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産婦人科医に低用量ピルについての質問30問ぶつけてみた(遠見才希子先生-前編)

低用量ピル(以下、ピル)について、みなさんはどういうイメージをお持ちですか? 「よくわからない」「使ったことがない」という人も実は少なくないのでは。

ピルは「女性のQOL向上のための大切な選択肢」という産婦人科医の遠見才希子先生(筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻社会精神保健学分野所属)に、「かかりつけ婦人科医を持とう~Find My Doctor~プロジェクト」の立ち上げメンバー4人(25歳女性、23歳女性、24歳男性、39歳男性)が、疑問や不明点をぶつけました。2回シリーズの前編で、種類や費用、使用法など、ピルについての基礎知識を学びます。

今回お話を聞いた産婦人科医の遠見才希子先生

質問1. ピルに関する基本的なレクチャーをお願いします

ピルはエストロゲンとプロゲステロンというホルモンが含まれる飲み薬です。毎日1錠ずつ飲んで排卵を抑えるもので、女性が主体的に選択できる効果の高い避妊法の一つです。副効用として月経困難症・月経過多・月経不順などの改善や排卵痛の消失、PMS(月経前症状)の改善、ニキビの改善などもあげられます。

メリットとデメリットを正しく知ったうえで女性自身の健康を守る一つの選択肢として考えてもらえばと思います。

一方、緊急避妊薬(通称アフターピル)は避妊の失敗など万が一のときに性交後に飲む薬のことです。

質問2. ピルは何種類あり、それぞれどんな効果効能があるかを教えてください

ピルは1周期(1シート)28日が基本で、21日実薬を飲んで7日休薬するタイプと、21日実薬を飲んで7日偽薬を飲むタイプがあります。(24錠実薬を飲んで4錠偽薬を飲むタイプや、休薬期間がないタイプもあります。)偽薬は、飲み忘れを防止するためのからっぽの薬です。

次に1錠ごとのホルモン含有量によって1相性(いっそうせい)と3相性(さんそうせい)があります。1相性はホルモンの含有量がすべて同じで、飲み忘れたときや月経移動にも対応しやすいです。3相性は3段階でホルモンの含有量が異なり、自然なホルモン動態に似せていますが、最近は1相性と大きな違いはないといわれています。

また、プロゲステロン(黄体ホルモン)の種類によって、第一世代~第四世代があり、エストロゲン(卵胞ホルモン)が含まれる量によって、超低用量ピル、低用量ピルがあります。

このようにピルには様々な種類がありますが、基本的に避妊効果と副効用があることは変わりません。低用量ピルを飲み始めた最初の3ヵ月くらいはマイナートラブルといわれる、吐き気、頭痛、不正出血、胸のはり、むくみなどの症状が出ることがあります。ホルモンの種類や量の違いによって、マイナートラブルの症状や副効用の現れ方に多少の違いがあるといわれています。もし、3ヶ月以上飲み続けてもマイナートラブルが改善しない場合は、違う種類のピルに変えてみると改善する可能性があります。

質問3. 「周期投与」と「連続投与」があると聞きますがどんな違いがありますか?

毎月の休薬期間があるかないかの違いです。周期投与は、毎月休薬期間があって、消退出血が起きます(出血の量は少なくなったり、ほとんど出なくなる人もいます)。

連続投与は、毎月の休薬期間をとらない方法で、例えば120日間飲み続け、年3回だけ休薬期間をとり、そこで消退出血が起きます。一相性ピルは連続投与が可能ですが、詳細は受診の際に主治医に確認してください。

医学的には、ピル内服中にあえて毎月出血を起こす必要性はありません。日本ではまだ周期投与が多いですが、海外では連続投与が主流です。

質問4. ピルはそもそもどういった人が使用するものなのかを教えてください

「避妊をしたい女性」そして「月経に伴う症状を改善したい女性」ですね。ピルには避妊効果だけでなく、月経に伴う症状を改善する副効用があります。現代女性の生涯の月経回数は約450回といわれています。月経や妊娠をピルでコントロールすることは女性のQOL(生活の質)向上のために大切な選択肢です。

質問5. ピルを飲んでいる間はやってはいけないことはありますか?

特にありませんが、お酒は適量、喫煙している場合は本数を減らすことを勧めます。いずれは禁煙できれば健康の維持にも役立ちます。薬の飲み合わせという観点では、痛み止めとの併用も問題ありませんが、てんかんやうつの薬、サプリメントのセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)などは併用に注意が必要なので医師に相談してください。

質問6. そもそもピルの処方に保険は適用されますか?

日本では避妊を目的にしたOC(Oral Contraceptives)と呼ばれる経口避妊薬と、月経に伴う症状の治療を目的にしたLEP(Low dose Estrogen Progestin)と呼ばれる低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬という区別がピルにはあります。避妊目的のOCは自由診療(自費)ですが、治療目的のLEP製剤は保険が適用されます。

避妊と月経治療のどちらも必要な女性は多いはずなのに、日本では、このような独自の区別があって非常にわかりづらい状況です。OCとLEPは、いずれも基本的に避妊効果がありますが注1)、LEPは添付文書に「避妊には使用しないこと」と記されています。LEP製剤のなかには海外でOCとして避妊目的で使用されているピルもあります(注1:ルナベルULDは避妊薬として検証が行われていません)。

質問7. 費用はいくらくらいかかりますか?

OCは自由診療(自費)で1シート約2000円~3000円、LEPは保険適用(3割負担の場合)で1シート約700円~2500円です。これに診察料や調剤料などが加わります。先発薬か後発薬(ジェネリック)によっても費用が異なります。海外と比べてピルが高額であり、金銭的な負担が大きいことは非常に問題だと思っています。

質問8. 通院する頻度はどのぐらいですか?

保険適用されている(月経治療用)ピルは3カ月に1回程度が通例です。

質問9. 服用するときの注意点はありますか?

初めてピルを飲むときは「妊娠していないことが確実」であればいつスタートしてもかまいませんが、一般的には月経開始5日以内に開始することになっています。避妊効果は7日以上飲み続けると出てくるため、それまではコンドームなど他の避妊法を行ってください。それ後は、飲み忘れがなければ、高い避妊効果が続きます。

しかし、ピルで性感染症を予防することはできません。パートナーと一緒に性感染症検査を受けることや、性感染症予防のためにコンドームを併用することもすすめられています。

質問10. 飲み忘れの対応を教えてください

飲み忘れに気づいたら、その時点ですぐに飲み忘れた分を飲み、その日の服用時間にもう1錠飲み、翌日からも普段通り飲みます。もし、丸1日忘れてしまったら、前日の分とその日の分の2錠を同時に飲みます。

さらに丸1日以上忘れてしまった場合(2錠以上の飲み忘れ)は、気づいた時点で飲み忘れたピルのうち直近の1錠を飲み、その日の服用時間にもう1錠飲みます。このような2錠以上の飲み忘れがあった場合は、避妊効果が弱まるといわれているため、その後7日以上連続して飲むまではコンドームなど別の避妊法を行います。もし、その間に避妊しないでセックスを行った場合には、緊急避妊薬がすすめられます(WHOは3錠以上の飲み忘れで避妊効果が減弱するとしています)。ただし、ピルを14日以上飲んでいる状況で2錠以上の飲み忘れた場合は、その周期で排卵が起こることはないので緊急避妊薬は基本的に不要です。

飲み忘れがあると、不正出血や月経のような出血が起きてしまうことがありますが、そのままピルを飲み続けているとだんだんおさまってきます。

このような対処法を知っておくと飲み忘れた場合に柔軟に対応できると思います。ピルは毎日なるべく同じ時間に飲む必要があるので、飲み忘れ予防にアプリで管理するなどの工夫をすることもおすすめです。

息もつかせず質問を投げかけるプロジェクトメンバー

質問11. ピルを飲みたいと思った人はまず何をすればいいですか

日本では医師の診察と処方が必要なので受診をお願いします。ピルはおもに産婦人科で取り扱っていますが、最近は産婦人科以外やオンライン診療での処方も行われています。

質問12. 飲み続けるにあたって検査などは必要ですか

最低限必要なのは、血圧測定と問診です。問診では、内服の状況や、効果、副作用を確認します。体重は半年おきに確認します。血液検査は年1回程度です。月経困難症状が強い場合などはエコー検査がすすめられます。ちなみに、子宮頸がん検診は2年おきに行います。

質問13. オンライン処方のメリットとデメリットを教えて下さい

2020年4月以降、コロナ禍の特例措置として初診からのオンライン診療が解禁され、ピルもオンライン診療が可能になりました。オンライン診療は、混んでいる病院を受診する必要がなく、キャッシュレス決済で薬が宅配されて便利という声があります。しかし、オンライン診療を行う医療機関はまだ少なく、ネット上には正式には認められていない並行輸入品の転売などもあるため注意しましょう。

質問14. ピルを服用することのデメリットについて、もう少し詳しく教えてください

ピルは、1万人に3~9人の割合で血栓症が生じるリスクがあります。割合は非常に低いとはいえ発症した場合はエコノミークラス症候群のように重度の呼吸困難が生じることもゼロではありません。ただし、そもそも妊娠中や産後の方が血栓症のリスクは高いので、避妊のためにピルを使うことで、より高いリスクを避けられるとも考えられます。

血栓症のリスクは、喫煙や肥満、加齢などによって上がります。35歳以上で1日15本以上タバコを吸う人は、ピルを使ってはいけない「禁忌」に該当します。

また、血栓症はピルを開始した3か月以内に発症することが多いといわれています。飲み忘れやピルの補充ができなかった場合などに一旦飲むのをやめて、間をあけてピルの服用を再開すると、血栓症のリスクは振り出しに戻っているので注意が必要です。

万が一、突然の強い腹痛、胸痛、頭痛、ふくらはぎ痛、視覚障害などが起きたときは、血栓症の疑いが考えられるので、低用量ピルはすぐに飲むのをやめて、医療機関へ連絡してください。

先生の言葉に真剣に耳を傾けるプロジェクトメンバー。男性メンバーもしっかり予習し取材に臨んだ。

質問15. パートナーがピルを飲んでいる男性が知っておくべきことはありますか

ピルは女性が自分自身の健康を守るために使う薬です。一般的には、ピルを飲んでいても二重の防御(dual protection)として、避妊と性感染症予防のためにコンドームを併用することが勧められています。「ピルを飲んでいるならコンドームを使わなくていい」と男性が決めていいものではありません。

ピルをきっかけに、避妊や性感染症、ピルによる体調の変化や金銭的負担があることなどもパートナーと話し合えるといいですね。月経や妊娠など男性の体には起こらないことを、男性が知っておくことは、パートナーのことを理解し、尊重できる関係性につながると思います。

遠見先生への質問はまだまだ続きます!後編もぜひご覧ください。

産婦人科医
遠見 才希子(えんみ・さきこ)
1984年生まれ。神奈川県出身。2011年聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業。「えんみちゃん」のニックネームで、全国700カ所以上の中学校や高校で性教育の講演活動を行う。亀田総合病院(千葉県)、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)などで勤務。著書に『ひとりじゃない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、DVD教材『自分と相手を大切にするって?えんみちゃんからのメッセージ』(日本家族計画協会)がある。

※肩書等は取材時のものになります。