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薬と薬草のお話vol.58 マオウと麻黄(まおう)と葛根湯

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.58 マオウと麻黄(まおう)と葛根湯

薬用基原植物 Ephedra sinica Stapf, Ephedra intermedia Schrenk et C.A.Meyer
または Ephedra equisetina Bunge (Ephedraceae)

 仕事で往来する街路の路面が桜の花びらで薄く色付くと「花鎮祭(はなしずめのまつり」(薬まつり)のことを思いだします。花が散り始める頃になるとはやり病がひろがるので、それを鎮めるため、薬草をお供えする行事です。私は薬草を身近に感じて育ちましたが、漢方処方に触れるようになってから知った生薬も多く、特にこの国で自生しない渡来の薬草、「麻黄」もその一つです。

 麻黄は砂漠の草とも言われ、モンゴルや中国の西北部の砂漠地帯に点々とトクサのような草状の小木が生え、小さな黄色の花をつける生薬です。

 現在、日本でエキス化されている漢方処方の10%以上に配剤される要薬です。

 例えば漢方エキス剤の代表といえる葛根湯は、麻黄と葛根の他、五つの薬味で構成されています。その中で麻黄の役割は主に発汗力が強く風邪の初期に用いられます。

 また、麻黄と杏仁(きょうにん)の他、2味からなる麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)は、強い鎮咳(ちんがい)作用を有し、せき込むと顔が赤くなるほどの激しい咳(せき)に使用されます。麻黄の有効成分はエフェドリンというアルカロイドやその他に、エフェドリンの作用を反対におさえるタンニン類などです。このエフェドリンは交感神経刺激作用がありますので、他の薬を併用される場合は注意してください。

 今年の春は花鎮祭(薬まつり)が妙に納得させられます。

 そして大阪には秋にまた、無病息災を願う薬のお祭り「神農さん」がやってきます。

 幼い頃、普段よりきれいな洋服を着せてもらって、亡父に手を引かれ、大阪・ 道修町の黄色い張り子の虎のお人形がいっぱいの華やかな道筋を歩いた、心弾んだ一日が懐かしいです。


2021年4月28日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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