年頭のご挨拶 Beyond "All Chuo", Beyond "All Japan"
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨2011年は、日本社会にとって大きな転換点となる年でありました。全国的な豪雪と共にはじまった2011年は、1月の新燃岳噴火、3月11日に発生した東日本大震災、翌12日の長野県北部地震、7月の新潟・福島豪雨、さらには3つの上陸を含む7つの台風被害等、本当に多くの自然災害に見舞われました。また、福島第一原子力発電所事故とこれに起因する電力不足も、日本社会のあり方そのものに、重大な課題を提起し続けています。
中央大学も、これらの事象から直接の影響を受けました。しかし、より重要なことは、本学が高等研究教育機関として果たすべき役割に本質的な問いかけがなされたことであると思います。「實地應用ノ素ヲ養フ」を建学の精神とし、「行動する知性。-Knowledge into Action-」をユニバーシティ・メッセージとする本学が、研究面においても、教育面においても、そして社会貢献の面においても何をなすことができるのかが、改めて問われています。
こうした中、私は、昨2011年11月6日に中央大学総長・学長に就任致しましたが、2012年頭にあたり、本年を社会との連携を強化する出発の年と位置づけたく考えています。
本学は、これまでも社会との連携を考える中で、学生とそのご父母、学員(卒業生)、教職員といった本学関係者の総力を結集しようという意味で、"All Chuo"という言葉を用いてきました。このことは、本学がその社会的責任を果たす出発点であり、常に忘れてはならない原点であることはいうまでもありません。しかしながら、昨年来の一連の事象を踏まえますと、私たちは、本学の役割をより広いネットワークの中で考えるべき段階にあるのではないかと思います。
たとえば、本学は、日本国内にとどまらず世界中に、本学で留学生として学んだ人々や共同研究のパートナー等を数多く有しています。昨年の震災に際しては、こうした人々が暖かい支援やメッセージを送ってくださいました。あるいは、被災地において中央大学のボランティアを指導してくださったNPOの皆さんも、私たちの大切な友人です。学生のご父母の中には、ご子女が卒業された後においても、大学を応援し続けてくださる方が多くおられます。本学の研究室で開発された技術によって、生活の質が向上したと喜んでくださる高齢者もおられます。
こうした人々は、組織としての中央大学の構成員ではないかも知れません。しかし私は、こうした人々を含めた、より大きなネットワークを創ってゆくことが今後の中央大学にとっても、日本社会にとっても必要不可欠なことであると思います。グローバル化が進む社会の中で、多くの人や組織をネットワークで結びつけ、その成果としてのよい研究と教育によって社会に貢献するハブ(結節点)となることこそ、大学、とりわけ中央大学に求められている役割の一つであると、私は確信しています。
本学の重点施策の一つは国際化ですが、それもまた、本学が国境を越えた人々のハブとなり、日本と世界のゲートウェイとなることを目指すものに他なりません。たとえば、本学では、国際交流センターの「Peace Seminar Camp」、大学院理工学研究科副専攻「国際水環境理工学人材育成プログラム」、法科大学院の「International Summer Program: Introduction to Japanese Law in English」など多くの国際プログラムを実施していますが、いずれも、本学ならではの専門性を基礎として、多くの国から集まった若者が、様々な形で学び合う場となっています。こうしたプログラムを一層発展・深化させ、さらに、そこで学んだ人々が国際的なネットワークの中で活躍できるように支援することは、キャンパスにインターナショナル・ビレッジを設けること等と並んで、本学の国際化の柱の一つとなるでしょう。
大学は、孤立した研究・教育の場であってはなりません。人と組織を専門や年代さらには国境を越えて、無限の組み合わせで結びつけるハブであり、ゲートウェイであるべきなのです。多くの人や組織が結びつくことにより、新しいアイディアが生まれ、必要なリソースが発見されてゆきます。困難な時期であるからこそ、中央大学は、このような役割を果たしたいと考えます。
"All Chuo"は、間違いなく、常に確認し続けるべき原点です。しかし私は、それを限界や境界とは考えません。"All Chuo"から"Beyond All Chuo"へ、"All Japan"から"Beyond All Japan"へ。2012年の年頭にあたり、多くの皆様に、私たちをハブとするネットワークに加わっていただきたく、ご挨拶を申し上げます。
中央大学総長・学長