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薬と薬草のお話vol.23 レンギョウと連翹(れんぎょう)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.23 レンギョウと連翹(れんぎょう)

薬用基原植物 Forsythia suspensa Vahl (Oleaceae)

 何年かかっても終わりそうにない写真の整理をしていると、近くの小さな公園の生け垣で枝もたわわにレンギョウの花が美しさを競っているのを手にしました。

 「連翹」は早春葉に先んじて黄色の四弁花が咲き、冬の名残を一気に吹き飛ばして咲き乱れます。日本には中古時代渡来したとされ、古書「延喜式(えんぎしき)」にこの北摂、丹波や阿波などの諸国より献上されたものが薬園に植えられたとあるそうで、「日本植物誌」でも鮮やかな黄色の花が目をひきます。

 薬用にはモクレン科レンギョウの果実を夏から秋に採集し、茶褐色になるまで天日干ししたものを生薬名「連翹」として用います。

 薬剤処方には荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)、駆風解毒湯(くふうげどくとう)、銀翹散(ぎんきょうさん)等々あります。

 漢方は病名による用い方はせず、体質によってかえるのが基本ですが、これらの処方用途から考えると連翹は判明している働き「抗菌消炎」と、漢方としての薬能「清熱解毒(せいねつげどく)」といわれる効果を期待する生薬として含まれています。例えば扁桃(へんとう)周囲炎のノドの痛みや腫れに駆風解毒湯や銀翹散を使用します。二つの処方は短期間服用でも効果があります。

 園芸種のレンギョウは欧米でも好まれているようで、東洋西洋と生育域が広がり、草木の強(したた)かな生きざまに敬服してしまいます。

 手元の写真には、その公園で幼い兄妹が黄色いレンギョウの花を背景にして階段を上る姿が残されていました。私の身近なレンギョウには、子供たちの笑顔がよく似合います。


2018年4月27日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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