佐藤 弘道
1968年7月14日、東京都新宿区生まれ。日体荏原高等学校卒業後、日本体育大学体育学部に入学。大学卒業後は、世田谷区教育委員会の教育指導員を経てスポーツクラブのインストラクターとなる。1993年NHK「おかあさんといっしょ」オーディションに合格。同年4月よりNHK「おかあさんといっしょ」第10代目体操のお兄さんを12年間務め、体操のコーナーだけでなく、イベント、歌のクリップなどでも活躍し、2005年3月に体操のお兄さんを卒業した。2002年1月、有限会社エスアールシーカンパニーを設立。子供たちと指導者のためのスポーツクラブを立ち上げ、全国で親子体操教室や幼児体操教室、保育士講習会などを行う。また、各民放のバラエティー番組や情報番組、CM、舞台、イベント、雑誌など数多く出演し、親子のための体操やCM用等のオリジナル体操を考案するなど多方面で活躍中。2015年3月、弘前大学大学院医学研究科博士課程修了(博士)。
オトナのスポーツテスト2016に
佐藤弘道さんもゲスト参加します!
2015年の様子
成人男女が今の自分の体力を知るために体力測定に挑戦できる「オトナのスポーツテスト2016」が、11月19日(土)、日本体育大学 世田谷キャンパスで開催されます。同イベントにゲストとして参加する佐藤弘道さんに、運動と健康、そして運動を通じた親子の交流の大切さについてうかがいました。
「オトナのスポーツテスト」とは
文部科学省による「新体力テスト実施要項(20~64歳対象)」に定められる6項目に、50メートル走を加えた計7項目の記録を測定し、参加者の体力年齢を判定するイベントです。
ひょんなことから体操のお兄さんに
――これまでの人生における佐藤さんのスポーツとの関わり、付き合い方についてお聞かせください。
小学生の頃から好きな教科を聞かれたら「体育と給食」と答えるほど体を動かすことが大好きで、将来はオリンピックの体操選手や体育の先生を夢見ていました。中学生までは柔道、水泳、ソフトテニスなど、さまざまなスポーツに取り組みましたが、一番好きだったのはやはり体操。日体大の体操選手が数多くオリンピックに出場していることを知ると、「日体大に行く!」と周りには言い続けていました。
実際、高校は日体大の姉妹校に進み、念願の器械体操部に入部。しかし忘れもしない高校1年の9月、練習中に頭から落ちて頸椎を損傷してしまいました。リハビリを経て何とか部に復帰は果たしたものの、オリンピックを狙うような高いレベルでの選手生命は事実上、これで絶たれてしまいました。その後、推薦で日体大に進学するのですが、競う体操競技から魅せる体操へと転身を図り、器械体操部ではなく体操部に4年間所属しました。あとで思えば、この時の経験が体操のお兄さんをやる上で非常に役立つことになるのですから、人生は分からないものです。
大学卒業後はスポーツインストラクターをしていましたが、ひょんなことからオーディションを受け、NHK「おかあさんといっしょ」の体操のお兄さんになりました。この番組を通じて多くの方々に名前と顔を覚えてもらい、今も子供たちや親子に向けてスポーツにかかわる仕事を続けられていることは、とても幸せなことだと感じています。
――現在は親子体操教室を主宰するなど、子供たちとの関わりが多い佐藤さん。こうした活動を通じて何を伝えたいとお考えですか。
体操のお兄さんは12年も続けましたが、実はその間は試行錯誤の連続でした。大人を相手に指導するのと、3歳児を相手に体操や動く楽しみを教えるのでは、まったく勝手が違ったのです。悩んだ僕は番組に出演する傍ら、幼稚園の現場や幼児向けの体操教室にお邪魔して、ボランティアで指導をするようになり、また子供の発達理論や教育心理学などについても勉強を始めました。そうした中でひとつの結論に達したのは、子供たちにとってのスポーツは、体づくりと動きづくり、そして心づくりのために生かすべきだということでした。
現在、僕が子供たちに体操を教える中で大切にしているのは、「遊び→運動→スポーツ」という流れです。体が未発達で体の動かし方を知らない子供たちにとっては、遊び、運動をメインに指導した方がケガも未然に防ぐことができ、将来的に本格的なスポーツの世界にも進みやすくなります。こうした考えを突き詰めることで生まれたのが現在、僕が普及に向けて力を入れている「親子体操」です。親子で楽しみながら健康増進を図るこの体操は、子供たちに体を動かす楽しみを知ってもらうのはもちろん、大人の運動不足の解消にもつながります。多くの方が「親子体操」を通じて健康の大切さに気づき、健全な生活につなげてくれることを強く願っています。
結果を受け止めるためのスポーツテスト
――日常生活に運動やスポーツを取り入れることの大切さについてどう思われますか。
健康のことを考えたときに運動は欠かせないものですが、苦手な人が多いのも事実です。しかし僕自身は、世の中に運動嫌いな人はひとりもいないと思っています。なぜなら運動というものは生活に密接に関わってくるもので、歩くことも、走ることも運動であるからです。歩くことがスポーツになれば競歩ですし、ジョギングがスポーツになればマラソンになる。ですから、みなさんが普段やっていることは運動であり、何となく動いていたところを、姿勢を正し、少し歩幅を広げるだけで運動効果を劇的に上げることができます。運動不足を悩んでいる人は、ぜひ試してほしいですね。
一方、スポーツを楽しむためには、空間と時間と仲間が必要になります。スポーツを運動の延長として楽しむことは健康面でのメリットがあるのはもちろん、仲間に恵まれることにもつながります。生活に彩りを与えるという意味でも、スポーツに取り組むことは素晴らしいことだと思います。
――今回、佐藤さんもゲストとして参加される「オトナのスポーツテスト」について、どのようなイベントになることを期待されますか。
「スポーツテスト」は、結果が出るということがまず大切なところです。明確な数値という結果が出ることによって、自分自身が今後、体力を維持・増進を図るために必要なものが明確になってきます。普段、漠然と生活している中では、50メートルを全力疾走することはありませんし、反復横跳びや立ち幅とびをやることはまずないはずです。そういう意味で「オトナのスポーツテスト」は、自分自身をわかるための良い機会になりますし、自分を見つめ直すひとつのきっかけになってくれれば良いと思います。実は僕自身も本格的なトレーニングから離れて久しいので、結果が出るのが少し怖くもありますが、楽しみながら挑戦したいと思います。