薬と薬草のお話vol.90 ショウマとサラシナショウマと升麻(しょうま)
Sponsored by 笹川薬局
広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局
vol.90 ショウマとサラシナショウマと升麻(しょうま)
薬用基原植物
Cimicifuga dahurica Maximowicz,
Cimicifuga heracleifolia Komarov,
Cimicifuga foetida Linné
または
Cimicifuga simplex Turczaninow(Ranunculaceae)
長く続いた猛暑から、ようやく朝、窓を開けるとすがすがしい空気を頬に感じる季節がはじまりました。秋の爽やかな風を肌に感じると、以前に植物観察の草原で目にした大きく白い花の穂のこと、薬草として教わったサラシナショウマのことを思い出します。
サラシナショウマはキンポウゲ科の草丈1~1.5mの多年草で、夏から初秋にかけてたくさんの白い花を穂状に咲かせます。薬用にはその根茎を秋に掘り起こし、ひげ根を除いて日干ししたものを使用します。
分布範囲も広く、日本では信州や東北など、近畿圏では滋賀県の伊吹山にも自生しています。現在生薬の需要が多いため用いられるのは中国から輸入したフブキショウマやコウライショウマで、主要成分にはトリテルペノイドのシミゲノールがあります。
現在日本でエキス化されている代表的な漢方処方は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)、乙字湯(おつじとう)などです。中でも乙字湯は柴胡(さいこ)、升麻、黄芩(おうごん)、大黄(だいおう)、当帰(とうき)、甘草(かんぞう)の6味からなる処方で、便秘傾向のある方の痔核(じかく)、切れ痔に使われることがあります。
また補中益気湯では柴胡、升麻以外に他の8味の生薬の組み合わせで虚弱な方の食欲不振や疲労、倦怠(けんたい)感などの症状に使われることがあります。
秋の夜空、澄み切った空気の中、月を見上げると一瞬、毎日身の回りに次々起こる事柄を忘れさせてくれます。そしてひんやりとした秋の夜風に触れると、白く大きな花穂が風に揺れる景色がしきりに思い出されるのです。
2024年9月28日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)