やっとこの時代が来た
青々とした広大なカナダの空を背景に、日の光に反射しキラキラと舞う、鉄塔から放出された木片チップ。この美しい情景は、そこが製紙原料工場とは思えないほどであった。
Alpac社の末松さんがていねいに工場を案内してくれました
私たちが訪れたAlpac社 製紙原料工場は、「工場排水や空気汚染などの環境被害を及ぼす」という、工場に対する私のイメージをくつがえすほどきれいに整備されていた。それは、工場の清潔さという面ではもちろん、視覚的にも美しいものであった。
Alpac社は環境と経済の調和を図っている会社で、「いかに生態系を壊さずに持続性のある森林管理を行うか」が課題であるそうだ。その環境意識の高さは、予想を遥かに超えるものであった。
私にとって非常に驚きだったことは、この工場には生物学者が6人もいるということだ。彼らはAlpac社が持つ森林を、保護区とまったく同じ生態系に近づけるために、日々調査を続けているのである。
将来、自分が植林体験をした木を見に行きたいです!
私たちは、Alpac社に勤務する生物学者であるShawnさんのガイドによってAlpac社の森林を訪れた。そこには、アルバータ大学の研究生が調査のために来ていたり実験物があったりと、パルプ工場の森林とは思えない様子であり、Alpac社の環境ビジネスのあり方を目の当たりにした。
その他にも、細かな部分にまで手を抜かずに取り組んでいる。例えば、燃料として化石燃料ではなくみずからの工場で生成されるバイオ燃料を使っていたり、二酸化炭素などの温室効果ガスの削減のために輸送を貨車で行っているということだ。
一方、経済効率の面では、Alpac社の目標は「世界で一番生産コストの安い工場を目指す」ということだ。日本人としてAlpac社をまとめる斎藤社長は、工場設立から今に至るまでを語ってくれた。
設立当初、彼は、これからはより環境問題が重視される時代になると見込んだ。その上で将来的にコストを削減するために、最新鋭の技術を盛り込んで環境への影響が少ない設備にした。
工場は驚くほどきれいでした!
そして今、企業の環境問題への取り組み方が問われる時代になった。「やっとこの時代が来た」という斎藤社長の言葉は重みがあり、感銘を受けた。斎藤社長に出会って、リーダーに必要なものは信頼と先見の明であると感じた。
企業が環境対策をすることが、きれいごとではなく最低条件とされているこの時代に、Alpac社のような企業が増えていけば、環境も変わっていくし、自己中心的な考えを持ってしまいがちなこの世界のあり方までも変わっていくのではないかと思った。
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