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トップ>Hakumonちゅうおう【2009年冬季号】>【ボランティアと私―何かを求めて―】在宅介助

Hakumonちゅうおう一覧

ボランティアと私―何かを求めて―

在宅介助

法学部2年 河本圭敬さん

法学部2年 河本圭敬さん

法学部2年 河本圭敬さん

「介助する相手に障害があるわけではない。何が障害かといったら、自分がそれを障害だと思うことが相手にとって障害になるんです」

 こう明確に自分の考えを主張するのは、法学部2年の河本圭敬さん。肢体に不自由がある人の食事の介助や入浴介助などのボランティアをしている。

 「本人は手足が動かせないことを障害と思わずに、単に他の人と違っているところだと思っていても、こちらがそれを障害だと思うことで、障害が生じるんです。そういう自分の心のなかに生じる障害を乗り越えていくことを学べたらと思っています」

肢体不自由の男性を介助
月に2回、泊まりがけで

 河本さんが、在宅介助のボランティアをしているのは、20代のときに交通事故に遭って首から上しか動かせなくなり、肢体不自由となった50代の男性だ。月2回、男性の家に介助に通っている。

 在宅介助するのは、その日は一人。河本さんが所属する中央大学の社会福祉サークル『青い鳥』の4人に加え、法政大学のボランティアサークルのメンバーの計20人ほどでシフトを組んで行っている。

 昼間のヘルパーと交代し、夕方の5時から翌朝9時までの泊りがけの介助となる。大変そうだが、「食事や入浴の介助など、合計しても介助の時間は3時間くらい」という。あとは、「話をしています。話している時間の方が長いですね。ボランティアではなく、話をしに行っているという感じです。雑談もするし、真面目な話もします。思いやりとか愛とは何かについて、哲学的に語ってくれたりもします」と河本さん。

 大学生からみれば、50代といえば親の世代。人生の先輩として相談にものってくれるという。「介助に行くのが楽しみ」というのもうなずける。

高校時代もボランティア
人と接するのが大好き

 人と接するのが好きで、「特におじいちゃんやおばあちゃん、子どもが好き」な河本さんは、高校生のときも『社会福祉研究会』に所属し、部活動としてボランティアをしていた。「部外の人、自分の世代以外の人、いろいろな人と関われる」と思って、高校の近くにある老人ホームでお年寄りと一緒に折り紙をしたり、バルンアートをしたりして遊んだ。大学入学後も、ボランティアがしたいと思い『青い鳥』に入った。

 『青い鳥』では、いくつかあるボランティアのうち、その50 代の男性の明るくて気さくな人柄に惹かれて在宅介助ボランティアを選んだ。

 「彼は『手も足も動かせないけど、事故の前と後で変わったことはない』『事故に遭ったことで、こうしていろいろな人に会える』と言っています。前向きに考え、人とのつながりを大切にする人です。その人から本当にいろいろなことを学ばせてもらっているなと思います」

本当を知る出会いの大切さ
人への思いやりを会得

 河本さんが身体に障害のある人と関わったのは、はじめてだった。以前は、「偏見もあった」という。でも、在宅介助で実際に障害のある人と関わって交流することで間違っていたことがわかった。ボランティアによって偏見をなくし、人との出会いの大切さを学ぶことができた。河本さんは、「障害のある人に会って、話をすれば、本当のところが分かります」と強調する。

在宅介助する河本圭敬さん

在宅介助する河本圭敬さん

 在宅介助には研修が必要で、河本さんは一日研修に参加し、「東京都居宅介護事業者等養成研修修了」の認定を得た。基本的なことを学んだうえで、実際には介助相手とのコミュニケーションで必要なことを学んでいくという。「服を脱がせるのが案外大変で、脱がし方の順番を間違えたことがありました。そのとき、その人は『もう一回やればいいよ』と言ってくれたので安心しました」。

 ボランティアを通して、「人と人のつながり」を大切に考えるようになったという河本さん。「普段でも、相手が何をして欲しいのかを考えるようにしています。考えてもわからないことも多いけど、考えないよりはいいと思うので。そうすれば、少しでも思いやりをもって人と接することができると思います」と力強く語った。

学生記者 武田朋実(法学部4年)