トップ>Hakumonちゅうおう【2009年冬季号】>【創立125周年に向けて】中央大学創立125周年プレ企画 理工学部シンポジウム&パネル展開く「宇宙から見た地球、地球環境の中の水、水と生命」
中央大学創立125周年を記念する理工学部シンポジウム&パネル展(主催:理工学部)が10月10日、「宇宙から見た地球、地球環境の中の水、水と生命」をテーマに、東京文京区の文京シビックセンターで開かれた。シンポジウム会場の大ホールには、100人を超す大学院生らが参加。またホール入り口前には、9学科からそれぞれ大学院生の研究成果をまとめたパネルが展示され、来場者の関心を引いていた。
シンポジウムに先立ち、田口東理工学部長(当時)が、昨年度新設された生命科学科や、今年度に土木学科から名称変更されて生まれ変わった都市環境学科を紹介しながら、理工学部の創設から現在に至るまでの歴史を説明。続いて永井和之総長・学長が「地球規模の環境問題にどのように本学が取り組んでいくのか、いま考える時に来ている」などと述べ、大学として今後とも環境問題の解決に向けた研究に積極的に取り組んでいく考えを示した。
シンポジウムでは、前東京大学大学院教授で千葉工業大学惑星探査研究センターの松井孝典所長(宇宙〈地球〉科学)、中央大学研究開発機構の丹保憲仁教授(環境工学)、東京医科歯科大学大学院の佐々木成教授(腎臓内科)の三氏が講演した。
理工学部のパネル展示を熱心に見つめる来館者
「宇宙から見た地球」と題して講演した松井氏は、宇宙からの視点として「宇宙の歴史137億年の時空スケールで考える」ことの重要性を指摘。また文明について、「人間圏をつくって生きる生き方」と定義し、この地球が生命の惑星であり続けられるのは「あと5億年」であることを紹介し、「人間圏の未来はわれわれの意思次第である」と強調した。
続いて丹保氏は「地球環境の中の水」と題し講演。このなかで地球の水のうち淡水は約2.7%で、そのうち2.14%は極の氷河であると説明。日本では一日に一人が生活に使う水の使用量が約300~350リットルにも及ぶことを紹介したうえで、「水はメディア。資源そのものではない。上下水道を整備する前に川の水をきれいにすべきだ」と訴えた。
最後に「水と生命」と題して講演した佐々木氏は、「細胞こそが生命のもと」と述べ、人体の細胞内の塩濃度と太古の地球の海の塩濃度が同じであることを紹介した。また腎臓は心拍出量の五分の一の血流量を受け入れる器官であることや、体内物質の精密な濃度調整が可能な機能を有していることなどを説明した。
その後の質疑応答では、来場者から「人類は環境よりも先に、経済から滅ぶのではないか」といった科学を超えた質問も飛び出した。これに対し丹保氏は「これまでの経済は、環境や自然を無限のものとして発展してきた。しかし、人類圏は有限である。考えが甘かった」と指摘した。
また、日本とアメリカの科学研究の違いについても話が及び、応用研究に資金を多く配分する日本と、基礎研究を重視するアメリカの政策が比較された。これに関し、「日本は科学政策と技術政策を分けるべき」という見解が示された。
最後に三氏から、科学を学ぶ学生に対し、「自分の人生を考えよ。いま未来を考えて行動すれば、それは実現できる」(松井氏)、「文系の頭構造を持って、理系の勉強をすれば良い人材になれる」(丹保氏)、「やる気になればどの分野にもフロンティアは見つけられる。熱意を持って取り組もう」(佐々木氏)とメッセージが送られた。
一方、ホール入り口前には、大学院生など若手研究者の日々の研究成果をまとめたパネルが展示された。昨年のノーベル物理学賞で話題となった物質の根源を探る素粒子論から、広大な宇宙に関する研究まで、その研究分野は多岐にわたっており、9学科を擁する理工学部の幅広い研究成果を紹介。来場者らは、パネルを眺めながら大学院生らに熱心に質問する姿がみられた。
学生記者 小室靖明(理工学部4年)