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教育一覧

中迫 俊逸

中迫 俊逸 【略歴

中央大学FLP国際協力プログラム

中迫 俊逸/中央大学商学部教授
専門分野 ビジネス・コミュニケーション論

1.中央大学FLP国際協力プログラムの概要

 本取組は、実学重視の実地・応用教育の伝統を持つ中央大学が、国際協力活動を支え主導出来る質的・量的人材養成ニーズに応えるため、各学部の設置科目を有機的にリンクさせ、新たな知的欲求に応えている“Faculty-Linkage-Program(以下「FLP」という)”という学際的教育プラットフォームにおいて、「国際協力プログラム」を実施・展開しています。このプログラム独自で取り組む3年間にわたる演習活動を通じて切磋琢磨することにより、国際協力諸問題への多角的で学術的なアプローチを可能とし、幅広い分野・立場で国際協力活動を推進出来る人材の養成を目指しています。

2.教育プラットフォームを支える5つの柱

(1)T字型専門教育(ヘッドワーク)

 本教育システムにおける教育効果を担保するための教育課程上の工夫として、講義科目群を(1)社会開発(文、総合、法、経済)、(2)経済開発(文、総合、法、経済、商)、(3)国際関係(文、総合、法、経済、商)、(4)国際ビジネスとコミュニケーション(文、総合、法、経済、商)、という4領域の履修モデルコースとして設定し、コース毎に各講義科目を基幹科目及び発展科目として学年別に整理することで、講義科目を通じた教育の体系化と構造化を図っています。

 それぞれの領域の中にも縦軸と横軸があり、縦軸は所属学部の主専攻過程における専門能力、そして横軸は学際的且つ総合的な幅広い専門知識を習得する教育です。演習活動においても、縦軸と横軸があり、それぞれの所属学部で修得した専門知識をバックグラウンドとする学生たちが集まってサラダ・ボウルを構築しています。

(2)国際機関ネットワーク

 国際機関の関連機関等が有する人的・物的資源や、ノウハウ等の知的資源を活用できる環境の整備を、本プログラムでは継続して行っています。さらに、現地社会調査を拡充させる努力を行っており、訪問先の一部の例としては、JICA、JETRO、APEC、ハノイ国民経済大学、ベトナム国家大学、Nanyang Technological University、Singapore Management University、カンボジア文化芸術省、クメール伝統織物研究所、シャンティ国際ボランティア会、 国境なき子どもたちなどNGOを含んだ組織、川崎汽船、本田技研工業、清水建設、TAICHI HOLDINGS、PERODUA MFG. SDN BHD、王子製紙、ラオス国立大学、フィリピン赤十字社、ICAN、YOUNG FOCUS、水道技術研究センター、Manila Water Company Inc.、Maynilad Water Service Inc.、Metropolitan Waterworks Sewerage System、Bantay Tubig、野村證券、名古屋銀行、千葉銀行等です。

 さらに、本プログラムでは学生を対象にロールモデルを提示する機会を積極的に設けています。JICAをはじめとする国際機関での業務従事経験者をゼミナールでの指導担当者として本学の特任教授として招聘しているほか、「JICA講演会」及び「ゼミ主催講演会」、「期末交流会」を通じて多様なロールモデル(例:日経Weekly編集長、総合商社OB、アジア経済研究所研究支援部長、内閣府国際平和協力本部事務局研究員等)との交流を促進しています。

(3)現地社会調査(フットワーク)

 これは、リサーチの一貫として、現場における“現代的課題を発見し、問題解決に取り組ませる”という教育手法です。社会調査手法としては、主として実地観察、ヒアリング調査、アンケート調査、統計的数値解析等を用い、学生が実社会において様々な問題を解決しようとする際の基礎的調査・分析能力の涵養に努めています。現地社会調査を中核とした段階的な演習指導を導入することによって、専門教育等で習得した理論知を「実践知」へと発展・昇華させることを目的としています。なお、訪問国は、インド、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブータン、ベトナム、マレーシア、ラオス等です。

(4)デュアルゼミナール

 これは、3年間で2名以上の異なる担当者によるFLP国際協力プログラムの演習を受講生に履修させることを原則としている制度である。これによって、2年次から4年次までの3年間を通じて、講義で修得した知識を「体系化」することを目的としています。

(5)国際協力マインド(ハートワーク)

 これは、1番重要であると思っているものです。学生たちが各自の専門分野に立脚して、「地球社会に貢献できるハート」、すなわち、その「心」を持った人材の養成を目指しています。

3.到達目標

 本プログラムの教育における到達目標としては、(1)現地理解・現地適応能力を養成、(2)問題を発見し、分析する能力を育成、(3)一定水準以上の基礎的専門知識体系を修得、(4)調査報告書や専門的論文などの文章の執筆能力とそれをプレゼンテーションするための能力を養成です。海外実態調査の事前学習、現地で学んだこと、そして事後学習を通じて研究した内容を論文にまとめ、その内容を口頭で発表する機会を受講生に与えることによって、さらに高い学習効果を導き出すことを目的としています。

4.教育プログラムの全体像

 社会のニーズに応えるために、国際協力マインドを持つ人材を養成する教育プログラムを充実させていく体制として、4分野から構成される指定科目群と2年次から4年次までの演習との組み合わせと、さらに各学部の専門教育課程を融合させるT字型専門教育を実施しています。この教育プログラムを充実させるために、プログラムを履修している学生たちが構成しているプログラム実行委員会とFLP-Supporting Studentなどによるエンハンスメント・ファクター、並びに担当教員を中心としたプログラムの評価体制があります。

5.本プログラムの実施体制

 教員(演習担当者あるいは講義科目担当者)による担当者会議が月1回程度開催されている。ここでは、プログラムの運営と管理を行っている。具体的には、プログラムの点検と評価を行い、プログラムの質的改善と向上を目指している。このために、プログラム満足度調査やCPU(Curiosity-Participation-Utility)調査の結果を元に、教育目標の確認と検証を行っている。担当者会議と共同体制を有している教務総合事務室は、このFLPプログラムを実施するために、2003年4月に新たに設置された組織です。

6.プログラム実行委員会とFLP-Supporting Student(FSS)

 プログラム実行委員会とFLP-Supporting Student (FSS)は学生によって構成されている組織である。プログラム実行委員会は、「海外実態調査報告会(毎年12月実施)」、「期末交流会(毎年7月と12月に実施)」、「就職進路相談会(年2回程度)」、「スポーツ大会(年1回程度)」、青年海外協力隊の帰国隊員による「JICA講演会(年2回程度)」、国際協力に関する諸問題を取り上げる「プログラム主催特別講演会(随時)」等の企画・立案及び実施・運営を担っています。また、FLP-Supporting Student (FSS)は、上級生が下級生に学習や進路に関するアドバイスを主として行っています。

 このように、中央大学のFLP国際協力プログラムでは、このプログラムの運営にあたって、学生の主体性・社会性と学修モチベーションを一層高めるとの教育的配慮から、当該プログラムの企画・運営への積極的な参画を促しています。すなわち、学生の主体的学習を促進する仕組みがプログラムの重要な要素の一つとして組み込まれているのです。このことで、学生、教員そして職員が三位一体となって、お互いに協力しながらプログラムが運営されているのです。

7.プログラム履修者の選抜

 プログラム履修者の選抜は、履修希望者が1年生の11月第1週までに指定されたエントリーシートを提出します。そのエントリーシートによって志願者の経験・動機・希望学習テーマ等を得点化した多変量総合数値と面接試験(11月中旬以降に実施)の点数を、総合的に判断して担当者会議(11月末に開催)で合否決定を行っています。

8.プログラムの教育効果

 教育上の有効性を裏付ける顕著な指標として、本プログラム履修生と学士課程全体(6学部)におけるGPAの比較が挙げられます。具体的には、学士課程全体(6学部)でのGPA の合計平均が、2006年度においては、2004年度入学生で2.33、2005年度入学生で2.29、2007年度においては、2005年度入学生で2.31、2006年度入学生で2.23、2008年度においては、2006年度入学生で2.35、2007年度入学生で2.33であるのに対し、本プログラム履修生におけるGPAの合計平均は、2006年度においては、2004年度入学生で2.74、2005年度入学生で2.95、2007年度においては、2005年度入学生で2.88、2006年度入学生で2.91、2008年度においては、2006年度入学生で2.91、2007年度入学生で2.90でした。また、2005・2006年度修了生より卒業生総代が選ばれている、という結果も出ています。なお、本学では、90点以上で4.0、80点以上で3.0、70点以上で2.0、60点以上で1.0でGPAを算出しています。なお、入試形態とその成績はプログラム履修者の選抜には関係がなく、また筆記による選抜も行っていません。プログラム履修者が優秀な実績をあげているのは本人の努力と本プログラムを履修している学生たちがお互いに刺激しあっているからではないかと考えられます。

9.2006年度以降に実施したプログラム満足度調査

 2006年度以降に実施した「プログラム満足度調査(各項目5段階評価)」において回答された内容を分析したところ、2006年度においては、「講義科目」で約70%、「演習科目」で約96%、「国際協力プログラム全体」で約88%、2007年度においては、「講義科目」で約73%、「演習科目」で約91%、「国際協力プログラム全体」で約89%、2008年度においては、「講義科目」で約79%、「演習科目」で89%、「国際協力プログラム全体」で約79%の満足度なっており、履修している学生達から継続的に高い評価を得ていることが実証されました。

中迫 俊逸(なかさこ・しゅんいつ)/中央大学商学部教授
専門分野 ビジネス・コミュニケーション論
兵庫県出身。1956年生まれ。1979年関西学院大学経済学部卒業。1981年セント・マイケルズ大学院大学 英語教育学専攻修士課程修了。1986年大阪教育大学教養学科講師、同大教養学科助教授を経て、1994年より中央大学商学部助教授、1997年から現職。研究テーマはビジネス・コミュニケーションの理論、実践及び教育方法の研究。