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座談会 心不全とどう向き合う
~地域医療 ハートノートで連携~

読売新聞大阪本社版朝刊

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 全身に血液を循環させる心臓や血管の病気を循環器病といい、代表的なものに脳卒中や心臓病があります。主に心臓病によって引き起こされる心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、命を縮める病気」とも言われ、高齢化の進展に伴って患者数が増えています。私たちはリスクに気づき、予防や重症化を防ぐためにどう行動すべきなのでしょうか。急性期病院、クリニック、訪問看護に携わる3人に語っていただきました。

大阪急性期・総合医療センター 心臓内科副部長
菊池 篤志 氏
総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、経カテーテル的大動脈弁置換術指導医、心臓リハビリテーション指導士。

のぞみハートクリニック 看護部課長
富山 美由紀 氏
看護学修士。慢性心不全看護認定看護師、心臓リハビリテーション指導士、呼吸療法認定士。

なないろ訪問看護ステーション 管理者
長谷川 泰子 氏
(株)なないろ代表取締役。

心不全とはどんな病気ですか?

菊池
心不全とは、心臓のポンプ機能が悪くなり、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態をいいます。基本的に完治することはなく、発症すれば上手に付き合っていかなければなりません。症状としては息切れ、体に水分や老廃物がたまることで生じるむくみ、体重の増加などがあります。
富山
心筋梗塞(こうそく)や心臓弁膜症、心筋症といった疾患が原因で、ポンプ機能がうまく果たせなくなります。喫煙、薬の飲み忘れ、過度な運動など、生活の中で悪くなる病気だと言われています。
菊池
予防するには、まず禁煙、そして血圧に注意することです。後期高齢者ぐらいになれば、健康を保つ意味でも血圧を測る習慣をつけてください。病院と家とでは測定値が変わることがあり、薬を適切に調整する上でも家での普段の血圧を知る必要があるのです。

心不全の予兆と受診のタイミング

菊池
むくみや息切れがあれば、年のせいだろうと思わず、早めに受診してください。着目してほしいのは1年や半年前と比べての変化。家からスーパーまで歩いて10分で行けていたのが15分、20分かかるようになった。布団の上げ下ろしが最近つらい。前にできていたことができていないといった変化に気づくことが大切です。
富山
夜、寝たと思ったらすぐ起きて、しばらく座っている。それは心不全の最初の症状と言われています。体を横にすると下半身にたまった血液が一気に心臓に戻り、肺の血管にもたまって息苦しくなるので、体を起こすのです。認知症の患者さんの場合、ご家族が「最近夜中に座っていることが多い」と教えてくださることもあります。また、体重は本人だけでなく家族や周囲の人が一番早く分かる指標となりますので定期的に量ってください。
長谷川
私たち訪問看護師は症状を見るだけでなく、患者さんのしゃべり方や家の中の様子など、雰囲気の変化にも注意しています。普段きっちりされている方なのにホコリやゴミがたまっていれば、「ゴミを出すのがしんどくなっているのかな」とか。思い込みが起きないよう複数人のチームで関わり、訪問のたびに変化に気づける体制にしています。

まず、どこを受診すればいい?

富山
最初は地域のクリニックにかかり、必要に応じて総合病院へつないでもらうといいでしょう。普段からかかりつけの先生に高血圧や脂質異常、糖尿病などを診てもらっておくことが予防にもなります。
菊池
症状が強い場合、心不全治療に当たるのは主に高度急性期病院や急性期病院です。心不全の原因を診断し、しっかり治療して地域に再びつなぐことが役割です。退院後は、そのまま急性期病院に通院される方や、クリニックで薬の処方や治療を受けつつ、数か月に1回は急性期病院で検査を受ける方など様々です。
富山
患者さんの生活を整え、重症化させないこともクリニックの重要な役割です。当院は訪問診療も行っており、病気を持ちながらでもその人らしい生活を送れるようサポートしています。在宅でも、手術以外はできることが多くなっています。「ここまで落ち着いた時期があれば旅行に行けるかな」「こういうこともできるかな」。そんな日常の希望を支えられるよう患者さんと接します。
長谷川
訪問看護は時間が限られていますので、患者さんが心不全の再発を減らす自己管理ツール「ハートノート」をつけていらっしゃると分析しやすくなります。聴き取りをすると、記入内容と実態が違っていることもあります。ご自分の体・人生と前向きに向き合っていただくために、できていることや強みを見つけ、お伝えするようにしています。
菊池
患者さんに病気を“自分事”として捉えていただくことは大事ですね。当センターでもハートノートをお渡しし、それに沿って医師、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリ技師等、様々な職種がそれぞれ患者さんにお話をして病気への理解を深めてもらっています。行動変容につなげる一手目というところで、急性期病院の役割は大きい。悪化を防ぐにはリハビリも重要なので、「健康寿命をできるだけ延ばして元気でいるために、一緒に頑張りましょうね」とお声がけしています。

患者さんを支えていくために

菊池
病状を踏まえてゴールを設定し、不確実な中でもそこへ至るまでの治療期間・内容などのロードマップをお示しすることで、共通理解を持っていただけるよう努めています。気をつけていても再入院することもあり、高齢の方なら少しずつ弱っていって、どこかで自宅生活ができなくなるかもしれません。事前の準備や心積もりもできるようにしてあげたいと考えています。ゴールとは自宅や施設など場所のことだけでなく、人生そのものでもあります。「我々は病気のプロだけど、あなたの人生はあなたがプロです。どういう人生を過ごしたいか、プロの意見を聞かせてください」と私はお話ししています。
長谷川
患者ご本人の「こうしたい」と、ご家族の「こうしなきゃならない」という思いがすれ違い、けんかになることもあります。双方に寄り添い、再び同じ方向を向けるよう橋渡しをするのも、私たちの大事な役割だと思っています。
富山
子育てと違って終わりの見えない介護に、ご家族はしんどい思いをされる時もあるかもしれません。あまり負担になりすぎず、でも「最期まで見きれた」と満足感は持ってもらえるように、地域で支えていきたいです。

地域の医療連携

菊池
増加する心不全患者さんを支えるためには医師だけでは難しく、多職種によるアプローチが重要です。学会では医師以外の医療専門職向けに「心不全療養指導士」という資格も作り、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリ職などに取得してもらおうと働きかけています。
富山
大阪は訪問看護ステーションの数が全国有数なんです。皆さんが強くて前向きで、特にコロナ禍で医療物資が在宅医療を担っている地域のクリニックに入ってこなかった時期には、ヘルパーさんと共に臨機応変に動いてくださり、本当に助けられました。ヘルパーさんで感心するのは、利用者さんのどんなささいな変化も見逃さないところ。その違和感を医療用語にして医師に正確に伝えることも、地域の看護師の役割だなと感じています。
長谷川
患者さんのハートノートを見たケアマネジャーさんやヘルパーさんから、記録の読み取り方や看護師に伝えるタイミングについて、尋ねられることが増えています。
菊池
訪問看護師さんが入られる心不全患者さんは、比較的病状が進んでいる方や高齢の方が多いので、看護に入るタイミングを見逃さないことも大事です。
富山
心不全は退院後1か月の間の再入院が一番多いと言われています。当クリニックではこの間に頻繁に訪問看護に入ってもらい、その後状態に応じて徐々に回数を減らすようにしています。
菊池
都市部の場合、急性期病院や大学病院、クリニックの数が多く、選択肢が多い分地域連携が難しくなりがちです。その点、ハートノートを通じて基幹病院、地域の医療機関、訪問看護ステーション、調剤薬局、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの多施設・多職種での地域連携の枠組みを整備しようという「大阪心不全地域医療連携の会(OSHEF)」の取り組みには期待しています。
富山
地域では心不全で困っていることに気づけていないだけかもしれません。例えば、高齢の妊婦さんも増えていますが、その中には血圧が高い、心不全ステージAの方もおられるわけです。妊婦検診に心不全リスクチェックを組み込むような、分野を超えての心不全予防も必要ではないかなと思います。
長谷川
訪問看護に行くと、精神疾患や他の合併症を持っていらしたり、親子の問題があったりして、いろいろと絡み合って今の状態があるのだろうなと感じます。病気と環境などの社会問題を切り離して考えること自体、無理があるのかもしれませんね。
菊池 
そもそも心不全は高齢化社会の問題でもありますからね。2019年に「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行されて以降、行政や市民の関心も高まってきていると思います。心不全全体での死亡率は20%という報告もあり、「命を縮める病気」であることは事実です。地域がしっかりと連携し、完全な克服は難しくとも、うまく共存していけるよう取り組んでいきましょう。

悪化の兆し 一目で分かる

大阪大学医学系研究科 循環器内科学 講師
大谷 朋仁 氏

■自己管理ツール
 心不全患者さんが、病気について正しく理解し、ご自宅で自己管理をしていくためのツールが「ハートノート」です。毎日の体重や脈拍、むくみなどの自覚症状を記録し、点数化することで体調の変化を把握し、受診のタイミングを知ることができます。適切な自己管理に生かすことで、重症化による再入院を防ぐ効果が期待されています。
 ハートノートは大阪心不全地域医療連携の会(OSHEF)が発案し、循環器医療に携わる医師らでつくる公益社団法人・大阪ハートクラブを介して、大阪府内の基幹病院を中心に30を超える施設で導入されています。また、大阪府内では、ハートノートを用いて、地域ごとに心不全の診療情報の提供や評価方法等の共通化に向けた取り組みを行っています。産学官民の連携でメディカルヘルスケアを推進する一般社団法人健康医療クロスイノベーションラボの支援もあって全国へも広がりつつあります。
 本人に自覚がなくても、点数化によって悪化の兆候が一目で分かるのがハートノートの大きな特長です。体重や体調の変化に敏感になったという患者さんは多く、また、患者さんを支えるご家族、訪問看護や介護のスタッフにとっても分かりやすい指標となるため、早期受診につながっています。
 心不全は薬を飲んでいればいいというものではなく、生活習慣に気をつけながら長く付き合っていかなければいけない病気です。ハートノートを使い、ご自身で正しく理解し、正しく管理しようという気持ちを持っていただければと思います。

広がるハートノート 大阪府内の導入病院

■大阪市
・旭区 牧病院
・都島区 大阪市立総合医療センター
・北区 北野病院
・西区 多根総合病院
・福島区 JCHO大阪病院
・城東区 大阪府済生会野江病院
・中央区 大阪医療センター
・中央区 大手前病院
・天王寺区 大阪警察病院
・阿倍野区 大阪公立大学医学部附属病院
・住吉区 大阪急性期・総合医療センター
・西成区 思温病院
■堺市
・堺区 浅香山病院
・西区 堺市立総合医療センター
・中区 ベルランド総合病院
・北区  大阪ろうさい病院
■吹田市
国立循環器病研究センター
市立吹田市民病院
大阪大学医学部附属病院
吹田徳洲会病院
■箕面市
箕面市立病院
■豊中市
市立豊中病院
■高槻市
大阪医科薬科大学病院
北摂総合病院
■守口市
関西医科大学総合医療センター
松下記念病院
■枚方市
関西医科大学附属病院
■寝屋川市
小松病院
■八尾市
八尾市立病院
■羽曳野市
大阪はびきの医療センター
■河内長野市
大阪南医療センター
■富田林市
大阪府済生会富田林病院
■大阪狭山市
近畿大学病院
■岸和田市
天の川病院
岸和田徳洲会病院
市立岸和田市民病院
■高石市
高石藤井心臓血管病院
■和泉市
府中病院
和泉市立総合医療センター