教育

「グローバルビジネスリーダー」育成に向け、始動2年目の挑戦

国松 麻季(くにまつ まき)/中央大学国際経営学部准教授
専門分野 国際経済法、対外経済政策

設立2年目を迎えた国際経営学部

 中央大学国際経営学部は、国際社会を舞台に活躍できるグローバルビジネスリーダーを育成することを目標として2019年4月に開設された新しい学部です。開設初年度には、高い志を持つ1期生が力を発揮し、ビジネスの現場との接点を広げながら複数の課外活動を展開してきました。そして、新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインでの活動を余儀なくされている現在も、学生たちは意欲的な取り組みを進めています。
 ここで、専任教員のひとりとして学生の課外活動を側面的に支援する立場から、設立1年余りの国際経営学部の取り組みと挑戦を紹介します。

企業・公的機関への訪問プログラムに3割以上の学生が参加

 昨年度、入学間もない学生と教職員との会話のなかで、企業訪問への希望があることが把握され、秋学期に企業や公的機関に訪問させていただく企画を実施しました。科目とは切り離した活動であり、訪問当日のみならず準備やフォローアップにも時間投入が必要となることから、どの程度の参加希望があるか訪問受入を調整する教員たちは気を揉んでいましたが、予想をはるかに上回る希望者がありました。受入人数の拡大をお願いするなどし、1年生309名のうち103名(のべ177名)が、2019年10月から2020年1月にわたって9つの企業や公的機関を訪問しました。
 訪問先では、ご対応くださった方々より、業務の説明をお聞きするのみならず、グループディスカッション、工場・スタジオ・オペレーションセンターなどの現場を見学する機会もいただきました。仕事に取り組む姿勢や、大学時代に経験しておくべきことなど多岐にわたるお話から、参加した学生たちは社会の入り口を肌で感じ、キャリアについて考える端緒を得ることができました。
 さらに、総括の機会として、各訪問先で学んだことをそれぞれ発表して議論する合同報告会を実施し、相互に理解を深めました。

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JAL本社を訪問
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経済産業省を訪問

2019年度 訪問先(順不同)
経済産業省通商政策局、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、野村證券株式会社
株式会社ポリゴン・ピクチュアズ、株式会社フジテレビジョン、NHK国際放送局、独立行政法人国際協力機構(JICA)、三菱ふそうトラック・バス株式会社、日本航空株式会社
詳細:https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/globalmanagement/news/2020/02/47807/

2020年度の訪問は2年生がサポート

 国際経営学部では、2020年度も企業や機関の訪問を行う予定です。実施にあたっては、2年生有志10名がサポーターとなり、参加する1年生に対して告知や募集・事前の学習・当日の引率・合同報告会の運営などを行い、一連の活動を支援することとなりました。秋学期に向けてサポーターはオンラインでのミーティングを重ねており、訪問をより効果的な学習の機会とすべく、昨年度の経験を活かしながら年間の計画立案を含めた相談を意欲的に進めています。学生が主体となり、教職員が協力して学部の企画を展開する好事例となることが期待されます。

1年生から始めるインターンシップ

 三菱ふそうトラック・バス株式会社と国際経営学部が昨年10月に締結したインターンシップ協定に基づき、1年生3名が、本年2月から1ヶ月間のインターンシップに参加しました。人事部門や購買部門において実務を担当し、インターンシップ後も活用される業務に携わる機会を得ました。ダイムラーAGの構成組織である同社は、社員の方々の国籍が50か国以上に及ぶなどグローバルな職場環境であり、そのなかでの経験は将来につながるものとなります。今後も国際経営学部は、同社も含む国内外の多様な職場でのインターンシップへの参加を推奨していきます。

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三菱ふそうトラック・バス株式会社でのインターン

詳細:https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/globalmanagement/news/2020/03/48538/

有志による新入生歓迎の活動

 本年4月、国際経営学部の1期生は2年生となり、初めて後輩たちを迎えることとなりました。学部の2期生である新入生がクラスメートとも教職員とも会えないまま大学生活を始めていることから、2年生有志グループ"Welcome 2nd"が立ち上がり、1年生を歓迎し情報提供を行うためのオンラインでの相談会を開催しています。
 第1回は4月25日(土)に、2年生有志7名が1年生約50名をオンラインでのミーティングに迎えました。英語による科目の勉強方法、パソコンの活用、必修の短期留学、学部の雰囲気など、事前に寄せられた質問にはプレゼンテーションを準備して答えるとともに、チャットでも質問を受け付けました。第2回は5月9日(土)に質問と回答に特化して開催しました。さらに、第3回は5月24日(日)には特別ゲストとして河合久国際経営学部長を迎え、有志からのインタビューに答えながら、学部生への期待や学部の将来について参加する61名の学生たちに語り掛けていただき、和やかな会となりました。
 参加した1年生からは、「⾊々⼼配なことがあったが、参加してみて⼤学⽣活楽しみだと思えるようになった」「情報を集めるのが難しいなか、たくさん教えていただいて不安が和らいだ」「先輩達の話を聞けて入学した実感が湧いて嬉しかった」「オンライン授業が続き、⼤学の空気がわからないまま授業だけが進み不安が募る毎⽇だったが、先輩の⽣の声を聴けて、不安が解消できた」といった声が寄せられています。制約のある環境下にあって、新入生の不安に寄り添いながら行動につなげていく2年生の想いがオンラインで伝えられていく場となっています。

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新入生のためのオンライン相談会
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第3回新入生相談会には河合久学部長がゲスト参加

詳細:https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/globalmanagement/news/2020/05/49250/

課目内外での多様な取り組みを今後も展開

 学生が主体的に課題に取り組むために、国際経営学部では独自の「アクティブステューデント」応援奨学金を設けています。学生のひとりはこの奨学金を活用し、本年2月にフィリピンのセブ島においてスラム街やごみ山の実態調査と、子供たちへの支援活動を行いました。

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奨学金を活用し、フィリピンの青空教室でボランティア活動

同じ奨学金で、バルカン半島で擬声語・擬音語を調査した学生、カンボジア等でNPO活動に参加した学生もいます。
 また、中央大学が主催するビジネスコンテスト「野島記念BusinessContest」の第13回となる昨年度の大会では、国際経営学部が優勝者を輩出しています。

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野島記念BusinessContest2019で優勝

詳細:https://www.chuo-u.ac.jp/academics/faculties/globalmanagement/news/2020/01/47419/

 この他、実務家を招いての特別講演会や、授業における各界からの豊富なゲストスピーカーの招聘など、課目内外で実務と接点を持ち、自らの将来に引き寄せながら学びを深める機会を数多く設けています。また、必修となっている短期海外留学は、多様性に触れながら視野を広げる好機となっています。

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短期留学で 加州議事堂を見学
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短期留学でワシントンDC滞在中にボランティア活動

さらに、学部生のための「アカデミックサポートセンター」において、常駐する英語・中国語ネイティブの教員らから直接、会話を含む様々な指導を得る機会が日常的にあります。
 新しい学部のよさは、学生と教職員が一体となってさまざまな取り組みにチャレンジしていく余地が多くあることであり、国際経営学部には、自分たちが学部の歴史や伝統を作っていくという気概を持つ学生が多く集まっています。学部では、今後も、アイデアを自ら提案し、当事者意識を持ってチャレンジし続ける学部生を応援していきます。教職員にとっても挑戦は続きますが、その過程で学生に力を発揮してもらうことこそが何よりも推進力となることが実感できます。学生たちが、豊かな人間性をさらに伸張し、多様なかたちでグローバルリーダーとして羽ばたいていくことを期待したいと考えます。

国松 麻季(くにまつ まき)/中央大学国際経営学部准教授
専門分野 国際経済法、対外経済政策

上智大学法学部卒業、ジョージタウン大学ローセンター修了(LL.M)。日本経済団体連合会企画調査職、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部専門調査員、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員、筑波大学大学院国際経営プロフェッショナル准教授、中央大学ビジネススクール特任准教授などを経て2018年より現職。企業活動と国際経済ルールの関係に着目して研究を行うとともに、経済関連法・政策に係る東南アジアの開発援助活動にも参加。

関連する執筆物として、『TPPコンメンタール』(共著)(日本関税協会、2019年)、『講座 国際経済法』(共著)(東信堂、2018年)などがある。産業構造審議会臨時委員、関税・外国為替等審議会専門委員などを務める。