校が英語で授業をやったり、英語で試験をしたりしてしっかり勉強することです。目的があったらそのあとにTOEFLを勉強したほうがいい。最初からTOEFLを勉強してもそんなに大切ではない。

伊藤 実践的な英語を身につけさせるということですか。

ヘッセ そうです。

荒井 ビジネスの社会はまさに英語が使えなければどうにもならないですね。私は三十数年間、グローバル企業にいましたが、英語でのプレゼンテーション、ネゴシエーション、あるいはディベートができなれば使いものにならないです。ある程度、アッパー・マネジメントになると英語で会議です。しかもビジネスの社会は成果を出さなければいけない。数字を上げる、業績を上げる。その成果につながらないようなプアなものでは初めから使いものにならない。

海外の大学とのジョイント

宮崎 アイセックの海外インターンシップの場合、行く前に日本語と英語での面接をするのです。応募できるのはTOEICの600と、もう一つのレベルは730以上でなければいけないのですが、点数が730以上ある方が何人か来るのです。でも、英語面接をするとまったくしゃべれなくて落ちてしまう人が実際にいるのです。

ヘッセ 逆に、たとえばTOEICは550ですけれども、コミュニケーションがよくできる人もいます。だからその点数はあまり意味がないですね。

宮崎 基礎としての部分は必要なのでそうした評価は設けていますけれども、話せるかどうかとなるとまったく別な問題で、私自身も痛感しているところです。

 大学の授業に話を戻すと、学生には話す機会がないのです。聞く機会はもしかしたらあるかもしれないのですが、自分から自主的に話せる機会を、もう少し大学側は学生に対して提供してほしいと思います。日本の学生にとって英語を話すのは、最初は臆してしまうところが正直ありますが、それが当たり前になるような環境を大学側は提供するべきではないかと思います。

ヘッセ 私は先週、ドイツのヴュルツブルク大学やテュービンゲン大学に行ってきたのですが、そこで聞いた話はすごく興味深かったです。ヴュルツブルク大学は数百年前、テュービンゲン大学は600年前にできた大学で、古くて伝統的な大学です。そういうファウンデーションに立って新しい大学をつくろうと国際化をがんばっている。

 中央大学は伝統的な有名大学だから、このままで進んで大丈夫だと思っている人が多いかもしれません。それは大丈夫ですけれども、今のグローバルソサエティの中では、コンペティションがないとだめです。

荒井 その古い大学が新しいことにチャレンジしているというのは、どういうところですか。

ヘッセ EU(欧州連合)の中にジョイント・ディグリー・プログラムとかダブル・ディグリー・プログラムをつくろうとしています。テュービンゲン大学の国際交流センター所長と話をしたなかで、将来、ドイツと日本と中国の3点のエクスチェンジをつくれば、日本人の学生は夏にドイツで勉強したり、冬は中国で勉強したりとローテーションで回って、いろいろな文化を勉強することが可能になるというのがありました。そういう新しい考え方が本当に大事だと思いました。

伝統伸ばし、かつ新しい挑戦を

荒井 中央大学は英吉利法律学校として創立され、今年で125周年です。法学部は司法試験の合格者数で大学ナンバーワンという伝統を築きあげてきて、これはさらに伸ばさなければいけない。ただ、伝統は伸ばしながら、新しい血を入れるやり方でやっていかなければいけない。

 僕は去年の司法試験合格者の人たちとのパーティーで、何人か若い合格者と話をしたのですが、「私たちは国際的に活躍できる弁護士になりたい」というのです。しかし、英語も何も勉強していないという。司法試験は難しいし、最短距離でやらないと合格しないから、試験に出ないものは勉強しない。しかし、本当にやりたいのはインターナショナル・アトーニーで、たとえばM&A(Mergers and Acquisitions、合併と買収)に関わるとか、特許や知的財産の係争の仕事をしたいというのです。

 これはハッと思いました。それでその若い人たちに僕が言ったのは、できればインターナショナル・ロースクールをつくりたい。司法試験に合格した若者を国際的に活動できるインターナショナル・アトーニーに育成するようなスクールができたらいい。私もがんばってみたいということを申し上げたのです。

ヘッセ 私は実はアメリカの弁護士で、アメリカでは弁護士は増えてきて多すぎです。だから日本に来ました。うそです(笑)。日本も弁護士が増えてきて、普通の弁護士の仕事が見つけられないかもしれません。でも、弁護士のトレーニングはいろいろな目的で使います。ビジネスでも教育の分野でも使えるので、司法試験に合格して、法律事務所だけに入りたいと思うのは、狭すぎるかもしれませんね。法律の勉強はもっと広いビジョンがあったほうがいい。

荒井 活躍の場を外にも見なければいけません。アメリカには70万人、80万人のロイヤーがいて、ビジネス社会にうんと広がって活動しているのです。いわゆる「町弁」と称する刑事事件、民事事件を担当する弁護士だけではなくて、働く場はもっと大きいマーケット、国際的なビジネスの社会に広がっています。

ヘッセ 学生さんたちは、これからどのような中央大学になって欲しいか。将来像、未来像はどのようなものであって欲しいと思いますか。

宮崎 中央大学は伝統もありますが、ほかの大学と比べると資格の大学という印象がすごくあります。弁護士とか公認会計士とか。これからは、そこにいかに国際化を注力していくかだと思います。次の世代を輩出するために、高校生が飛びつくような魅力があるかどうかです。

 先ほど、箱ものをつくっていくという話がありましたが、つくるだけではなくて、そこから輩出した人間を魅力的に発信していって欲しい。高校生、中央大学の学生たちに、挑戦すればできるんだという気概を持たせるような大学であって欲しいと思います。

中央コミュニティをつくる

 慶應大学はシカゴやニューヨークに三田会があるようです。つまり、輩出された学生が大学に帰属意識を持ちつつ、グローバルに活躍しているということだと思います。中央大学はそういう意味ではちょっと弱いと思います。いちばん理想的な未来像はグローバルに活躍できる学生を輩出して、しかも彼らは後輩の面倒を見たり、お互いに仕事も助け合いができる集まりというか、グループになればいいと思います。

 今まで中央大学から送り出された先輩方は、国際的にかなり活躍している方もいらっしゃると思うのです。アメリカの大学ではアラムナイ(同窓会)がすごく大事にされています、アラムナイが活躍して、大学に寄付をし、それがまた大学の教育に使われているわけです。そういうアラムナイ組織をもっとしっかりつくったほうがいいと思います。

「外国の大学と新しいプログラムを」とヘッセ教授

林田 中央大学も卒業生の組織を海外で何か所か持っています。今、公認されているのは確か11か所ぐらいあります。でも、聞くところによると、本部、つまり中央大学からほとんど連絡がないというのが実情のようです。

ヘッセ そうそう。バンクーバーでもロサンゼルスでもOB、OGが集まってすごく喜んでいました。中央大学の最近のニュースを聞きたいし、一緒に集まりたいと。そういう中央大学コミュニティのチャンスをつくって欲しいです。

伊藤 外国人留学生をどのくらい増やす計画ですか。

ヘッセ 私は数で国際化をはかることはできないと思います。英語の授業の数、外国人留学生の数ではかると、本当の国際化があいまいになると思います。これから中央大学は外国人留学生と遊んだり勉強したりという国際交流のオポチュニティをつくらないと、将来は国際的にはならないです。

 外国の大学と新しいプログラムをつくらなければいけない。ジョイント・ディグリーとかダブル・ディグリーとか短期留学プログラムとか、先生も外国へ行かなければならない。大学のスタッフも外国へ行ってみたほうがいいと思います。国際化は学生だけではなくて、先生も学長も理事長もスタッフもみんな、国際ビジョンが広がらなければなりません。

林田 私もそう思います。カールトンプログラム(米カールトン大学短期留学)は1984年に始まって、今年で二十数年たっているプログラムですが、私はこれに3回、参加しました。初めて行ったのは1992年ですが、いまだに一緒に行った人たちの何人かとは連絡を取り合ったりしています。あと3年で30周年ですが、ぜひカールトンクラブ(同窓会)をやってもらいたいという要望が強く、今、その実現を考えているところです。

 いまでも卒業生の人たちと交流があるということは、大事なことではないかと思います。

荒井 ヘッセ先生が言われたように、留学生も数ではないと思います。やはり質です。グローバル30(文部科学省国際化拠点整備事業)というプログラムがあって、中央大学はそのとき外国人留学生数の目標を(全体の)10%とした。そうすると2700人ぐらい入れなければならないので、大変な数字です。ですから、量よりも質的にユニークなものを入れていく。

 たとえば、明治大学は国際日本文化学部をつくられました。日本の文化を発信するために、世界中から日本の文化に興味を持った留学生を入れるということで、これは本当にユニークです。そういうユニークで、質的に高いものに向けた構想力とプログラムを持って夢のある、国際的に認知される大学にしていきたいと思っております。

海外で高いブランド力基盤に

伊藤 最後に、中央大学の国際化に期待するところをお聞かせください。

宮崎 中央大学の学生にとって本当に必要なものを大学側がしっかりと提供してくれて、学生がそれを真に生かせるようになって欲しいと思います。そういった機会を与えられたという恩恵を感じれば、卒業したら必ずそれを返そうと思うし、一学生としてそういった大学になるというのはすごくうれしいです。

「中大は海外でもブランド力がある」と徐さん

 私はアメリカのロースクールに留学したくていろいろな情報を探しているのですが、有名なミシガン大学が知っているアジアの大学として、中国の北京大学、清華大学、復旦大学、それに日本では東京大学、慶應大学、早稲田大学、中央大学などいくつかだけを紹介しているのです。つまり中央大学は海外でもかなりブランド力があるということを意味すると思います。

 中央大学のすばらしいところは、学生が学校の期待に忠実に応えるところなのではないかと思います。ですから、大学側がうまく国際化というものを運営して大学に浸透すれば、かなり成功すると思います。

ヘッセ 中央大学のコミュニティは本当に明るい将来をつくれると思います。今もがんばっているけれども、理事長やOB、OG、先生たちだけではなくて、中央大学コミュニティ全体で将来、魅力的な大学をつくるようにがんばらなければならないと思います。

林田 日本の多くの学生さんたちは中央大学をうらやましく思っています。これは本当に大事なことだと思います。法律の世界でこうだ、公認会計士の世界でこうだという実績を数字で示したら、みなさん驚きます。日本の大学関係者は中大に一目置いています。中央大学は次に何をやるのだろうかと考えているんです。

荒井 国際的経験を持った学生さんがずいぶんおられます。非常に意識はあるのです。そういう芽をさらに育てていく。それを大学全体で考え、メディア発信をしていただきたい。メディア戦略もよく考えていただきたい。

林田 毎年、学生を連れて海外の日本の企業に行っているのですが、あるところへ行ったら、「いろいろな大学の学生さんが来るのですが、中央大学の学生さんにだけ私は会うことにしている」と言うトップの方がいました。なぜかと尋ねましたら、「中央大学の学生さんからはお礼状が来る」と。いい話でしょ。中央大学の学生はいいものを持っていますよ。彼らの期待に応えたいですね。

伊藤 国際化への明るい展望が開けたところで、座談会を締めくくりたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。

(座談会は5月24日に行いました)