薬と薬草のお話vol.8 忍冬(にんどう)とスイカズラ
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vol.8 忍冬(にんどう)とスイカズラ
冬空の散歩。目にする草木は一様に枯れ色に変わり、寒さに耐えている様子です。人間の方はコートで風を防ぎながら足早に進んでいると、すがれた色の茂みのなかに細い茎を絡めたスイカズラの緑葉に出会いました。
スイカズラは、日本のいたるところ日当たりのよい路傍や丘陵地にふつうに自生するつる性の常緑低木です。冬でも落葉しないで他の木のうえを這(は)い冬を忍ぶので、葉及び茎を生薬名「忍冬」と名づけたと、「名医別録」という古典に記載されています。
「忍冬」を配剤した代表的な処方には、「治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)」や「紫根牡蠣湯(しこんぼれいとう)」があります。「治頭瘡一方」は忍冬以外に連翹(れんぎょう)など他の八つの生薬、「紫根牡蠣湯」の方は忍冬以外に紫根はじめ他の9味の生薬で構成され、「忍冬」の解毒や抗炎症作用を利用して、湿疹や皮膚炎に使われています。「紫根牡蠣湯」は漢方といっても、処方の出典は江戸時代、水戸光圀公の蔵方「黴癘新書(ばいれいしんしょ)」中にあり、当時なかなか治らない皮膚病や腫瘍などの治療に用いたといわれています。現代ではいずれの処方も製薬会社からエキス剤として市販され、服用しやすくなっています。
スイカズラは、春になると白色から黄色と変わる花が咲き始め、白色と黄色が入り交じる姿から「金銀花(きんぎんか)」と呼ばれる薬草にもなります。「忍冬」から「金銀花」と変わる季節まで、冬も楽しみ、次の時を待ちたいですね。
2017年1月27日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)