特集

東日本大震災から1年をむかえて

 2011年3月11日から1年が過ぎました。

 この機会に、私は中央大学総長・学長として、何よりもまず、被災者の皆さまに対して、改めてお見舞いを申し上げるとともに、日々新たな一歩を踏み出すべく重ねておられるご努力に、心からの敬意と感謝を捧げたく存じます。

 中央大学においては、その在学生・教職員に直接の人的被災はなく、また施設等の損傷も軽微でしたが、多くの関係者・関係機関が被災されたこと、また何よりも本学は被災地を含む日本全国から学生が集う高等研究教育機関であることから、大学として何ができるかを模索し続けた1年でありました。

 もとより一私立大学にできることは限られています。しかし、この1年間の経験を通じて、私は、中央大学であるからこそ可能となる貢献もある、と考えるに至りました。そこで、一つの節目の日である2012年3月12日を機に、いくつかのことをお誓いしたいと思います。

 第1に、中央大学は、高等教育機関としての教育責任を果たし続けます。とりわけ、被災地出身の学生の皆さんに対する学修機会の確保は、本学にとって極めて重要な責任であると認識しております。そこで、今般の入学者選抜試験においては、被災地からの受験生の皆さんの受験料を免除すると共に、仙台に加えて新潟にも受験会場を開設致しました。また、被災学生に対する奨学金制度を2012年度も継続すると共に、学生相談等のサポート体制を整備しています。

 第2に、中央大学ならではの支援・社会貢献を継続的に行います。近時、被災地ではボランティア数の減少が問題となっていると聞き及んでおりますが、中央大学では、長期休業期間等を活用した学生ボランティア・チームを継続的に組織し続ける一方、ボランティア活動の報告会を通じて、ボランティア活動の機運を維持することにも注力しています。若い学生諸君の力を継続的に結集することは、大学の社会的貢献の重要な部分であると考えるからです。また、状況の変化に対応してボランティア活動内容を進化させることも、大学の社会貢献にとって重要なものであると考えます。震災当初の段階における都市環境・土木工学関係の教員・学生による被災実態調査、昨年の夏休みにおける法科大学院生による法的支援ニーズの予備調査、同時期のがれき処理ボランティア、冬休みにおける仮設住宅コミュニティ支援、子どもの学習支援、ビジネススクール(CBS)の在学生・修了生・教職員を横断するCBS被災地ボランティア・チームの継続的活動等、本学はこれまでも大学の専門性と変化するニーズの組み合わせに応じた活動を支援して参りましたが、今後もこうした支援を継続致します。

気仙沼市鹿折地区で行った学生ボランティアの様子

 第3に、多くの関係者との協働関係を強化することです。たとえば、上述した学生ボランティア・チームの活動は、本学学生だけの力では決してなしえません。むしろ、現地のニーズを的確に把握し、ボランティアを指導してくださるNPOの卓越したコーディネーションがあり、そこに本学を含む多くの大学生の力が結集しているのだと聞いております。また本学は、3月13日~5月6日に実施される「気仙沼大島復興椿まつり」を後援しておりますが、これは、昨年夏に実施したボランティア活動のご縁でいただいたご依頼を契機としています。このように、様々な個人や組織を結びつけ、協働関係を強化することは、多方面にわたる専門家や学生を数多く擁する総合大学としての中央大学の役割の一つであると、私は確信しております。

 第4に、災害に対する備えや対策を研究し、社会に還元し続けます。大学の研究成果はもちろん学術界に還元されるものですが、本学では、これをわかりやすい形で社会に直接発信することにも力を注いでいます。たとえば、「Chuo Online」というウェブサイトはそうした取り組みの一つです。

 2011年3月11日から1年が過ぎました。故郷への帰還を果たせずに避難地におられる方々はもとより、直接被災しなかった私たちでも、その傷が癒えるまでには、まだまだ長い時間が必要かと思います。中央大学は、2011年3月11日を忘れることなく、今後も多面的な活動を続けて行くことをお誓いいたします。

中央大学総長・学長
福原 紀彦