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トップ>Hakumonちゅうおう【2009年秋季特別号】>【ニュースPlus】望月理香さん(理工院修了)が文部科学大臣賞受賞 第23回先端技術大賞「色弱補正法の研究」で

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望月理香さん(理工院修了)が文部科学大臣賞受賞
第23回先端技術大賞「色弱補正法の研究」で

望月理香さん

 中央大学大学院理工学研究科博士前期課程情報工学専攻2008年度修了生の望月理香さんが、先端技術分野の優れた研究成果をあげた理工系学生と企業の若手研究者を表彰する「第23回独創性を拓く 先端技術大賞」(主催・フジサンケイビジネスアイ、後援・産経新聞社など)の文部科学大臣賞を受賞した。授賞式は7月23日、高円宮妃殿下ご臨席の下、東京・元赤坂の明治記念館で行われ、望月さんに浮島とも子・文部科学大臣政務官(当時)から賞状が贈られた。

 先端技術大賞は、若手研究者の独創性を育み、科学技術創造立国の実現の一助となることを目的に1987年に創設された。今回は学生部門に32件、企業部門に36件の応募があり、その中から審査(委員長:阿部博之・東北大学名誉教授)の結果、望月さんが応募した色彩補正技術を活用し、個々の式弱者に対応できる「色弱補正法の研究」が学生分門の最優秀賞である文部科学大臣賞に輝いた。

◇ ◇

 私たちが普段何気なく見ている視界の中の色は、よく考えてみると、他人がその色をどのような色として見ているかは、誰も確かめることができない。ましてや色弱者になると、どの色がどのように見えていて、健常者とどのように違うのか、ということが具体的にわからない。

 望月さんは、この点に着目し、色の感じ方を定量化し、色弱者と健常者の色の見え方の違いを具体的に表し、そこから補正を行うことで、色弱者がより健常者の見ている色と同じ色を感じることができるようにする新しい方法を開発した。

 色の識別という芸術的観点と、色弱者に対する新しい治療(補正)法という医療的観点、そしてリーマン幾何学を用いて人の感覚を具現化するという数学的観点の3つのまったく異なった分野を融合させて見出した研究は、「斬新的な発想に基づく挑戦的な研究」という評価を受けた。

◇ ◇

 望月さんが、受賞の知らせを聞いたのは、母親からの携帯メールだった。「卒業記念の感じで応募したので、受賞を聞いた時は本当に驚きました。ただ、私はもう働いていたので受賞を聞いた次の日も仕事に行き、あまり実感が湧きませんでした」。受賞した研究論文は、修士2年を卒業するときに書いたもので、望月さんは今春から企業の研究所に勤務している。

高円宮妃殿下ご臨席のもとで、文部科学大臣賞を受賞する望月理香さん(産経新聞社提供)

高円宮妃殿下ご臨席のもとで、文部科学大臣賞を受賞する望月理香さん(産経新聞社提供)

 「もともと数学が好きで、絵画などの芸術・美術も好きだった」という望月さん。全く異なる2つのことを合わせて何かできないか、と考え、指導教官の趙晋輝教授と話し合っているときに研究内容がまとまった。

 「趙先生は、物事を楽しく考える方で、自分が研究に行き詰っている時に相談に行くと、とても楽しい方向で考えてくださる方です。研究に関するディスカッションもかなりやりました」

 望月さんは、研究で大変だったのは「ひとつの実験にとても時間がかかったことです」という。「1人の人間に対してひとつの色を実験するのに2時間くらいかかります。休憩をはさんだり、被験者が実験に慣れるまでのデータは使わないので、実質4時間以上かかってしまうんです」。

 趙教授は「望月さんは非常に根気よく実験を続けてくれた」と称賛。望月さん自身は、「とてものめりこむタイプです。ひとつのことを考え続けることが好きですし、得意なことでもあります」と自己分析した。

 授賞式後のレセプション会場では、受賞者のパネルが展示され、研究内容について受賞者と自由に質疑応答ができるようになっていて、望月さんのパネルの前は常に人だかりができていた。

 「質問の中で一番多かったのは、『色弱者』というのは実際にどの色がわかりにくいのか、というものでした。その他にも、実用化できるのか、という質問や、人が見ている色がわかる、ということに興味を持ってくださる方もいらっしゃいました」

 望月さんは、今後について「今まで色彩について研究してきましたが、この研究を続けるにしても、色彩についていろんな角度から学んで専門家になりたい。何かひとつ秀でた人になりたい、と思っています」と将来を見据えている。

 望月さんは勤務のかたわら9月から社会人ドクターとして中央大学に再び通う。「大学での研究は、土曜日などに時間を見つけて続けていくつもりです」という。「まだまだやり残したことがたくさんある」と今後の研究活動に意欲を見せていた。

学生記者 橋本奈緒美(大学院理工学研究科博士2年)