文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

薬と薬草のお話vol.78 益母草(ヤクモソウ)とメハジキ

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.78 益母草(ヤクモソウ)とメハジキ

薬用基原植物
Leonurus japonicus Houttuyn
または
Leonurus sibiricus Linné(Labiatae)

 北摂の山辺に自生する藤が薄紫の花を清々(すがすが)しい風に揺らめかせている5月。

 街中ではカーネーションの花に母への感謝の言葉を添えた贈り物が並んでいました。薬草の世界でも母の漢字が名に入っている「益母草」は古くから母の薬草として知られた植物の一つです。

 生薬・益母草は日本、台湾、朝鮮半島、中国に広く分布するシソ科植物で、古くから婦人薬にしてきた中国でその名がつけられました。2007年改正の日本薬局方では和名メハジキの地上部を基原植物と定義しています。道端や野原の日当たりの良い場所に自生し、これからの夏、薄紅色の花がついている開花期に地上部を刈り取り、葉も茎も花も乾燥させ使用します。主な成分としてはアルカロイドのレオヌリンやスタキドリン、フラボノイドが報告されています。

 また、代表的な漢方処方は、「万病回春」という古典書にある芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)(13種類の薬草で構成)と、芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)(日本の漢方流派の一つ一貫堂方、21種類の薬草で構成される処方)が、現在日本ではエキス化され、月経不順、産後の神経症など、特に産後の体力低下に効果があるとされています。

 日本での漢方処方としての使われ方は比較的たくさんの薬味(薬草)が配剤されている処方です。

 西洋、ハーブの世界でも近縁種のメハジキはローマ時代から「母の薬草」の名で使われていたそうで、不安や神経症からくる動悸(どうき)や胸騒ぎに少量をお茶にして飲むことが紹介されていました。日本ではよく知られている薬用酒にもこの益母草が配合されています。
 
 ところで母の日の次は父の日ですね。さて父の名の付く薬草は見つかるかな。


2023年5月31日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

トップへ ページの先頭へ