Chuo Online

  • トップ
  • オピニオン
  • 研究
  • 教育
  • 人‐かお
  • RSS
  • ENGLISH

トップ>教育>『地域×学生』が生み出していくもの ~ボランティアセンターより

教育一覧

開澤 裕美

開澤 裕美 【略歴

『地域×学生』が生み出していくもの

~ボランティアセンターより

開澤 裕美/中央大学ボランティアセンター コーディネーター

大学が地域にある、ということ

まちづくり市民フェア(日野市)

 中央大学ボランティアセンターが2013年に設立されてからもうすぐ4年目を迎えようとしている。岩手県宮古市・宮城県気仙沼市・女川町を中心とする被災地支援活動により、学生は徐々に地域の方々にとって欠くことのできない存在になりつつある。一部の沿岸地域における中央大学生へ向ける目は、まるで子どもを育てるそれのように厳しくもあり、とても温かい。今後も学生にとって大いなる学びの現場となるべく、彼らとともに地に足のついた活動を継続していきたい。

 一方で、多摩キャンパス周辺の八王子市・日野市をはじめとする多摩地域に目を向けてみる。大学が多いこの多摩地域、中央大学生とは地域の皆さんにとって一体どんな存在になっているのであろうか。コーディネーターとして地域へ出て、行政やNPO/NGOをはじめとする様々な市民の方々とお会いする機会は多く、率直な感想としては、皆さんの中央大学生への期待は非常に大きい割には、地域への存在感は物足りないというのが現状ではないかと思う。私自身、大学で勤務し始めてから『大学が地域にある』ということへの地域からの期待値が想像以上に大きく、しかもそれが極めて曖昧なものだと日々感じている。確かにこの少子高齢化時代、若者がいるというだけで活気づくのはもちろんのこと、この若い力は不確かではあるが多くの可能性を秘めたとても心強い存在なのである。ボランティアセンターとしては、その地域からの曖昧な期待感を読み取り、授業に参加し机で勉強するだけでは得ることのできない学生の秘めた能力を掘り起こし、地域と学生との新たな架け橋を創る役割を担っていこうと、これまでも今後も取り組んでいる。

学生が地域から学ぶもの

児童館にて防災アトラクション

 地域に学生が出ていく、その方法としては様々な形態が考えられる。授業やゼミでの実習やフィールドワークをはじめ、インターン、アルバイト、どの場面でも地域の方々との繋がりは欠かせない、要のひとつとなる重要なステークホルダーである。その中でも、ボランティアとしての関わり方の特徴としては、まず自らの意思で行う主体性や自発性があること、利害か絡まないことなど、ボランティアならではの利点が挙げられるであろう。

 実際の活動としては、学生主体のボランティアサークルによる子どもたちとの活動(児童館、児童養護施設、子ども会、学童施設)、福祉施設、障がいのある子どもたちとの活動に加え、ボランティアセンターができてからは社会福祉協議会や市役所などとの新たな繋がりが増え、地元行政との良い関係性ができつつある。また、東日本大震災の経験を多摩地域での防災に活かすべく、日野・八王子地域での防災・減災活動にも積極的に参加している。2014年度には、減災イベントの企画・運営に中心的に関わったことをはじめ、多摩地域を中心とする様々なボランティア要請を数多く受け取り、述べ約80名以上の学生が多様な地域づくりに参画した。2015年度には、地域の自治会を中心とする防災活動イベントに多くの学生が参加しているのに加え、環境・農業・福祉分野において、新たな地域・まちづくり活動をボランティアセンター主導でマッチングを行い、これまで以上に多くの学生が参加している。

里山の川で一休み

 学生にとっては、これまで通学するだけだった大学周辺の地域活動に参加することにより、見るものの視点が大きく変わっていく。漠然と『公務員になりたい』と勉強を進めていた学生が、現場で活き活きと市民とともに活躍する公務員を目にすることにより、自分自身のなりたい姿を構築していく。畑での農作業を初めて経験した学生が、農業や命を育む大切さを実感し、改めて自炊するきっかけを掴み新たな世界を広げていく。触れ合う機会がなかった障がい者と対面することにより、自分自身の心のバリアが取れて新たな成長へと繋がっていく。これまでは通学する場所であった地域が、自分を学ばせ、世界を広げさせてくれる様々な存在を包含するコミュニティーへと変わっていく。私はその瞬間を彼らの側で見られるありがたい仕事をさせてもらっている。

学生にとっての壁とは

 しかしながら、いくつかの時間軸での難しさというのを学生と関わる中で日々感じている。まずは、大人の想像よりも高く立ちはだかる『はじめの一歩』である。ボランティアをしたことがなくやってみたいという相談に来る学生にとっては、コーディネーターが紹介するボランティアへの『はじめの一歩』が中々踏み出せない。もちろん人には依るが、電話やメールで連絡を取るだけ、その一歩が想像以上に難しい学生も少なくはない。また、ようやく一歩を踏み出し、充実した活動を経験した学生の中においても、二歩目・三歩目がこれまた中々続かない。初めての経験に満足し、もっと行きたい学びたいという欲がない学生も少なくないのが現状である。加えて、感情の不安定さや世代交代による乱高下など、学生特有の壁にぶち当たる。

 こちらとしても、一歩目へのサポートをいかにしていくか、継続的に彼らが関われるような仕掛けをどのように取っていくかなど、試行錯誤しながら彼らと一緒に学んでいきたい。

コーディネーターとしての関わり方とは

 ボランティア活動をしてみたい、または既にしている学生と日々向き合い、彼らが行う活動をより良くより深いものにするべくサポートする、コーディネーターとしての理想の関わり方というのはどういったものか。大学という教育機関の中にあるボランティアセンターとして、どのように接すればより深い学びへと彼らを誘うことができるのか、その難しさと奥深さを感じている。前職である国際ボランティア活動を行うNPOで関わっていた大学生は比較的同じようなタイプの学生が多かったが、大学という組織で関わる学生は本当に多様なため、こちらも日々勉強の毎日である。

 また、学生ならではの感情の不安定さも視野に入れ、大人や地域からの期待を良い刺激として活動を継続できるよう情報を整理しながら、今後も彼らの一番の応援団となれるよう、精進していきたい。

学生にとってより広く深い学びの機会提供のために

 前述した学生コーディネートというのは、どうしても個人のこれまでの経験値や勘に頼ってしまいがちである。接する学生の立場に立つと、いろんな大人からいろんなことを言われ、一体誰の言葉に従っていいのかと混乱する一因となり得る。

 そこで現在ボランティアセンターでは、経験値や勘にばかり頼ることなく、『形式知に基づいたインストラクション』を行うため、学生個人の成長段階の状態を把握できるよう、独自の指標づくりに2015年から取り組んでいる。対面する学生がこれまでどのような経験をして、どのような力を持っており、また今後どういった部分を伸ばしていくために、どのような関わり方をすれば良いのか。そんな難問がすぐに解決できるとは思えないが、できる限り彼らへの関わり方がより良いものとなるよう、外部の方の協力も得ながら進めているところである。大学での4年間という限られた時間において、ボランティアを通して貴重な体験ができ、それが今後の人生において大きな財産となるよう、手厚いサポートを目指していきたい。

最後に

小学校で減災イベント(日野市)

 2015年に引き続き、地域と大学の協働事業として、今年も2月4日~11日の期間中に『大学生ボランティア活動報告&防災イベント』を実施する。地域の方々が多く集う商業施設であるイオンモール多摩平の森(豊田駅)をお借りして、中央大学と多摩地域にある5つの大学や行政、地域ボランティアセンターと共に協働で取り組むイベントである(参照HP)。内容は、期間中展示しているパネル写真展に加え、2月6日(土)には、大学生によるボランティア活動発表や防災ゲーム、防災アトラクション、東北応援物産展など、家族でも楽しめるように準備を進めているところである。こうした事業を通じて、一人でも多くの学生が地域と繋がり、新たな一歩を踏み出せるきっかけとなることを望んでいる。

開澤 裕美(かいざわ・ひろみ)/中央大学ボランティアセンター コーディネーター
京都府宇治市出身。1975年生まれ、1997年同志社大学法学部政治学科卒業。国際ボランティア活動を企画・運営するNPO法人で関西事務局を立ち上げた後、CSR(企業の社会的責任)のコンサルタントを経て、2015年4月より現職。NPO法人NICE(日本国際ワークキャンプセンター)副代表・理事も務める。