EVバス 交通の未来示す
大阪メトロ社長 河井英明氏

読売新聞大阪本社版朝刊

「万博のレガシーとしてEVバスの自動運転を確実に実現させたい」と語る河井英明氏

 交通事業は変革期を迎えている。沿線人口の減少や労働力不足などに対応するには、自動運転化、オンデマンド化、電気自動車(EV)バス導入の三つの解決策をいかに軌道に乗せるかが重要になる。

 2025年大阪・関西万博では、先進技術の実証の場となる未来社会ショーケース事業として、他社と連携してEVバスによる自動運転の社会実験を行う。万博は、進化した交通の将来像を示す絶好の機会になるだろう。
 大阪メトロは、人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の会場内輸送と、隣接する舞洲(まいしま)の来場者用駐車場から会場までの輸送を担当し、計150台のEVバスを運行させる。

 会場内には小型のEVバス35台を走らせ、うち4台は、緊急時も含めて特定の条件下で完全自動運転を行う「レベル4」を計画している。自動運転はシステムが担う基準によってレベル1から5まであり、ドライバーが運転操作をする必要がない「レベル4」は上から2番目だ。舞洲と会場を結ぶEVバス115台のうち4台も「レベル2~4」の運行を想定する。
 運行に当たっては、乗客が集中して運行頻度が高くなる時間帯など全体の電気の需給バランスを見定め、効率的に運用するエネルギーマネジメントシステムの開発が必須だ。道路に埋め込んだ送電装置から走行中のバスに給電し、遠隔監視、遠隔制御を行うシステムの開発にも取り組む。
 EVバスをこれだけ大規模に導入する実験は世界でも例がない。大阪メトロでは35年までに路線バスの全車両をEVバスに切り替える方針で、運行や保守のノウハウを蓄積する貴重な機会になる。

 大阪メトロは、万博の大阪ヘルスケアパビリオンに出展する。交通と社会生活のサービスが融合した大阪の未来を映像で示す。サテライト会場(大阪市城東区)も設け、新たなモビリティー(移動手段)の乗車体験などを提供する。開幕の半年ほど前にオープンし、機運醸成のイベントを開きたい。

 万博は、世界が集う豊かな未来社会への扉だ。人々が知恵を持ち寄り、イノベーションが生まれる場になる。交通事業者の使命は、より良い交通サービスを提供し続けることだ。万博を大きなきっかけにして、大阪に圧倒的に便利で快適なサービスを普及させたい。

(聞き手 林佳代子)




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2025年大阪・関西万博を盛り上げようと、準備を進めている企業や団体のキーパーソンにインタビューします。
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