「教師になる」と決めた4年生の春休みから勉学に励んだ結果、学部生の合格は難しいといわれる私立高校の教員採用試験に見事合格した。国文学を専攻し、「大学の授業は楽しかった」と語る仁科さんは、今春から私立高で国語を教える教師になる。
「国語や歴史には、高校の頃から興味があった」という仁科さん。大学1年の国語学概論の授業では、「知らない世界がたくさんあることにショックを受けた」と話し、「例えば…」と前置きし、「『ん』には発音の種類が複数あるんです。『神』という字を『しん』と読む4つの言葉『神官(しんかん)』『神秘(しんぴ)』『神道(しんとう)』『鬼神(きしん)』は、それぞれ『ん』を発音するときの舌の位置が異なります」と解説してくれた。
これを授業で聞いたとき、「『ん』はひとつだけという常識が打ち砕かれ、新しい世界が開けてくる感覚に魅了されました」という。それを機に、仁科さんは学習意欲を増していった。
大学3年次には静岡の山奥を訪ね、方言について調査した。4年次には往来物といわれる平安貴族の手紙に興味を持ち、研究を進めた。教科書の中の知識に留めず、「自分でやらなきゃと思った」という。
勉学が中心となった仁科さんの大学の時間割りには、教職も取っていたため、2時限から5時限まで立て続けに授業を受ける曜日もあった。2年次の1年間で80単位を取得したほどだ。3年生になり進路を選択するときには、「教師になるか大学院に進むかで悩んだ」という。そこで仁科さんは、「人と触れ合うのが好きだから」という理由で、教師の道を選んだ。
最終的に教師になることを決意したのは4年生の春だった。周囲の人が3年生の秋から勉強を始めるのに対して、仁科さんは比較的遅いスタートになったが、将来の道を定めたのちは必死になって教員採用試験の勉強に取り組んだ。
「『私は教師になる』と決めた時から、毎日を真摯に過ごした」と話す。そんな仁科さんの持論は「まじめな生き方が最後には勝つ」だ。私立高校を選んだのは、「学びを追求して建立された私立高校の『建学の精神』と、人としての生き方を学ぶ『人間形成』を重視する校風に共感 した」からという。
「人間形成ができてこその学力」と強調する仁科さん。後輩たちに対しては、「一度自分が決めた道に向けて、真摯に毎日を過ごすこと。そうすれば自然とやるべきことは見えてくる」とメッセージを送ってくれた。
(山岸)