タイアップ企画TIE-IN
【全7回シリーズ 第6回】
三井住友信託銀行
タイアップ企画
「地域とともにSMTB
“『知』を広げる連携” 九州版」
専門分野に入り込み プロジェクト推進
三井住友信託銀行の地域での取り組みを取り上げるタイアップ企画第6回は、地域の大学や企業とタッグを組んで社会課題の解決を目指す地域エコシステムの取り組みを紹介する。各地の大学で進められている基礎研究は、脱炭素やデジタル分野の次世代技術の潜在力として注目が集まる。それを掘り起こした事例の一つが、地元・九州大学を核に、三井住友信託銀行と複数の民間企業が連携して進める廃プラスチックの地産地消型リサイクルだ。金融機関が研究開発の川上からかかわることで、社会実装に向けた動きが加速している。
■資源循環社会を目指す協議体「知の拠点」
包装や容器、電子機器に玩具――。生活必需品から住環境に至るまで幅広く使われているプラスチックだが、その廃プラスチックの量は年間800万㌧を超える(2022年)。石油由来のため脱炭素の流れが強まる中、現在の有効利用率は87%に上るが、3分の2以上が発電燃料などエネルギーとして再利用される「サーマルリサイクル」だ。素材として再利用する「マテリアルリサイクル」や、油やガスなどに変化させて再利用する「ケミカルリサイクル」といった根本的な資源循環は全体の25%にとどまっている。
そこにくさびを打ち込もうとしているのが、九大と三井住友信託銀行などによる産学連携だ。触媒化学やマイクロ波といった廃プラスチックの資源循環に欠かせない分野について研究する九大の永長久寛教授を中心に、化学メーカーのレゾナック、商社大手の丸紅も参画する。3年ほど前から各社が個別に九大との連携を模索したが、今年1月、企業の枠を超えて産学の協議体として動き出した。廃プラスチックの資源循環に挑戦する集団として協議体を「知の拠点」と名付け、国からも支援を受ける。また、今年10月、九州最大の再商品化事業者であるエコポート九州と連携協定を締結した。マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルのベストミックスによってるより効率的に再資源化する手法を共同して構築することを目指す。
大学の研究には、多くの企業が自社の製品の開発や有効性を高めるため、連携を打診する。しかし、永長教授は、「同じテーマに金融機関も含めた複数の企業が相乗り、しかも実装まで見据えた研究は珍しいケースだ」と、語る。
■銀行のかかわり方を変えた理系集団の存在
きっかけは、三井住友信託銀行が2021年4月に社内に組織した「テクノロジー・ベースド・ファイナンス」(TBF)チームだ。脱炭素や資源循環、生物多様性、健康長寿などイノベーションが求められる分野において、技術と政策と金融の融合により、実装への道筋を作る役割を担う。博士号などを持つ理系人材らで構成し、専門性の高い分野でもプロジェクトに入り込み、従来は踏み込めなかった将来性がありながら実績のない潜在的な研究に、実証段階から関与し、ファイナンス機会を創出している。永長教授はTBFの担当者の印象を「専門的な会話もでき、いわゆる貸し出し業務をする銀行マンのイメージとは全く違う印象だった」と振り返る。
三井住友信託銀行は、地域エコシステム創出に注力する中、2023年4月に同社福岡支店を中核に、北九州支店、佐賀支店、大分支店、熊本支店、鹿児島支店の九州に拠点を置く6カ店が連携して地域の課題解決に取り組む「九州地域共創プロジェクトチーム」を組成した。知の拠点で連携する九大をはじめとする学術的に豊富な実績を抱える多数の大学に加え、地域貢献・活性化に積極的な企業が集まる九州の強みを生かし、産官学そして金融の各プレイヤーの連携を促し、地域における様々な社会課題を解決に導くことを目指す野心的なものだ。今回のプロジェクトにかかわる法人営業第一課調査役の大西絵梨奈さんは、「大学との関係は資産運用での取引がほとんど。研究にかかわるという発想はなかったが、(TBFの)知識を通じて接点ができ、いまでは『教授』の名刺が100枚以上ある」と、話す。
三井住友信託銀行以外の参画企業であるレゾナックや丸紅の担当者も、「大学と1社で連携するときとは違うプロジェクトの進展を感じる」「まだ実証途上だが、実装への手ごたえを感じる」と口々にその進展ぶりに満足する。地域課題の解決には、膨大なお金がかかることもある。研究段階という川上から金融機関としてかかわることで、必要な資金をどのように回していくのかなど、ファイナンスの仕組みを作り込むことができる。再生可能エネルギーが普及し、水素など脱炭素エネルギーに積極的な九州という土地柄もあり、「(九州としての)一体感が、地域から何かを生み出そうというパワーになっている」(大西さん)。
■自治体にとって待ったなしの課題に解決策を
廃プラスチックをめぐっては、2022年4月、廃プラスチックの分別回収とリサイクルを市区町村の努力義務に定めた新法「プラスチック資源循環促進法」が施行した。ごみの処理やリサイクルなどの地域計画を自治体は示すことが求められている。対応は待ったなしになっている。
廃プラスチックの資源循環に向けた実証実験は、10年後の実装を見据え、進んでいる。永長教授も、「社会的ニーズの高まりとともに、複数の企業が連携してくれることで、研究の方向性が先鋭化し、社会実装に向けて自信を深めている」と話す。
地域課題解決に向けた三井住友信託銀行による大学、自治体、企業との連携は、九州地域だけで取り組むものではない。北海道では地域エネルギー最適化に向けた事業を、京都府では地域脱炭素化を後押しする金融フレームワークの構築を支援する枠組みなど、各地の課題に応じた解決策を地域関係者と共に検討し活動している。
日本政府は、国内の脱炭素社会の実現には今後10年で150兆円の官民投資が必要となると見込む。三井住友信託銀行は、預金や融資といった銀行業務などとともに、信託銀行として年金資産を管理・運用する機関投資家としての顔も持つ。預かる信託財産の規模は250兆円を超える。世界でも有数の資産規模にかかる運用ノウハウを生かし、全国の地方銀行などとも連携し、各地域の個人・法人サービスにかかわっている。社会課題の解決に向けた資金は、過去に先例のないプロジェクトへの投融資であることや、成果が見えるまでに要する時間軸が長いことが多い。期待が大きい反面、資金提供には不確実性も伴う。地域だけでは背負えないリスクをとりながら、地域の潜在力を引き出す活動を九州・福岡をはじめ全国で展開している。