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トップ>Hakumonちゅうおう【2009年秋季特別号】>【連載企画】OB・OGの職場探訪

Hakumonちゅうおう一覧

連載企画

OB・OGの職場探訪

テレビ朝日ネットワーク局ネットワーク業務部
小清水克さん(2005年大学院理工学研究科卒)

おしゃれで、国際色豊かな街・六本木。訪ねたのは夕暮れ時。日が落ち始め、高層ビルの六本木ヒルズを中心にしたビル群にネオンが灯り出すと、街並みに一層輝きが増してきた。そんな一角に、テレビ朝日はある。

 待ち合わせ場所である受付前に行くと、小清水克さんは待っていてくださった。記者は、もちろん初対面。知的な雰囲気が漂うなかにも親しみを感じる小清水さんにご挨拶し、高まっていた緊張感がようやく落ち着きを取り戻してきた。

フィリピンの農村支援活動も
青山学院大のゼミにも自主参加

 小清水さんは理工学部の出身。電気電子情報通信工学を専攻し、2005年3月に大学院理工学研究科を卒業した。電気電子情報通信工学と聞いても、記者にはどのような勉強内容なのかすぐには思い浮かばない。

 「例えば、携帯電話について考えてみて」と小清水さん。「昔の携帯電話は文字しか送れなかったけど、今は画像を送ることができるようになり、ダウンロードの時間も短縮してきている。できるだけ多くのデータを、できるだけ短い時間で、しかも移動している相手に送るためにはどうしたらいいか……というような研究をしていました」。

 大学4年から大学院卒業までの3年間、このような研究をしていた。かといって、大学時代は研究だけに没頭していたかというと、そうではない。「大学時代はフィリピンの農村を支援する活動をしていました。今でも、『ふれんどしっぷASIA』というNGO団体に参加していて、1~2年に1回は、昔お世話になったフィリピンの村に行くようにしています」という。

 この活動をはじめるようになったのは、大学1年生のときの青山学院大学の雨宮剛名誉教授との出会いがきっかけだ。小清水さんは、雨宮先生が非常勤講師として中央大学で教えていた英語の授業を受けていた。

 「英語の授業なのに、先生は最初の講義で、まったく英語の話をせず、ずっと第二次世界大戦におけるフィリピンと日本の話をしていました。戦争の話に興味があったわけではありませんが、60歳の先生が一生懸命に若手に想いを伝えようとしている〝熱さ〟にワクワクし、夢中で話を聞きました。」

 授業後、小清水さんは、雨宮教授に直接話を聞きに行ったところ、「是非、私の研究室に遊びにきてください」と誘われ、青山学院大学の雨宮教授主催の毎月の勉強会に参加することになった。単位がもらえるわけではないが、電車を乗り継いで青山のキャンパスに通った。

信頼できるテレビ局員と出会う
「テレビ局で働いてみろよ」の一言

デスクワークに取り組む小清水さん。飾られているのは系列局のキャラクター。

デスクワークに取り組む小清水さん。飾られているのは系列局のキャラクター。

 大学1年生の春休み、勉強会に参加していた他の学生達と一緒に体験学習としてフィリピンに行くことになった。「フィリピンでは貧しい中でも笑顔で夢を語る子供達や、戦争で恋人を日本人に殺された女性に出会い……何もかもがショックでした。当時は、大学・家・アルバイト先を往復する生活の中で、生意気な事を言ったりしていたけど、自分の知らない場所に、こんな世界があったのかと。そして、少し勇気を出して、自分から動けば、世界はこんなにも刺激的なのか」と思ったという。

 大学3年の就職活動の時期を迎え、就活も行ったが、大学院に進学した。「大学院では総務省の研究機関で研究する機会があると聞いて、そんなチャンスはなかなかないと思った。せっかく大学に入学したので、何か実績として残したいという思いもあった」からだった。

 大学院1年、ふたたび就職先を考えるようになったとき、ある人の一言が進路を決定づけた。「テレビ局で働いてみろよ」。知り合いの日本テレビ報道局員の一言だった。

 この報道マンとは、フィリピン体験学習の中で知り合った。「普通の大学生達が、フィリピン体験学習で何か変わるのか」をテレビ番組にするため、カメラを片手に半年におよぶ勉強会と21日間の体験学習にずっと同行していた彼を身近に感じ、同時に人間的な信頼を感じるようになった。

系列局との窓口になるのが、ネットワーク局の仕事。

系列局との窓口になるのが、ネットワーク局の仕事。

 しかし、日本テレビで放送されたフィリピン体験学習の模様は、事前に知らされていた内容とはかなり違った編集だった。報道マンは小清水さん達に謝った上で、こう言った。「何百本のテープの中から使うのは1時間程度。その短い時間の中で視聴者に一番伝えたい事をわかってもらうために、こういう編集にしたんだ」。納得いかない部分もあったが、放送後、多くの視聴者からの反響があった。

 小清水さんは、「自分の想いとメッセージを込めて、番組を作って、放送して、出演者・視聴者の反応に真摯に向き合う報道マンが、とてもカッコよくて、羨ましかった」という。それだけに就職活動にあたっての、報道マンからの一言は、テレビ局を目指すきっかけになった。

 雨宮剛教授と日本テレビの報道局員、この二人との出会いが、小清水さんの転機となったと言っても過言ではない。

就職活動中の後輩へ

 小清水さんが、テレビ局に入って5年目になる。入社してから1年はメディア戦略に関する部署に在籍、現在のネットワーク局ネットワーク業務部になってからは4年目である。

 「ネットワーク局は、テレビ朝日系列局の窓口となる部署。テレビ朝日の放送エリアは実は関東だけなんです。そこで、テレ朝の番組を全国に流すため、全国各地の系列局とネットワークを組んでいます。テレ朝のやりたいこと、やれることは、全国の系列各局のやりたいこととは必ずしも同じではないので、そこを調整することが仕事です」

 記者は、ネットワークと聞くと、てっきり技術職のような部署だと思っていただけに、意外であった。それにテレビ局というと、華やかイメージをもってしまうので、実際にはどうなのか聞いてみると、小清水さんは、「とんでもなく破天荒な人が多くて、華やかなイメージを持たれがちですが、みんなけっこう普通にきちんと社会人しています。」との返事だった。

 「一つの番組でも、その裏にはすごくいろいろな仕組みがあって、大勢の人たちが関わっている。知らなかったことばかりで、テレビの裏側に関わることはとても楽しいです。社内には憧れる先輩もいるし、やりたい仕事もいっぱいあります」と仕事の楽しさを語る小清水さんに、テレビ局を目指す後輩に向けて、メッセージをいただいた。

 「テレビ局の仕事を調べたりとか、業界分析をするよりも、とにかくテレビ好きで、好奇心があれば、あとは目の前の仕事に一生懸命に取り組む熱意を持ってきてください。」

学生記者 野村茉莉亜(商学部3年)