人工関節手術支援ロボット導入病院特集
本特集では、手術支援ロボットを導入している病院と、人工関節手術に実績のある病院を紹介します。記事では、手術支援ロボットによる人工関節手術の特長を導入病院の先生方にお伺いしました。
人工関節置換術では、痛みからの解放のみならず術後のQOLやADLを、いかにこれまでの生活水準に近づけられるかが問われます。そのためには、人工関節を的確に設置することが重要であり、近年においてはロボット支援による人工関節の手術が普及しはじめました。
整形外科領域において日本初のロボティックアーム手術支援システムとなる「Mako(メイコー)」が2017年人工股関節全置換術で、2019年に人工膝関節で薬事承認。2019年、主に膝の人工関節置換術の支援ロボット「NAVIO (ナビオ)」と、よりコンパクトで骨切除スピードを向上させたNAVIOの次世代機「CORI(コリ)」が2021年から臨床での使用が始まりました。また2020年、別の機種で膝の人工関節置換術を支援するロボット「ROSA (ロザ)」も国内の病院で手術が開始されました。
4つの人工関節手術支援ロボットであるMako、NAVIO、CORI、ROSAは、全国の病院に導入が進んでおり、術後の成績の良さなどが注目されています。2019年から2021年にかけて、手術支援ロボットによる人工関節全置換術は、いずれも保険適用で受けられるようになりました。
保存的療法での改善が限定的と診断される場合、患者さんの症状だけでなく、年齢などを総合的に勘案し、人工関節置換術が適応となります。人工関節の耐用年数は一般的に20~30年程とされており、60歳以上の高齢者に向いていますが、症状によってはADL(日常生活動作)の向上のためにより若い年齢で手術を行うケースも見られます。
人工関節置換術では、従来はレントゲン、またはCTデータに基づき、医師自らの経験をもとに手術を行ってきましたが、その後、術前計画に基づきナビゲーションシステムを活用し医師が手術を行う病院も増えました。現在、普及が進む手術支援ロボットによる人工関節手術は、ロボットが医師の手術を支援することで人工関節を的確な位置や角度に設置し、じん帯のバランスも整えることができます。そのため関節機能の早期回復が望めるようになりました。
前述のとおり従来の人工関節手術では、医師の技術に頼るところが多くあり、例えば骨を切る道具が最適な切除部分からずれてしまい計画と誤差が生じることがありました。
一方、人工関節の手術支援ロボットは、患者さんそれぞれの3Dデータを基に、関節内の軟部組織や骨の変形の度合いを加味して、医師が決めた術前計画のとおりに位置や角度を的確に把握。骨を極めて高い精度で切断・削除でき、じん帯のバランスも確認しながら的確に人工関節を設置できるようサポートします。人工関節のサイズ設定や設置位置、骨を削る深さや角度などを計画どおりに進めることができ、そのことで、人工関節自体の摩擦や緩みなどを低減させ関節全体を良好に保つことも期待されています。
手術支援ロボットは、人工関節の手術の多くの症例を経験した医師の手元で操作されて手術が行われ、手術は医師により進められます。人工関節の手術支援ロボットの登場が、変形性関節症で、関節に痛みを抱える患者さんにとっては画期的な出来事となりました。