シンポジウム<未病>未病を一緒に考えよう 2015年7月8日(水)よみうり大手町ホール 大ホール

2015年8月26日

「未来貢献プロジェクトシンポジウム・未病を一緒に考えよう」(読売新聞社主催)が7月8日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで開かれ、約450人が参加した。第2部では、社員や顧客の健康づくりのサポートに熱心な3企業の担当者が、それぞれの取り組みを語った。司会は木佐彩子さん。

企業の担当者が「未病」についての取り組みを説明した

食品の機能 研究に力

若山 和正氏(ファンケルヘルスサイエンス取締役)

若山 和正氏

 健康を一生涯サポートする日本一の企業を目指したいと考えています。商品やサービスを通じて、日常生活を問題なく送れる期間を示す、健康寿命を延ばすことに貢献していきたいと思っています。

 機能性の高い商品の研究にも力を入れています。サプリメントがどれだけ効率的に体に吸収されるのか、といった研究を進めています。4月から機能性表示食品制度*が始まり、企業の責任の下で、商品の機能を告知することが可能になりました。様々なサプリメントから確かな機能の商品を選べると思います。

 健康を商売にしている会社なので従業員も健康でなければと考えています。定期健診や再検査の受診率を高めるようにしていて、健診受診率は100%です。再検査56人のうち、53人が終了しています。

 社員食堂では栄養バランスのとれた食事、特に栄養価の高い発芽米を提供しています。自社製品の青汁は1日1杯を無償提供し、1日に必要な緑黄色野菜をとれるようにしています。「健康貯金スタンプカード」というものがあって、食事をしたり、青汁を飲んだら判子を押し、健康認識を高めるようにしています。

 運動は、独自に開発した体操を朝礼の5分間、全社員で行っています。ウォーキング推奨のため、活動量を個人戦やチーム戦で競う形で取り組んでいます。体重を意識するとか、運動に関する意識が非常に高くなってきています。

木佐 商品を受け取る側の健康意識やニーズはどうでしょう。

若山 生活習慣病への意識は最近高まっている半面、具体的に、どうしていいかわからないという声が多いと感じています。私どもは〈1〉自分の健康状態を把握する〈2〉自分にあった食事、運動を知る〈3〉かかりつけ医を持つ——の三つのアドバイスをしています。

木佐 一人で頑張りすぎず、周囲に甘えるのも大事ですね。

若山 何かするより、まず相談していただくのが一番かと思います。

*機能性表示食品制度

「おなかの調子を整えます」「体脂肪を減らす機能があります」といった健康への効果を科学的な根拠(データ)を基に、企業が責任を持つ形で商品(食品)に表示できる制度。企業は商品の販売日の60日前までに、消費者庁へ、安全性と機能性の根拠や、健康被害の情報収集体制を届け出る必要がある。これまで機能性が表示されている食品は、国の許可を得た特定保健用食品(トクホ)と、国の規格基準に適合した栄養機能性食品に限られていた。機能性表示食品には国の審査は必要ない。

関連産業 成長後押し

松本 英之氏(みずほ銀行 産業調査部次長)

松本 英之氏

 みずほ銀行には、他のメガバンクにはない、中長期的な目線で産業をどのように活性化するかを検討する部署があります。ライフケアチームでは、健康寿命を延ばすことをテーマに、医療、介護、医薬品などの分野の企業や行政と議論を重ね、情報発信や提言を行っています。主に取り組みは三つです。

 一つ目は情報支援。経済産業省が事務局を務める次世代ヘルスケア産業協議会で新事業創出ワーキンググループに参画し、問題提起や政策提言を行っています。この協議会の地域版とも言える神奈川県の未病産業研究会にも参加しています。医療産業の海外展開の促進に関する検討会や、関西財界セミナーにも参加して意見交換しています。

 二つ目は金融支援。官民の共同体、みずほ銀行や地域金融機関が出資する地域ヘルスケア産業支援ファンドは100億円規模で、成長が見込まれる事業に投資を行っています。医療や介護だけでなく、関連するロボットやICT(情報通信技術)分野も出資の対象となります。

 三つ目が産業創出の支援です。健康意識を高めてもらおうと、自治体と連携し、健康的なことをすると、ヘルスケアポイント(年間2万4000円が上限)がたまる実証実験をしています。事業者向けには、規制内容や法解釈があいまいで、参入をためらう分野についてグレーゾーンを解消して参入を支援する取り組みをしています。

木佐 今後力を入れていきたい分野は何でしょう。

松本 健康寿命を延ばす産業の活性化が大きな命題です。サービスが芽で終わってしまうのでなく、事業や産業になっていくかどうか。利用者のやる気を引き出し、収益を生み出し、本当に効果がある。これらが重要だと考えています。

木佐 最後にこれだけはというメッセージをお願いします。

松本 高齢化社会は恐れるだけではいけなくて、長生きができる社会、究極的には非常に幸せな社会だととらえなければいけない。そういう発想が必要かなと思います。

健康増進 保険で還元

北沢 利文氏(東京海上日動火災保険副社長)

北沢 利文氏

 東京海上グループは、医療や介護の分野に力を入れています。「元気で人生を楽しみたい」というお客様の願いを実現しようと思うからです。保険会社は保険金を支払うことが本業ですが、その前に、健診をできる限り受け、病気にならない、病気が悪化しない、病気になった場合には情報提供をする、という取り組みをしています。

 44道府県、16市と連携して、がん検診の受診率を向上させるためのセミナーやイベントを行っています。10月には、乳がんの正しい知識と検診の早期受診の推進を啓発する、街頭でのピンクリボン運動も予定しています。

 保険についても様々な試みをしています。病気にならない、入院しないことや、できるだけ早く退院することで保険料にメリットがある保険を考えてきました。その結果として、医療保険で70歳まで1回も保険請求がなかった場合には、70歳になった際に、振り込んだ保険料を全額戻すという保険を開発しました。もし途中で入院した場合は保険金を支払いますが、70歳になった時に差額を払い戻します。健康増進の努力が還元される保険です。

 ほかにも、企業の健康対策を応援する、ストレスチェックやメンタル電話相談といった情報提供のサポートも行っています。

 健康な状態、健康に近い未病の状態が長く続くことが重要。未病という考え方を基に、日本をもっと元気な社会にしていくよう貢献したいと思っています。

木佐 なぜこのように幅広い事業を展開されてきたのでしょうか。

松本 生命保険会社は保険金を払うイメージですが、お客様にアンケートをすると、がんや介護の問題に大変関心が強い。そこで自動車や火災保険だけでなく情報提供をしようと医師や看護師を採用したグループ会社を作って、新しい形の商品開発をしています。

木佐 今後の取り組みは。

松本 健康であることがメリットと感じてもらえる保険を開発し、健康について関心をもってもらおうと考えています。

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