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薬と薬草のお話vol.77 エンゴサクと延胡索(エンゴサク)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.77 エンゴサクと延胡索(エンゴサク)

薬用基原植物
Corydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo
Y.H. Chou et. C.C.Hsu(Papaveraceae)

 春を知らせる草木にとってほどよい気候が始まりました。私の小さな庭にもミヤマオダマキの花がうつむき加減に咲き、時計の動きを忘れ、立ち止まる朝が続いています。春の花が終わると、地上部が枯れてその姿を消してしまう草花を「スプリングエフェメラル」と言うそうです。その仲間の一つが今回の生薬エンゴサク(延胡索)です。

 エンゴサクは日本各地にヤマエンゴサク、ジロボウエンゴサクなどが自生していますが、現在薬用とする延胡索は、中国東部に自生する延胡索(別名チョウセンエンゴサク)を基原植物としています。花が終わり葉が枯れた後、初夏に根を掘り上げ、根についた球根上の塊茎を除き、湯どおしして黄色になったものを陽乾して用います。

 有効成分としては鎮痛・鎮痙作用のあるアルカロイドが同定され、生薬の中でも有効成分と薬用の使途が比較的わかりやすい生薬の一つです。代表的な漢方処方としては安中散(あんちゅうさん)、折衝飲(せっしょういん)、芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、安中散加茯苓(あんちゅうさんかぶくりょう)などです。中でも折衝飲は江戸時代後期に日本で考え出された処方で桃仁(とうにん)、紅花(こうか)、牛膝(ごしつ)、牡丹皮(ぼたんぴ)、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、延胡索、桂皮(けいひ)の薬味からなり、比較的体力のある方の生理痛や生理不順に用いることができます。

 以前頂いた北摂の自然観察会の記録にキンキエンゴサクの様子が記載されていました。山並みの方に目を向けると、日ごとに緑を濃くしています。キンキエンゴサクさん、地中に姿を隠すのは少し待ってもらえないですか。今仕事が終わりますので。


2023年4月30日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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