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薬と薬草のお話vol.33 オウレンと黄連

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.33 オウレンと黄連

薬用基原植物 Coptis japonica Makino, Coptis chinensis Franchet,
Coptis deltoidea C.Y. Cheng et Hsiao またはCoptis teeta Wallich(Ranunculaceae)

 節分から立春へと巡っていても、屋外に出ると風の冷たさに驚かされる朝が続きます。それでも草木に目をやると枝先の膨らんだ梅、土を押し上げて芽を出しているアミガサユリなどが春の兆しを告げています。

 日本産オウレンも先駆けて春を知らせる薬草の一つで、北海道から本州の山林に分布するキンポウゲ科の多年草で、これからの時期10cmほどの花茎を出し、その先に2~3個のかわいらしい白い花を咲かせます。

 薬の基原植物としてはキクバオウレンなどの根茎を使います。日本では江戸中期、本草学者が国産のオウレンは薬用として良質であることを知り栽培を始めました。種をまいて4~5年たってから掘り上げるので時間と手間がかかり、それまでのご苦労がしのばれ生産者が少なくなってくるのも、無理からぬと思えます。

 生薬として黄連の黄褐色の刻みを手にしてみると苦味を思わせ、主成分のベルベリンなどからも抗菌作用や苦味健胃薬という印象を持ちます。けれど漢方処方中の役割は、止血、鎮静、消炎作用として使われます。

 例えば黄連解毒湯は高血圧などで不眠、イライラや二日酔いの頭痛、鼻出血や、目の充血に使うことができます。ただし手足の冷える人には用いないなど体質を考慮することが大切です。

 現在では漢方薬の需要が増え、日本産の黄連では足りなくなり、輸入品の黄連、雅連、川連、などが使用され、日本産とは主成分は一緒ですが植物の種類が異なり、少しずつ差異があるようです。

 夕べに辿(たど)る家路、余寒の冬空にさえた光の月星が迎えてくれました。明日の朝は次の春が、また一歩近いです。


2019年2月27日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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