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企画・制作 読売新聞社ビジネス局

【座談会】物流革新で創り出す持続可能な社会 2024年問題【座談会】物流革新で創り出す持続可能な社会 2024年問題

[参加者] 

トラック運転手の人手不足などによる輸送力の低下が心配されている物流の2024年問題※。その現状や対策、さらには重要な社会インフラである物流を持続的に成長させていくための課題などについて、学識経験者や国、事業者に聞いた。

物流を取り巻く厳しい現状

鶴田浩久氏
平井氏
まず、物流を取り巻く状況について教えてください。
二村教授
トラック運転手の労働条件は悪く、少子高齢化もあって労働力はひっ迫しています。特に長距離輸送で状況は深刻です。しかし、現場では荷主のニーズに合わせた高レベルのサービスを維持しようとして非効率が改善されません。また、ライフスタイルの変化で増えた通販などのEC※がコロナ禍で加速。宅配需要が高まる一方で、再配達が増えて運転手の負担となっています。
平井氏
政府はどのような対応をしていますか。
鶴田局長
物流は荷主から消費者まで全部繋がっています。一部にだけしわ寄せがいくやり方では、うまくいきません。荷主、物流事業者、消費者が協力して社会全体で取り組む必要があります。政府も関係閣僚会議を設置して、2023年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」(表)を策定し、10月には、前倒しで実施すべき緊急施策をまとめました。
二村真理子氏
平井氏
物流事業でのトラック運転手の労働環境や待遇はどうなっていますか。
泰地取締役
トラック運転手の労働時間は全産業平均より約2割長く、賃金は約1割下回ります。長時間労働の要因のひとつは、労働時間の4分の1を占める荷待ちなどの待機時間です。賃金は、国が指標として示す標準的運賃の6、7割の額しか受け取れません。運賃が上がらないと高い賃金が払えず、人も集まらないという悪循環にあります。一方で、低いとされるトラックの積載率(約4割)を上げられたら運賃増につながるし、待機時間も、荷主と運送業者がもっと情報共有すれば減らせます。我々も生産効率を上げる努力をしますが、荷主や消費者にも物流のリスクについて理解してほしいと思います。

「物流革新に向けた政策パッケージ」の主な施策

1 商習慣の見直し1 商習慣の見直し
2 物流の効率化2 物流の効率化
3 荷主・消費者の行動変容3 荷主・消費者の行動変容

効率化の取り組みは不可欠

泰地正人氏
平井氏
物流事業者として、物流の効率化にどう取り組んでいるのでしょうか。
泰地取締役
物流業界は自動化が遅れていました。作業を人の手に頼り、高額なロボット等を入れる必要がなかったからですが、倉庫でも働き手が減っており、物流は最も自動化が必要な現場になりつつあります。
当社が千葉県野田市に2024年2月にオープンした物流センターには、棚から1点ずつ商品を集めてくる棚搬送ロボットを導入しました。(EC野田瀬戸物流センターに関する詳細はこちらから) また、EC関連の荷量の増加に対応するため、1フロアをEC専用にしました。ECは少量多品種のため、出荷物の集品や梱包などで圧倒的に手間がかかりますが、入庫から配達まで一貫したサービスを提供できる体制を作りました。新システムの導入には、ロボットなどの特性に合わせて運用を再構築する必要があり、検証施設を作って実証実験を繰り返しています。(先端ロボットソリューション検証施設「LTラボ」に関する詳細はこちらから
二村社長
当社はパレット輸送を通じて物流や荷役の効率化を目指しています。パレットは縦横1.1メートルの大きさで、荷物を載せてフォークリフトなどで移動させます。荷物をまとめて運べるうえ、荷役時間は、手で積み下ろす時の4分の1で済み、トラックの待機時間を大幅に短縮できます。
メーカーなどが自社所有のパレットを使うと3~5割は戻ってこないことがあるといわれていますが、空いたパレットは、当社がまとめて回収するため、発荷側の負担が解消されます。当社は年間約5000万枚のパレットを供給し、約2600か所の拠点から空パレットを回収しています。
また、物流の現場で主流となっている紙の伝票の電子化も進めています。様式もバラバラの伝票は仕分けに膨大な時間がかかりますが、デジタル化すれば確実に時間短縮できます。まず、年間約700万枚に上るパレット伝票を2023年4月に電子化。さらに、検品の負担軽減につながる納品伝票の電子化にも取り組んでいます。

日本パレットレンタルが提供するサービスの詳細はこちらから

二村篤志氏
二村教授
パレットで手荷役の負担がなくなれば、女性や高齢者も働きやすくなり、運転手の人材市場も広がるでしょう。パレットにタグが付いていれば、荷物の位置情報やトラックの空き状況もわかるのではないでしょうか。
二村社長
ほとんどのパレットにはタグが装着されています。ただ、読み取り機の普及など、まだ課題もあります。
深瀬部長
当社では、神戸市の工場で製造するパンの冷凍生地の輸送で、鉄道を利用するモーダルシフト※に取り組んでいます。2021年10月から、トラック(海路を含む)だけだった北海道ルートで鉄道も活用し始めました。関東ルートでも2024年2月からトラックと鉄道を併用しています。鉄道の運賃はトラックの1.5~2倍と割高ですが、安定輸送と運転手の労働時間削減のため採用しました。
また、2024年1月から、工場から店舗まで遠いルートに中継地点を設け、そこで車両を入れ替える取り組みを始めました。これによっても運転手の拘束時間を大幅に減らしています。
物流の2024年問題
働き方改革の一環として、2024年4月からトラック運転手の時間外労働に上限(960時間)が設けられる。これにより運転手の働く時間が短くなり、物流の停滞が懸念されている。何も対策を取らないと2024年度は14%、2030年度には34%の輸送力が不足すると試算されている。
EC
電子商取引(ElectronicCommerce)。eコマースとも呼ばれる。ネット通販やネットオークションなど、インターネットで物やサービスを売買したり契約したりすること。
モーダルシフト
CO2の排出削減や輸送の効率化を図るため、貨物の輸送手段をトラックから鉄道や船に代えること。
協賛 SBS グループ
JPR 日本パレットレンタル株式会社
協力 

敷島製パン株式会社