未来へ丸ごと3Dデータ化
クモノスコーポレーション副社長 倉田哲郎氏

読売新聞大阪本社版朝刊

「3Dデータとして記録すれば未来永劫(えいごう)残せる」と話す倉田哲郎氏

 クモノスコーポレーションは、1995年に発生した阪神大震災の復興支援を志し、震災の2か月後に設立された測量の会社だ。工事の測量からスタートし、現在は道路や橋の点検も手がけるが、構造物を3次元(3D)のデジタルデータとして記録することもやっている。大阪・関西万博では、パビリオンを含め、万博会場をそのまま3Dデータとして記録し、万博の姿を未来に残したい。
 レーザーを全方位に何百万点も照射して距離や角度を計測することで、街全体でさえもありのまま写し取ることができる。技術自体は20年ほど前から建築に取り入れられているが、情報技術(IT)が進んで精巧に記録することが可能になり、大容量のデータもスマートフォンやパソコンで手軽に閲覧できるようになった。

 万博では、例えばパビリオンの建物だけでなく、館内の展示物や飾り付けまで全て記録できる。1度、記録してしまえば、どの方向からでも正確に見ることができるし、その中に入っていくこともできる。VR(仮想現実)技術と組み合わせれば、あたかもその場にいるような感覚を味わうことができるだろう。
 今はインターネットで世界中がつながる時代だ。会場に足を運べない人でも、3Dデータによって万博を体験できる。閉幕後、万博会場をメタバース化し、仮想空間上で100万人が鬼ごっこをしたっていい。そういうエンターテインメントも考えられる。

 過去の万博でも様々な記録が残されているが、完全な3Dデータはない。大阪・関西万博では、いくつかのパビリオンの出展者から「3Dデータで残してほしい」と依頼を受けている。ただ、会場全体という話にはなっていない。ぜひ公式プロジェクトとして、万博を丸ごと3Dデータ化させてもらいたい。
 万博は技術の祭典であり、「未知の未来」を身近なものにする場でもある。多くの人が未知の技術に触れ、共有することで、現実になっていく。万博を通じて3D化の技術を知ってもらい、より身近なものになれば、想像もしていなかったような活用方法が出てくるのではないか。

(聞き手 升田祥太朗)




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