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トップ>Hakumonちゅうおう【2010年早春号】>【群像 それぞれの春】ピアニストと数学の研究者を目指す 院進学で、両方に「100%取り組む」

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群像 それぞれの春

ピアニストと数学の研究者を目指す 院進学で、両方に「100%取り組む」

戸田 容平さん/理工学部

戸田 容平

 第19回日本クラシック音楽コンクール最高位はじめ、2つの国際コンクールと3つの国内コンクールで最高位の成績を収めている。高校2年からはソロリサイタルを毎年開催している。 数々の受賞歴を見れば、当然将来はピアニスト、と思われるが、「ピアニストはもちろんですが、数学の研究者も考えています。大学に入学してから数学の面白さに惹かれたのです」と戸田さん。 4歳からピアノを始めた。中学ではバレーボールの強豪校に入学し、毎日バレーの練習に明け暮れ、全国大会で2位になった。この頃は「ピアノはあくまで趣味程度」だったという。

 高校は男子校だったため、合唱の伴奏など人前で演奏する機会がなく、師事している先生から「このままピアノをやめてしまうのでは」と心配されて、ソロリサイタルを誘われた。この頃から徐々に練習に熱が入っていった。

  高校2年の夏に初のソロリサイタルを開催。その翌日渡ったアメリカでマンハッタン音楽院の教授に素質を認められ、「将来はピアニストになりなさい」と言われた。「この時、ピアニストになることを決心しました」という。

 それからというもの、ピアノにのめり込み、猛練習をした。この年の冬に再度訪れたアメリカで、同じ教授の前で演奏した時には「前回とは別人」と驚嘆された。「あの頃はピアノ中心の生活でした」と振り返る。 高校卒業後は、音大でなくともピアノは続けられるとの思いから一般大学を受験。中大理工学部は、「練習時間の確保のためと、自宅からの近さ」で選んだ。数学科にしたのも、「物理や化学と違って実験による時間の拘束が少ないだろう」と思ったからだった。

 大学に入学してからは、ピアノと同じくらいに数学にとりつかれた。「大学に入って数学をきちんと学び始め、興味を深めていく中で、特に代数学の面白さに惹かれていきました」。

 代数学とは数学の一分野だ。「代数学は教科書一行を解釈するにも、ノート1ページ分の証明が必要なこともある。その難解さにやりがいがある」と目を輝かせる。その表情は、ピアノを語る時と変わらない。

 聞けば現代音楽の作曲には、グラフやコンピュータなど数学が大きく応用され、数学科の教授陣にも熱心な音楽愛好家が多いという。

 卒業後は中央大学大学院に進学する。院進学に迷いはなく、「ピアノと数学の両方に100%の力で取り組みたい」と力強く語る。現在もピアノの練習は1日も欠かさない。学業との両立でおくる今の生活は、「ピアニストと数学の研究者」という特異な目標へ向けた毎日だ。

(小室)