「大学時代のたくさんの時間を無駄にしないように心掛けました」と自身が言うように、機敏に行動する人だ。興味のアンテナが四方八方に向いている。話を聞いていて、何度もそう感じた。
「ボランティア活動がしたかった」と高校時代に一度体験した老人ホームでのボランティアを思い出し、募集を探した。しかし、見つからない。そこで、通学途中に老人ホームがあることに気づき、募集されていないにも関わらず、飛び込んだ。「思い立ったらすぐでした」と笑顔で言う。
施設の職員にも歓迎され、食事の配膳だけでなく高齢者とのよもやま話も数多く経験した。「なかでも戦争中や戦後の体験談は重く、非常に勉強になりました。常に何事にも『させて頂く』という気持ちで、得るものが沢山あった」と振り返った。
サークル活動では、軽音楽部に所属。高校生から始めたギターを続け、1年生からライブハウスでのライブも行った。1回のライブへ向けて1カ月の間に4~5回の練習。バンドメンバーは演奏する曲に合わせて毎回変わるのだという。
「他大生も含めて、この音楽活動を通じて様々な人と出会いました。驚きだったのは、ライブで知り合った他大学の学生と、4年生になってから研究活動の場でばったり再会したんです」
木村さんの専攻は「精密機械工学」。この学科の女子学生はわずか5%足らず。「高校生のころから家電量販店へ行くのが好きで、商品を見ているうちに自分も作りたいという気持ちになって」この学科を選んだという。
大学ではさらに興味が深まり、「学部の授業だけでは中途半端、もっと多く学びたい」と大学院進学を決めた。このころから、理工系女子学生のキャリアアップを支援する理工学部応援プログラム『WISE』へ参加。現役女性研究者の講演や、先輩の理系女子学生ならではの就活体験を聞いたり、東芝、IBMなどに会社訪問した。開発現場の見学だけでなく、結婚し、家事、子育てを両立しながら研究者として働く女性と話し、「将来のことを聞けて参考になった」という。
大学院進学については、「父は賛成だったが、母は不安に思っていた」という。「母は女性として就職が遅れることを心配していたんです」。何とか説得し、進学を決心した。 これを機にアルバイトをする意識が変わったと語る。
「親に負担をかけたくない、自分が働いたお金でできる限り学費を賄いたい」と考え、働く時間を増やした。「今後時間ができたら、ボランティアを再開したい。海外にも行きたいんです」と木村さんにはこれからも無駄な時間はない。
(小室)