受賞に笑顔があふれる橋本さん(中央)
理工学研究科博士後期課程応用化学専攻3年の橋本奈緒美さん(田中研究室)が、6月29日から7月1日までスイス・エンゲルベルグで開かれた学術国際会議でSILVER AWARDを受賞した。
この賞は国際的な学会での学生賞銀賞に相当する。受賞した研究は「レーザーアブレーション法由来ナノマーカーのスペーサーによる影響」というタイトルで、DNA二本鎖のうちの1本を金属ナノ粒子に固定するという内容。これを用いれば、固定するDNAの塩基配列と一致するDNAのみを選択的に収集することができる。固定する手法として、橋本さんは留学先のドイツで学んだレーザー技術を用いた。
今回の受賞は留学先で行った研究の成果だ。だが、橋本さんは「留学した最初の2、3カ月は研究室のメンバーとのコミュニケーションに苦労した」という。「はじめは、メンバーからの技術的な指示が理解できなくても、後から自分で解決すればよいという考えでしたが、指示とは違うことをしてしまい、相手に不機嫌になられたこともあった」。
それで考えを変えた。「分からない事は分かるまで聞くようにしました。ドイツでは日本と違って、黙っていると理解したと思われます」。それからは、細かい指示も理解できるようになり、研究をスムーズに進めることができた。
研究室には世界中から同世代の留学生が来ていた。「同じ年齢なのに、円滑に英語でコミュニケーションをとって、バリバリ研究している。その姿に刺激を受けた」という。
留学中、研究以外でも苦労したエピソードがある。「財布をなくした」のだ。「3週間後に戻って来ましたが、それまでの間は現地で知り合った日本人に助けてもらいました。この頃が精神的に一番辛い時期でしたが、お陰で研究室内では財布をなくした人として有名になりました」と苦笑いする。
その後はドイツでの生活にも慣れ、研究に取り組むことができた。「半年間の留学でしたがやはり短く、1年はいたかった」と唯一、期間の短さが心残りで、帰国後も研究室のメンバーとは連絡を取り合っている。
橋本さんは大学院卒業後は研究者として生きていく決意でいる。安定した終身雇用ではない、実力が問われる厳しい世界だ。「ドイツへの留学によって日本ではできない経験を積み、辛いこともあったけど、大きく成長できた」という橋本さんは、今回の受賞が大きな自信につながったに違いない。
(学生記者 小室靖明=理工学研究科1年)