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薬と薬草のお話vol.47 ヨモギと艾葉(がいよう)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.47 ヨモギと艾葉(がいよう)

薬用基原植物 Artemisia princeps Pampanini 又は Artemisia montana Pampanini(Compositae)

 いつもなら百花爛漫(らんまん)の時期を迎え桜の枝先を抜けるすがすがしい風に励まされる春ですが、今年は人の気配が少ない静かな通勤路です。それでもコンクリート敷きから外れた道端にはキク科の形状をした葉にホコリをかぶりながらしっかりと根付いているヨモギ属の草の姿を見かけます。

 ヨモギは雑草といってもよいほどどこにでも生えている草木で、春彼岸では草餅に、端午の節句ではショウブと一緒にお風呂にと、日常生活にとけ込んでいる植物の一つです。薬用には葉および枝先を艾葉と呼んで使用します。ヨモギの種類は世界全体では約250種もあるそうですが、日本で生薬として以前から内服されているものの一つに「艾葉」があります。

 例えば現在エキス化されている処方としては、7種類の生薬からなる芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)が痔(じ)出血や婦人の不正出血時などに使われ、艾葉は阿膠(あきょう)と組み合わせて使われています。また主要な成分に精油や脂肪油があり、香りの強いものが良品とされています。入浴剤の中にヨモギ(艾葉)が入ったものは皮膚病に効果があるともいわれています。

 昔の大阪千里は丘陵で竹藪(たけやぶ)が多く、ヨモギもたくさんあったそうです。竹藪では筍(たけのこ)を作るために肥料と共に赤土を藪全体に土盛りし、そこに生えてくるヨモギはとても立派で軟らかく、摘みとって草餅にすると良い香りで美味(おい)しかったそうです。

 私が今年出会ったヨモギ属は残念ながら田園風景の中にあるものではなく、厳しい環境、道端のヨモギでした。そんな環境の中でも生きぬいて春の気配を感じさせます。私たちも負けずに今日一日を過ごしましょう。


2020年4月27日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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