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桃山学院大学×四国水族館
「未来の水族館」をテーマにビジネスをデザイン

読売新聞大阪本社版朝刊 2020.01.18

 桃山学院大学ビジネスデザイン学科は、産業界と連携した実践教育が特長だ。コロナ禍で社会が変わりつつある中、同学科の学生たちが2020年6月にグランドオープンした四国水族館(香川県宇多津町)と連携し、「未来の水族館の形」をデザインした。

桃山学院大学ビジネスデザイン学科とは?

 桃山学院大学(大阪府和泉市)は、19年度に開設した経営学部ビジネスデザイン学科を21年4月にビジネスデザイン学部とし、入学定員も70人から200人とする。昨年秋には、大阪市阿倍野区に都心型キャンパスビル「あべのBDL(ビジネスデザインラボ)」が完成し、最先端のオフィスビルのような雰囲気に包まれた9階建ての新校舎が拠点である。

 同学科は、新しいビジネスを創造できる人材の育成を目標に、チームでの課題解決型学習(PBL)を学びの中心に据える。70を超える企業・自治体・団体と連携した実践教育が特色だ。1年次から、連携する企業等で働く社会人とともに学び、約30の課題に取り組む。「まず実践し、次いで専門理論を集中的に学ぶ」カリキュラムに特長がある。

 特色ある学びを通じて、アントレプレナー(起業家)としての素養と実行力を身につけることで、起業はもちろん、組織内で新たなビジネスを企画・実行したり、公務員やNPO職員として新しい社会・まちづくりに貢献したり、既存事業を継承、改革するなど、将来の活躍の場を広げる狙いがある。先行き不透明で閉塞感があふれる社会において、斬新で実現可能なビジネスをつくることができる人材を育成する。

 今回のプロジェクトは、大村鍾太准教授の指導のもと、同学科の1、2年生の各2チーム、計4チーム・14人が参加する課外授業として行われた。学生たちは水族館における現状の課題を主体的に発見し、新たなビジネスプランを組み立てた。

 また新型コロナウイルス感染症拡大状況下でも、同学科の授業は対面とオンラインを組み合わせ、止めることなく実施されてきた。同プロジェクトでも、大阪市内の「あべのBDL」を拠点として、感染防止策を徹底した上で学生は対面で、四国水族館の担当者は兵庫県や香川県からオンラインで参加し、「リアルとデジタルの融合」を実践する授業形態で行われた。

「未来の水族館」新ビジネスを提案せよ

四国水族館・中山さんのセミナー後、具体的な質問を投げかける学生たち

 プロジェクトのテーマは、「『未来の水族館』をテーマとしたビジネスアイデアを提案せよ」。四国の玄関口に位置する四国水族館は四国観光の要所。観光を通じた地方創生や、SDGsの理念に沿って、持続可能なまちづくりや地域活性化に向けた提案も求められる。また、コロナ禍で新しい生活様式やレジャーの楽しみ方が模索されている中、現状の課題を発見しつつ、学生らしい自由な発想で、四国水族館の魅力発信と、それを集客へとつなぐ案を考えようという試みだ。

 20年11月中旬に行われた授業では、同館広報担当の中山寛美さんが、同館の理念や施設の内容を紹介。学生たちは早速、「収益中の入場料収入の割合は」「県内外の来場者の割合は」などと活発に質問した。同月末の2回目の授業では、学生たちの事前のリサーチに基づく質問や四国水族館らしさを生かすための掘り下げた質問が相次ぎ、中山さんを驚かせた。

 こうした内容をチームごとにまとめたプレゼンテーションが同年12月15日に行われた。全体で1か月という短期間で仕上げられたビジネスプランは、どれも学生自らが楽しもうとする視点が盛り込まれた、“試してみたくなる”内容ぞろい。審査員からは「新鮮な発想」「いい知恵をいただいた」と好意的な評価が相次いだ。

今回、全3回のセミナーやプレゼンにはウェブ会議システム「Zoom」が活用された  

プロジェクトを終えて

 水族館事業をテーマとした課題は初めてであり、学年が異なるため普段は別々に学ぶ1・2年生がともに取り組んだ今回のプロジェクトは、学生たちにとって難しくも楽しい経験だったようだ。

 1年生からは「短時間で思いを伝える難しさを痛感した」「話し方を褒められたことは自信になった」といった感想や「客観的に課題を整理して提案につなげていく2年生が、すごいなと感じた」という声もあった。 

 2年生からは口々に、「実現可能性が高いと評価されたのがうれしい」という感想が聞かれた。初めてチームを組む相手と意見をまとめ上げていく作業も、「自分がふと口にした意見を他の人がどんどん膨らませ、いろいろなアイデアに育っていく過程が面白い」と前向きに受け止めていた。 

 大村准教授は「1年生にとっていい成長の機会になった。2年生も今後、1年生に積極的にアドバイスするような関係性を築いてほしい」と語り、「提案して終わりではなく、次は実現に向け動いていくステップに進みたい。今回のプロジェクトを見て、学生たちにはそれができると感じた」と思いを口にした。


プレゼン紹介

個性あふれる「リアルとデジタルの融合」提案

 1年生のチームは、プロジェクションマッピングなどを使って四国水族館内に「自然を再現」することを提案。四国の自然に没入するような体験は、従来の「水槽の中をのぞき見る」スタイルの水族館と一線を画し、来場者増につながると訴えた。

 もう一つの1年生チームは、大阪にコラボカフェを作ることを提案。オンラインで四国水族館のリアル映像を流し、四国にちなんだメニューも展開することで現地に行きたくなると説明し、学生たちが自主制作したCM動画も紹介して会場を沸かせた。



 入場料に多くを依存する収益構成が課題だと指摘したのは2年生のチーム。熱心なファンを作る仕組みとしてスマホのアプリ活用を提案。飼育日誌や魚の治療法など魚のプロならではのコンテンツを盛り込めば、推しの魚を目当てに遠方からの来館につながると訴えた。

 もう一つの2年生チームは、そもそも香川の魅力は県外の観光客に十分伝わっているのかという問題点から出発。四国水族館が懸け橋となり、地元の人が考える観光プランを県外観光客に発信する仕組みを提案し、地方創生につなげようと呼びかけた。

 いずれも「リアルとデジタルの融合」がテーマながら、内容や発表の仕方にチームの個性や経験の差が表れ、今後の学びに生かされそうだ。


プレゼン終了後、審査員と大村准教授(左端)、参加学生全員で記念撮影

「こうしたい!」を形にする思考

桃山学院大学 牧野丹奈子学長
 4チームとも、顧客の体験から生まれる価値に着目し、そのための新しいビジネスの仕組みを提案することができました。また、自分たちの「こうしたい」を形にした提案ができていた点が重要です。未来は、「どうなるか?」ではなく、「こうしたい!」から生まれるものです。このマインドセット(思考様式)を、このまま育ててほしいと思います。

 ビジネスデザイン学科は今年4月から学部になり、外部の企業や団体の皆様との連携をさらに進めるなど、学びの自由度が広がります。新たに起業経験のある教員も加わりますので、新しい取り組みも生まれるでしょう。社会の中で自分の能力や個性を生かしたい、それによって人や社会の役に立ちたいと思うような学生に、ぜひ来ていただきたいと思います。

審査コメント

四国水族館 松沢慶将館長

 水族館の本質を理解した上での提案がそろい、非常に好感が持てた。「未来」という定義についても、しっかりと考えられている印象だ。四国らしさを出したカフェメニューや、地元の方を巻き込んでの観光モデルなど、四国水族館のコンセプトの柱である「地域を元気にする」という点で、参考にしたい提案もあった。どの提案にも「こんなことをしてみたい」という学生の夢が詰まっていて、楽しく聞かせていただいた。

四国水族館 中山寛美さん

 若い人たちが思い描く未来の水族館の姿を知ることができた。1年生の「のぞき見る」から没入感へという方向性は着眼点が良く、2年生からは水族館を盛り上げる方策について、異なる切り口からの提案が印象的だった。学生たちの意見をもっと聞いてみたいと思った。 

読売新聞社 野中智章

 若い人らしい新鮮な発想ばかりで楽しかった。1年生でも堂々と発表していたこと、また2年生は、ストーリー性のしっかりした提案をしていたのが印象的。日頃からプレゼンテーションをする機会が多く、よく研究していることがうかがえる。スタッフのモチベーションという点まで掘り下げた、経営者目線の提案にも感心した。


※肩書・役職は2020年1月当時のもの

四国水族館とは?

 瀬戸内海に面した香川県宇多津町に20年6月1日にグランドオープンした水族館。本州からのアクセスにも便利な四国の玄関口・瀬戸大橋のたもとにあり、電車ならJR岡山駅から40分~1時間、車なら淡路島から約1時間ほどで行くことができる。
 瀬戸内海や四万十川など、四方を海に囲まれた四国ならではの豊かな水景を再現し、そこに棲む生き物の自然で生き生きとした姿を見ることができる。