幸せ感じる街づくり 発信
大林組 スマートシティ推進室長 船橋俊一氏

読売新聞大阪本社版朝刊

「住民からウェルビーイングを高めるための要望を束ねることができれば、結果として新たな建設需要の創出につながる」と話す船橋氏

 1892年創業の当社にとって、1970年の大阪万博は当時、最先端の建築技術だったプレハブ化工法などを実証する場となり、会社が成長する節目になった。2025年大阪・関西万博では、デジタル技術で人々のウェルビーイング(心身が健康で幸福な状態)を把握する手法を提案する。全ての人が快適で幸せを体感できる街づくりを目指す大林組の姿を発信したい。

 スマートシティ推進室では、ウェルビーイングを可視化する情報共有アプリを開発した。アプリの利用者は、街の中で気に入った建物や空間を選び、感想を添えて入力すると、その情報が画面の地図上に表示される。
 アプリを使った実証実験を重ね、何を重視するかで分類していくと、人によって「積極的に関わりたい」とか「安定志向を求める」など五つの行動傾向に分かれることが判明した。この分析結果を活用し、街の中でウェルビーイングを高める場所やサービスが提案できるようになる。
 なぜ、大林組がこんなアプリを作るのか。従来の日本の街づくりは、行政や事業者など管理者側の目線が優先され、画一的になってしまった。だが、これでは街に愛着や魅力は生まれないし、集客力がなくなる。これからの時代は間違いなくユーザーや市民の目線からの街づくりが求められる。

 海外に目を向けると、そういう事例が目立つ。スペイン・バルセロナは一定の広さの街区ごとに住民が道路の使い方を考えている。子育て世帯が多ければ遊び場にしたり、高齢者が多ければ休息スペースにしたりできる。
 日本でも同じ視点での街づくりが必要と考え、アプリの開発を企画した。日常的に利用してもらうことで、住民の潜在的な要望や課題を収集することができ、街の進むべき方向が示せる。そうなると住民の意見を集約し、合意形成を図る手段になる。

 この仕組みを万博会場に導入しようと、「データ共鳴社会」を目指してテーマ館を出展する慶応大の宮田裕章教授と共同で準備を進めている。テーマ館で利用できるアプリを開発し、館内の展示物に触れた人の感情を分析することで、同じ価値観を持った人同士がつながる仕掛けができないか検討している。

(聞き手 升田祥太朗)




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2025年大阪・関西万博を盛り上げようと、準備を進めている企業や団体のキーパーソンにインタビューします。
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