1位でゴールに飛び込んだ山下選手(右端)
その瞬間、国立競技場メインスタンドの一角に陣取った中大応援席から、「バンザイ、バンザイ、バンザイ」の歓喜の声が湧き起こった。中大OB・OGはじめ大学関係者らは、周囲の人らと誰ともなく握手し、「やった」「でかした」と声を張り上げる。感極まった小栗忠・陸上競技部監督は人目もはばからず、男泣き。喜びの輪は、幾重にも広がった。
第79回日本学生陸上競技対抗選手権大会(日本インカレ)最終日の9月12日、最終種目の4×400mリレーで、中央大学が男女とも優勝する快挙を成し遂げたのだ。
男子は23年ぶり、女子は13年ぶりの優勝で、この種目で男女同一大学が優勝したのは大会史上初。“アベック優勝”の偉業に、中大陸上部の「新時代」の到来を予感させた。
腕でCマークをつくって喜びを爆発させる男子メンバー。左から木村さん、山下さん、鬼塚さん(右手前)、近藤さん(右奥)
女子4×400mリレーのメンバーは、第1走者が利根川由佳さん(商4)、第2走者が矢野美幸さん(文3)、第3走者が清水佳奈さん(文3)、第4走者が田子雅さん(法4)。
このうち矢野さんが、大会1ヶ月前にケガ、主将でもある田子さんが2週間前に肉離れを起こし、チーム状態は万全でなかった。矢野さんは専門種目の400mハードルの出場をやむなく断念し、4×400mリレー一本にかけていた。田子さんは初日の10日に行われた400m決勝で3位、12日の400mハードル決勝では見事2連覇を果たしたが、足の痛みは限界にきていた。
それでも中大は4×400mの予選をトップで通過。決勝を迎え、期待はいやがうえにも高まった。1走の利根川さん、2走の矢野さんはトップを争う好走をみせ、3走の清水さんにバトンをつないだ。清水さんはトップを抜いて1位に躍り出て、2位に差をつけてアンカーの田子さんにバトンを託した。
表彰台の真ん中で喜びのVサインをする女子メンバー。田子さん(右上)、矢野さん(左上)、清水さん(右下)、利根川さん(左下)
このままいける、と思われたが、ラスト100mあたりから、女子100m、200mで優勝した平成国際大のスプリンター、高橋萌木子さんが猛追。しかし、田子さんは差を縮められながらも、歯を食いしばって懸命の力走をみせ、1位でゴールラインを切った。平成国際大との差は0秒5だった。
女子マイルリレー決勝が終わってほぼ10分後、女子のレースの余韻がまだ消えぬなか、男子4×400mリレーの第1走者がスタート位置についた。中大は鬼塚祐志さん(法2)で、そのあとを2走の木村淳さん(法1)、3走の近藤敦嗣さん(法4)、4走の山下貴大さん(経4)がバトンを引き継ぐ。
中大は上位でバトンをつなぐが、1走から3走まで接戦で、差はない。まだ優勝は分からない。3位でバトンを受けたアンカーの山下さんが、前を行く2校をターゲットに入れる。前に迫る。正面スタンド前を力走する山下さんに、応援席から「中大いけるぞ」と大きな声援が飛ぶ。そしてラストスパートで2校を抜いた。劇的な勝利に、スタンドから悲鳴に近い歓声があがった。
大会史上初の男女アベック優勝という歴史的場面に遭遇した中大応援席の興奮は、閉会式を迎えても、なお、おさまらなかった。
(編集室)