薬と薬草のお話vol.53 トリカブトと修治附子(しゅうじぶし)
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vol.53 トリカブトと修治附子(しゅうじぶし)
〈炮(ほう)附子・加工附子〉
薬用基原植物 ハナトリカブト Aconitum carmichaeli Debeaux またはオクトリカブト Aconitum japonicum Thunberg (Ranunculaceae)
秋の深まりが一段と進むと、秋風に触れながら家族のリハビリのため通った山路で目にとまった濃い紫の花々を思い出します。中でも、澄んだ秋空に色濃く紫色を際立たせる美しい花、キンポウゲ科の有毒な多年草、トリカブトです。
トリカブトの仲間は植物学的にも分類が難しい分野で、花の姿を見ることができない時期には他の野草と見間違えることがあり、注意が必要です。
薬草として使用する場合のトリカブトは、日本の薬局方では基原植物2種類を定義しています。それらを修治(加工、造作をして使用すること)して安全性を確認したものを生薬名「附子」と呼びます。また、修治の方法により炮附子、加工附子など幾つかの名称で呼ばれています。ただ同じ秋草、例えばリンドウ(竜胆)のように根を掘り起こし乾燥させて薬用にするものとは違い、山菜採りと薬草摘みのように考えて利用することは大変危険ですから、採取しないでください。
現在、修治した附子を使う漢方処方の代表例は、八味地黄丸(はちみじおうがん)、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが、安全性を担保した上でエキス化されています。桂枝加朮附湯では附子は体を温め、痛みをやわらげる目的で配剤され、関節痛や神経痛に効果があります。牛車腎気丸は下肢痛、腰痛、しびれなどに専門家が使用することがあります。
現在のように漢方エキス剤も比較的手に入りやすい時代では、2剤以上の漢方エキス剤を服用する際、表示されている成分の重なりなどにも注意してください。
私の生薬附子との出会いは、美しい紫色のトリカブトの花を目にするより先でした。薬の性質を先に教えていただいたせいか、元来の性格なのかわからないのですが、生薬を手にすると緊張感を覚えます。終生続く緊張感なのかもしれません。
薬という字は、くさかんむりに楽しいと書いて薬と読むとも教えられました。薬をむやみに過信することなく、必要な情報とよい薬の使い方を後進に残したいですね。
現在のように漢方エキス剤も比較的手に入りやすい時代では、2剤以上の漢方エキス剤を服用する際、表示されている成分の重なりなどにも注意してください。
私の生薬附子との出会いは、美しい紫色のトリカブトの花を目にするより先でした。薬の性質を先に教えていただいたせいか、元来の性格なのかわからないのですが、生薬を手にすると緊張感を覚えます。終生続く緊張感なのかもしれません。
薬という字は、くさかんむりに楽しいと書いて薬と読むとも教えられました。薬をむやみに過信することなく、必要な情報とよい薬の使い方を後進に残したいですね。
2020年10月30日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)