薬と薬草のお話vol.88 淡竹と竹筎
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vol.88 淡竹と竹筎
薬用基原植物
Bambusa textilis McClure, Bambusa pervariabilis McClure,
Bambusa beecheyana Munro, Bambusa tuldoides Munro,
Phyllostachys nigra Munro var. henonis Stapf ex Rendle,
Phyllostachys bambusoides Siebold et Zuccarini (Gramineae)
線状降水帯のニュース、激しい降雨など、天候を気遣う梅雨に入りました。晴耕雨読の日々には雨の合間の晴れ間が貴重です。窓から亡き父母が大切にした狭い庭の隅を見ると、わずかですが淡竹(はちく)の植え込みの緑が律儀に直立しています。すがすがしい香りを運んでくれるように思えます。
薬草の世界でも、淡竹、真竹(まだけ)、孟宗竹(もうそうちく)を基原にもつ生薬に竹筎(ちくじょ)があります。私たちにとってもタケ類は大変馴染(なじ)みの深い植物ですが、私にとっては特に淡竹が身近な植物です。薬用生薬の世界では主にハチクやマダケなどの稈(かん)〈樹木でいうと幹の部分〉の緑色の外皮を薄く削り取り、つぎに中間層を削って黄緑色ないし淡黄白色のものを束にして、竹筎と称して用います。
削ったばかりの状態の竹筎は良い香りがするという解説がありますが、市場に出るときは、においがほとんどありません。そこで自分でも淡竹の茎を手折(たお)って香りを確認しようと毎年思うのですが、いつも仕事に追われ、いまだに確認できていません。
青梅の収穫を楽しんだあとは、蒸し暑い空気の中のクチナシの香りや、枝先に紅色の扇を広げている合歓(ねむ)の木、それから笹の葉が七夕、サラサラと薄緑の葉音を奏でると、夏の近づきを思い出させてくれます。そしてお盆、夏休みのことを話し始める亡き父母、里帰りの会話が胸に浮かびます。
2024年6月30日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)