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薬と薬草のお話vol.84 決明子(けつめいし)とエビスグサ

広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局

vol.84 決明子(けつめいし)とエビスグサ

薬用基原植物
Cassia obtusifolia LinnéまたはCassia tora Linné(Leguminosae)

 ゆく年、年の瀬一年を振り返り、やり残したものはないかと思い浮かべる時期です。草木のお話の中にもいつか整理しておきたいと思っていたものが、同一植物でありながら医薬品扱いと健康食品扱いとして違う名前で知られている薬草、エビスグサです。
 
 エビスグサは「異国からきた草」という意味で、アメリカ原産の一年草です。日本には中国から享保年間に渡来したとされています。夏に黄色の花を開き、秋に種子を採取して乾燥し、長さ3~5㎜程度の褐色の細長いものが薬用にする生薬名「決明子」です。主要成分はアントラキノン誘導体のエモジンやナフタレン誘導体のトラクリソンなどです。現在の市場では中国、朝鮮半島、東南アジアからの輸入品がほとんどです。

 決明子の歴史は古く、「神農本草経」に収載されている生薬なのですが、漢方薬として配剤されている処方は少なく、現在日本でエキス化されている処方は菊花などとともに19の生薬で構成される「洗肝明目湯(せんかいめいもくとう)」一処方のみです。

 「洗肝明目湯」は体力中程度の方の目の充血、痛み、乾燥に効果的とされ、近年のパソコンやスマホで疲れ目の充血やドライアイなどにも効果的とされています。

 一方、同じこの種子を民間療法では「ハブ茶」という名称で、便通を整える目的などのお茶として使用されてきたので、現在は「決明子」の方は医薬品としての規格、「ハブ茶」の方は食品としての規格を適用して流通しています。

 近くのデパートのお正月用調度品の中で、宝船に乗った七福神の絵柄を見かけ始めました。七福神の中には今回のエビスグサの名に似ている、笑顔で釣りざおと鯛(たい)を抱えた恵比須様の図柄がほほ笑ましく飾られています。もうすぐお正月、良い年をお迎えください。


2023年12月28日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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