腸から認知機能を考える
SDGs:すべての人に健康と福祉を

2022年12月2日

[広告]企画・制作 読売新聞社広告局


 未来貢献プロジェクトのオンラインシンポジウム「人生100年時代、腸からできる早めの認知機能対策」が11月2日、開かれた。「脳腸相関」と言われ、密接な関係が注目されている腸と脳の健康について、専門家らが議論を通じて分かりやすく解説するとともに、今すぐできる健康法が多数紹介された。パソコンやスマートフォンなどを通じて全国から約1330人が参加。活発な質問が寄せられ、関心の高さをうかがわせた。

主催:
読売新聞社
後援:
内閣府・日本医師会・日本歯科医師会・日本看護協会・日本薬剤師会・健康マスター検定協会
協賛:
森永乳業株式会社

ゲストスピーチ

大谷 泰夫氏

神奈川県立保健福祉大学理事長(元内閣官房参与)
大谷 泰夫氏
おおたに・やすお 1976年厚生省(現厚生労働省)入省。医政局長、厚生労働審議官、内閣官房参与などを歴任。2018年から神奈川県立保健福祉大学理事長。健康マスター検定協会の理事長も務めている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、この3年間ほどは健康問題といえば感染症という意識が強くなりました。感染症での予防は、三密を避けたり、手洗いしたりすることですが、発症したら予防は終わりで、治療する流れになります。

 未病は違います。ある日突然、体の不調が訪れるのではありません。行ったり戻ったりするし、徐々に変化し、病気という状態に至ります。主体的に自分がどうするかという取り組みが求められるのです。

 新型コロナに感染しても、発症する人としない人がいます。普段から健康を養っておくことは、新型コロナへの備えにもなるのです。 

 健康の維持には、食、運動、睡眠が大事とされてきました。ただ、コロナ禍では規則正しい食事をし、運動し、家にい続けていたら、認知症の発症が進んだとも言われています。人とコミュニケーションする、つまり社会参加が大変重要だと私は訴えています。

 未病という考えに立ち、自分の健康をぜひ選び取っていただきたいです。

基調講演

伊賀瀬道也氏

愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授兼愛媛大学医学部付属病院抗加齢・予防医療センター長
伊賀瀬 道也氏
いがせ・みちや 1964年、愛媛県出身。愛媛大学大学院博士課程修了後、米国留学を経て、2011年愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長に就任。2019年から抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授。

 人生100年時代が到来する中で、女性の平均寿命は88歳に到達しようとしていますが、健康寿命は75歳程度。男性の平均寿命は81歳を超えていますが、健康寿命は73歳程度です。この差を縮めていくことが重要になっています。

 日本人の死因は第1位が悪性腫瘍(ガン)で、第2位が心疾患ですが、第3位は老衰になりました。明らかな病気ではなく、生理的な老化による死亡です。

 ただ、老化のスピードには、遺伝的な要因と後天的要因があり、この比率が1対3と言われています。運動や食事などの生活習慣で大きく左右されることが分かってきました。

 私たちは、老化が病気であるというふうに考えを変えるべきです。ある程度コントロールでき、治療の対象なのです。日本抗加齢医学会は、老化に伴う体の変化を測る抗加齢ドックを推奨しています。

血管を元気に

 2025年には、高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。薬の開発は進んでいますが、進行を遅らせる薬はあっても、根本の治療は実現できていません。

 そこでしなければいけないのが、血管の老化予防です。認知症、特にアルツハイマー型では、脳内に異常なたんぱく質がたまる現象が見られます。血管が元気であれば、体の外に排出できると考えられています。

 一方で、認知症になる前の軽度認知障害(MCI)を知っていただきたいです。物忘れはあるけれども、日常生活には支障がない状態です。放っておくと、年間で10人に1人ぐらいが認知症になってしまいます。

 認知症になる手前の段階であれば、人と話をしたり、外に出て運動したりして、認知症に至るスピードを非常に遅らせられます。従って、早期の発見がとても大事です。

片足立ち10秒

 老化を抑える極意に、運動があります。握力は寿命の指標になることが分かっていて、握力が5キロ・グラム低下するごとに脳卒中の危険度が9%上がる、あるいは心筋梗塞のリスクが7%上がります。グーパー運動や雑巾絞りのような動作で鍛えられます。

 開眼片足立ち検査というのもあります。目を開けて、両手を楽にして体に沿った状態で下ろし、左右どちらかの足で何秒間立てるかを測ります。平均では健常の方は50秒程度ですが、軽度認知障害の方は40秒程度、認知症の方は20秒未満です。特に、近年の研究で、10秒間立てない方は要注意だというデータが出てきました。

 高齢者の方には具体的なトレーニングとして、歯磨きする間の1分間、片足立ちをお勧めしています。

 食事では、終末糖化産物(AGEs)という物質をためると、動脈硬化や糖尿病性の合併症、皮膚の老化、骨粗鬆症(そしょうしょう)に悪い影響を及ぼします。軽度認知障害と判定される割合も非常に高くなります。

 そのための食生活では、茶色に気を付けてください。おこげの部分です。順番も大切で、野菜が先で、次に肉や魚のたんぱく質、最後に炭水化物にすると、終末糖化産物が増えるスピードが遅くなります。運動、禁煙、睡眠は終末糖化産物をためないためにも、重要です。

  脳腸相関についてです。腸内細菌によって大豆イソフラボンを分解して、エクオールを作れると脳に好ましい影響があることが、私たちの研究で出ています。

開眼片足立ちの目標時間
開眼片足立ちの目標時間

企業プレゼンテーション 森永乳業株式会社

認知機能 維持する働き

清水 金忠氏

森永乳業株式会社 研究本部基礎研究所長
清水 金忠氏
しみず・かねただ 1992年名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了。理化学研究所などで研究職を務めた後、95年森永乳業入社。2016年に日本酪農科学会学会賞 、22年に日本乳酸菌学会賞をそれぞれ受賞 。

 ビフィズス菌は100年以上前、赤ちゃんのおなかから発見されました。代謝産物として乳酸や酢酸、ビタミンBなど健康に良い様々な成分を作ります。ただ、加齢に伴い減少し、65歳を境目にして減り方が大きくなります。

 大腸で一定濃度の酢酸を維持することが大事なのですが、口から摂取しても小腸で吸収されてしまいます。従って、ビフィズス菌のような腸内細菌の活性化が重要になります。

 認知症の6、7割を占めるアルツハイマー型の方は、腸内細菌の多様性が低く、ビフィズス菌の割合が小さいです。予防できる食品はないかと探索してたどり着いたのがビフィズス菌MCC1274です。

 50歳以上80歳未満の軽度認知障害の方を対象にした臨床試験では、認知機能を評価する5領域のうち、即時記憶、視空間構成、遅延記憶が顕著に良くなりました。5領域の合計値にも効果が見られました。この結果をまとめた論文は、国際専門誌に掲載されました。

 ビフィズス菌MCC1274を経口摂取すると、胃・小腸を通過して、大腸に届きます。大腸では酢酸や芳香族アミノ酸の代謝産物を作ります。また、食事由来成分が吸収されやすくなります。そして、これらの代謝産物と菌体成分が脳内に働き掛けることで、脳内の炎症を抑制するのです。こうした総合的な作用により、認知機能を正常化させていると考えています。

 「記憶力、空間認識力を維持する働きが報告されている」として、菌体を関与成分とするものとしては初めて機能性食品として社会実装されました。今後は、認知症の発症後にも、改善効果があるのかどうかを解析していきます。

パネルディスカッション

関谷 亜矢子氏

関谷 亜矢子氏(フリーアナウンサー)

阿部 文明氏

森永乳業株式会社 常務執行役員研究本部長
阿部 文明氏
あベ・ふみあき 1987年、森永乳業入社。ビフイズス菌末の利用技術に関する研究で、農学博士号を取得。素材応用研究所長などを経て現職。国際生命科学研究機構副理事長や腸内細菌学会理事も務める。

【パネリスト】
 阿部 文明氏(森永乳業株式会社 常務執行役員研究本部長)
 伊賀瀬 道也氏(愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授兼愛媛大学医学部付属病院抗加齢・予防医療センター長)
 大谷 泰夫氏(元内閣官房参与)
【進行役】
 関谷 亜矢子氏(フリーアナウンサー)





関谷 腸内フローラについて説明いただけますか。

阿部 我々の大腸の中には、数百種類と言われる菌があり、住み場を探してせめぎ合っている状態が腸内フローラです。その中には、善玉菌と言われるものもあれば、悪玉菌と呼ばれるものもあります。善玉菌が優勢になると、腸の中が良くなります。母乳を飲んでいる赤ちゃんはすごく健康的な腸の環境を持っていますが、極低出生体重児の腸内はすごく未熟で、ビフィズス菌がおらず、腸の病気になりやすいです。

関谷 ビフィズス菌は大事ですね。

阿部 高齢化が進むと、腸内には悪玉菌が増え、健康に良くない物質が生産されてきます。ビフィズス菌をいかに増やして、若い状態の腸内に戻すことが健康長寿にとっては重要です。

大谷 腸についての一般的な印象は消化器というものでしたが、研究が進み、健康をつかさどる基本臓器という役割になりました。

関谷 認知症のリスクへは何歳ぐらいから備えるべきでしょうか。

伊賀瀬 早ければ早い方がいいかもしれませんが、40〜50歳ぐらいがキーポイントです。度忘れが出る方が多いです。

関谷 思い当たる節が大変あります。

伊賀瀬 度忘れそのものが認知症ではないですが、どんどん重なるようになると、考えたほうがよいというイメージです。

生活習慣の蓄積

関谷 生活習慣の改善で具体的にするべきことは。

大谷 食事や睡眠、運動、それに社会参加やコミュニケーションといった要素がありますが、すごく大事なのは、病気になってから治すのではないということです。特に、認知症というのはずっと蓄積されてきたものが原因であり、特効薬があって治るわけではありません。自覚症状がなくても、自分で継続して取り組む必要があります。未病そのものだと思いました。

伊賀瀬 日常生活の改善が基本です。当たり前と言えば当たり前ですが、科学で裏付けられています。フィンランドの方の研究では、フィンランドサウナに週に4回以上入る方は、心臓の病気が少ないそうです。日本のサウナはちょっと熱すぎるので、長い時間はお勧めできませんが、風呂に週5回以上、それも41度くらいの少し熱めのお湯に入る方は、非常に心臓が元気というデータがあります。歩くことに関しては、動脈硬化や心臓の病気の予防に、できたら1日1万歩とよく言われますが、認知機能や脳の健康という観点からは、まず4000歩以上をお勧めします。

阿部 私たち森永乳業は、健康栄養とおいしさを両立させることを大きな目標にしています。腸の健康とおいしさとなると、ビフィズス菌がたくさん入ったヨーグルトをぜひ長く食べ続けていただきたいです。ヨーグルトはいろいろありますが、ビフィズス菌が入っていないものも多くあります。

関谷 みんな入っていると思っている方もいます。

阿部 ビフィズス菌は腸に住んでいるもので、私たちの長年の研究の成果でやっとヨーグルトに入れられるようになったのです。ぜひビフィズス菌が入っているかどうかで選んでいただきたいです。腸内フローラは様々な健康とも密接に結びついています。良いビフィズス菌をとって、腸から老化を防いで欲しいですね。

ヨーグルト選び

関谷 視聴者の方から質問です。脳腸相関の観点から、認知機能と腸内環境の関連性を説明してくださいとのことです。

伊賀瀬 脳と腸は昔、あまり関係がないと捉えられていました。ただ、一般的な感覚として、おなかの調子が悪いと考えがまとまらないということは、雰囲気としてありますよね。これが今、科学的に証明されているのです。腸内フローラをしっかりさせ、腸の老化を予防しておくと、様々な代謝産物や分解された産物が生まれ、脳に司令が行くというのは、間違いなさそうです。

関谷 自分に合うヨーグルトの見つけ方、食べ方についての質問が寄せられました。

阿部 ビフィズス菌にもいろいろな種類がありますから、信頼できるメーカーの製品を選んでいただきたいです。合わせて、ビフィズス菌を増やすには、オリゴ糖や食物繊維が重要ですので、一緒に食べるとよいでしょう。また、ヨーグルトが苦手な方には、ビフィズス菌入りのサプリメントがあります。

関谷 最後にメッセージをお願いします。

大谷 健康リテラシーという言葉をよく使うのですが、知識を持って行動を変えることが、とても重要です。また、健康のための健康とか、病気になりたくないから健康になるのではありません。ああなりたい、だから自分は健康でいようという目標をちゃんと持つのがいいでしょう。続けるのは大変ですが、廉価で、おいしくて、身近にあるものだと楽しみになります。そういうことも、健康への一つのステップになります。

伊賀瀬 腸を元気にして、脳も健康にする。これにより、健康寿命を延ばせられればいいと思います。

阿部 高齢者になると、便秘になる方がすごく増えますが、便秘は万病の源みたいなところもあります。ビフィズス菌を食べ、腸内フローラを良くして、100歳まで健康に生きていただきたいというのが私たちの願いです。

<注記>
※「予防」という用語は、「認知症にならない」ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味で使っている。

パネル討論会の画像
パネル討論会の画像SP

企業 取り組みの紹介 株式会社ルネサンス

脳腸エクササイズ
脳腸エクササイズ

 「脳腸エクササイズ」は、脳に刺激を与えながら、腸を活性化させるためにおなか回りを動かす新しいプログラムだ。

 一例を紹介する。肘を曲げて、膝を持ち上げ、体をねじっていく。その際に、「1、2、3」「4、5、6」と三つずつ止まりながら、15まで声に出して数える。次は五十音で「あいう」「えおか」と唱え、さらには両者を組み合わせ、「1、2、あ」「3、4、い」という調子で続ける。

 ルネサンスの井出由起さんは「ちょっとしたすき間時間に気軽に試してください」と呼びかけた。

企業 取り組みの紹介 株式会社ミレニア

株式会社ミレニア
株式会社ミレニア

 「認知機能チェック」と聞くと、どうしても尻込みしがち。そこでクイズ感覚で気軽に、記憶力の状態を確認できるのが 「あたまの健康チェック®」 だ。気軽に誰でも自宅から電話で受けられる。ランダムな10単語を復唱し、思い出すことを複数回繰り返すというもの。

 性別や年齢を基に分析が行われ、「あたまの健康」状態を数値化する。サービスを提供するミレニアの新山賢司さんは、「元気な頃からあたまの健康状態の変化に気づき、健康活動のきっかけにしていただきたい」と話した。

「あたまの健康チェック(R)コールセンターサービス」(受検証の購入が必要です)

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