薬と薬草のお話vol.35 ボタンと牡丹皮(ぼたんぴ)
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vol.35 ボタンと牡丹皮(ぼたんぴ)
薬用基原植物 Paeonia suffruticosa Andrews(Paeonia moutan Sims)(Paeoniaceae)
春は植物好きにとって心騒がしく、花の名所へ足を運ぶ季節です。子供の頃、町内会の行事で大人と一緒に私もボタンが有名だという古寺へと連れて行っていただきました。
ボタンは中国原産の落葉低木で、日本に入ってきた時代は奈良とも平安ともはっきりしないようです。
花の名所のボタンとは異なり、薬用を目的にして栽培する場合には、ボタンの根の皮を「牡丹皮」として使いますので、むしろ花期に開花させず、できるだけつぼみを取り除いて、根の発育がよくなるように配慮して栽培するそうです。
苗から4〜5年目の秋に、根を掘りとり、よく水洗いして、皮を裂いて「芯」(かたい木部)を抜き取ってから長さ10cmくらいに切って日干しにします。これが生薬「牡丹皮」で、独特の香りがあり、私には昔からの漢方薬屋さんの匂いに思えました。
私が初めて手にした牡丹皮の刻みは国産品でしたが、高度成長期を経て1970年代後半頃、煎じ薬より漢方エキス製剤の生産量が圧倒的に多くなりだした頃から輸入品が主流に変わってきたと覚えています。
現在「牡丹皮」を含有している代表的な漢方エキス剤には、桂枝茯苓丸〈けいしぶくりょうがん〉や加味逍遥散〈かみしょうようさん〉、芎帰調血飲〈きゅうきちょうけついん〉など多数あります。
中でも桂枝茯苓丸は月経不順や更年期障害、肩こり、頭重、しみなどに効果があるとされています。構成生薬(牡丹皮、桃仁〈とうにん〉、芍薬〈しゃくやく〉、桂枝、茯苓)の中で、牡丹皮と桃仁の組み合わせは駆瘀血〈くおけつ〉(血流の悪化のような状態の改善)を目的とした婦人病薬とされています。一方、化学的成分分析でも主要成分のペオノールには抗凝血作用、血小板凝血抑制作用などが報告されています。ただ桂枝茯苓丸の服用は漢方の判断基準の一つ、「気血」が充実していることが前提ですので、比較的体力がある方に用い、体力がない場合には単独では使わず補剤を併せるなどの工夫をお勧めします。
幼い時ワクワクしながらポケットに詰め込んだおやつのこと、大人と一緒の遠出、大きい大人の背中に押されながら垣間見た花は、ただただ近寄れない大きな花の記憶です。
現在「牡丹皮」を含有している代表的な漢方エキス剤には、桂枝茯苓丸〈けいしぶくりょうがん〉や加味逍遥散〈かみしょうようさん〉、芎帰調血飲〈きゅうきちょうけついん〉など多数あります。
中でも桂枝茯苓丸は月経不順や更年期障害、肩こり、頭重、しみなどに効果があるとされています。構成生薬(牡丹皮、桃仁〈とうにん〉、芍薬〈しゃくやく〉、桂枝、茯苓)の中で、牡丹皮と桃仁の組み合わせは駆瘀血〈くおけつ〉(血流の悪化のような状態の改善)を目的とした婦人病薬とされています。一方、化学的成分分析でも主要成分のペオノールには抗凝血作用、血小板凝血抑制作用などが報告されています。ただ桂枝茯苓丸の服用は漢方の判断基準の一つ、「気血」が充実していることが前提ですので、比較的体力がある方に用い、体力がない場合には単独では使わず補剤を併せるなどの工夫をお勧めします。
幼い時ワクワクしながらポケットに詰め込んだおやつのこと、大人と一緒の遠出、大きい大人の背中に押されながら垣間見た花は、ただただ近寄れない大きな花の記憶です。
2019年4月29日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)