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薬と薬草のお話vol.24 サンショウと山椒(さんしょう)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.24 サンショウと山椒(さんしょう)

薬用基原植物 Zanthoxylum piperitum De Candolle (Rutaceae)

 5月の空に雲浮かぶ日の外出は、緑風が心地よく木の芽や若葉が目に美しい季節です。園芸店で小さい葉をつけたサンショウの苗木が並んでいました。

 サンショウは日本を含む東アジアに分布し、薬用としても香辛料としても幅広く私たちの日常に使用されています。薬用には夏から秋にかけて成熟した果実を採取し、果皮から分離した種子をできるだけ除いた果皮を使用します。

 代表的な漢方エキス剤には、大建中湯=だいけんちゅうとう(山椒、人参、乾姜(かんきょう)のエキスに膠飴(こうい)を加えたもの)があります。これは特に体力が低下した人で、お腹(なか)が冷えて痛みや腹部膨満感がある場合に効果があります。

 山椒の効能としては、乾姜とともにお腹を温めて冷えを取り除く(温中散寒=おんちゅうさんかん)目的で配剤されています。またこの処方は開腹手術後の腸管通過障害に伴う腹痛や膨満感に汎用(はんよう)され、化学成分の薬品にはない効果を発揮してくれます。

 ところで、日本では漢方生薬の80%以上が輸入品、古典でいう唐物(からもの)という現状が続いていますが、実は薬用生薬としての山椒は、数少ない国産品の一つです。実際、煎じ薬としての山椒を手にしてみると、微(かす)かな香りの良質のものです。

 この国では、飛鳥時代からつねに薬物は自給自足、国産薬の探求が焦眉の問題となり、例えば「同時代四天王寺施薬院では、求める所に従って施与され、ほぼ自給の域に達していたものと推移される」と教わりましたが、私には不思議な教えでした。

 5月の風に漂うサンショウの爽やかな空気は、この先も伝えてほしい、草木と薬を大切にしてほしいと思わせる一葉です。


2018年5月29日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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