社会課題の解決に取り組むUR都市機構(以下、UR)は、国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に貢献しています。
今回は、今年1月に竣工した緑豊かで快適な都市空間「コモレ四谷」(東京都新宿区)のまちづくりを紹介します。
多くの緑に立体的に包み込まれた複合施設「コモレ四谷」。周辺の緑との連続性「みどりのネットワーク」を形成している。
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ナビゲーター
木佐彩子さん
フリーアナウンサー- 青山学院大学文学部英米文学科卒、フジテレビ入社。「プロ野球ニュース」や「めざましテレビ」で人気アナウンサーに。現在はフリーとして活躍している。
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URの担当者に話を聞きました
UR都市機構 東日本賃貸住宅本部
大倉孝司さん
再開発工事事務所主幹- ’16~18年度に岩手県大槌町、釜石市の震災復興事業に従事。人のつながりや地域文化の重要さを痛感。地域のアイデンティティーを大切にしたまちづくりに取り組むランドスケープアーキテクト。
緑と人が織りなす「コモレ四谷」
- 木佐
- この新しい建物は、高くそびえ立つタワーを緑がぐるっと囲むようなデザインで、何だか自然と引きつけられるような印象を持ちました。
- 大倉
- この地域で一定規模以上の建築を行う場合、緑化が義務づけられますが、最低限求められる面積よりも5割以上多い緑化面積を実現しています。建築物で立体的な地形を創出するために階段状にした建物の屋上と壁面にも植物を植え、外濠や新宿御苑など周辺の緑との連続性「みどりのネットワーク」を形成しています。
- 木佐
- 商業施設から屋外テラス、「コモレビの広場」と施設をひと回りさせていただきましたが、緑が多いためか、周囲と比べても気温が低く感じられ、とても快適ですね。鳥のさえずりが聞こえてきたりして、都心にいることを忘れてしまうくらいです。
- 大倉
- いわゆる「クールスポット」として、憩いの場になればうれしいです。地上だけでなく屋上にも、昆虫や鳥のエサとなる木や、季節感のある落葉樹を多く取り入れているので、生物多様性にも寄与しています。
- 木佐
- 緑が多いとリラックスできますし、オフィスでもいいアイデアが浮かびそう。寝ころびたくなるような芝生の広場もあって、大人も子どもも集まりたくなる場所ですね。
自然と歴史が調和するまち
- 大倉
- もともとは区立小学校や財務省官舎などがあった場所でした。それぞれの見直しや廃校・廃止に伴い、地域の防災機能の不足、にぎわい交流拠点の形成という課題を地元の住民や行政が模索する中でURが相談を受け、再開発事業が動き出しました。
- 木佐
- 緑が多いことも印象的ですが、周辺の環境との調和にもかなり配慮されているのではないでしょうか。
- 大倉
- はい。自然環境と同時に、地域のアイデンティティー、つまり歴史や文化も重視しています。かつての武蔵野の森の雑木林にあった在来種の木々や植物を多用し、こだわった整備をしています。また、歴史文化を重視し、江戸時代にこの地に流れていた「玉川上水」の記憶を継承した水の流れを整備しています。
- 木佐
- 見ているだけで涼やかですね。自然の中に歴史が息づいているようです。
- 大倉
- 生物の多様性を知ってもらうための「みどりのサイン」を設けたり、地元の子どもたちが樹木の名前を書いた樹名板を手作りすることを通じて、世代を超えて、この緑あふれる広場に愛着を持ってもらえたらと思っています。
- 木佐
- 子どもたちも、この樹木と一緒に大きく成長していってほしいですね。
公民連携によるまちの課題解決
- 木佐
- ここはJRや東京メトロの四ツ谷駅にほど近く、アクセスも良いのでたくさんの人が行き交いますね。「コモレ四谷」には多くの機能が期待されるのではないでしょうか。
- 大倉
- 従前の小学校が文化・国際・スポーツ施設などを有する公益施設に生まれ変わりました。また、大地震などの災害が発生した際に帰宅困難者が一時的に避難できる「出迎えの広場」には、災害情報を提供できる液晶モニターを設置しているほか、敷地内3000m2ほどの「コモレビの広場」には、近隣住民が災害時に使用できるマンホールトイレと災害用井戸を整備しています。このように、URは公民さまざまな関係者と連携しながら、地域のニーズを取り入れ、まちの課題解決に取り組んでいます。
- 木佐
- 生活に欠かせないインフラとして緑を増やし、地域の人に必要とされる場所を作っているのですね。まさに、「住み続けられるまちづくりを」という「SDGs」の目標に沿った取り組みですね。
- 大倉
- 自然が持つ多様な機能や仕組みを意味する“グリーンインフラ”を活用して、持続可能で魅力あるまちづくりを推進していきたいと考えています。
URの取り組むSDGs「クールスポットの形成」
都市部に高層建築物や社会活動が集中することで気温が上昇する「ヒートアイランド現象」が問題化する中、URが都市再生事業やUR賃貸住宅で整備した広場や屋上が、気温上昇を緩和する「クールスポット」として期待されている。特に樹木によって冷やされた「冷気層」には、夜間の気温を下げる効果があるという。累計供給約2000件の団地で、これまでに約640万本もの植樹を行ってきた。今後もURは、都市再生事業やUR賃貸住宅を通じた、自然環境と調和したまちづくりに取り組んでいく。