【トップインタビュー】「住」は生活の基本 東建コーポレーション・左右田 稔社長

2015年3月26日

 全国で空き家が820万戸と過去最多に上り、社会問題になっている。核家族化、少子高齢化が一因だが、人が快適な暮らしを求めていることに変わりはない。土地活用をキーワードに住まいを提供し、資産運用を支えてきた東建コーポレーション(本社・名古屋市中区)の左右田稔社長兼会長(67)は「衣食住は人が生活していくうえでの基本で、『住』はなくてはならない大切なものです。これからも土地の有効活用を通じて借り手、貸し手の人々を結び、活力ある地域づくりに貢献していきたい」と語る。

空き家問題創業40年のノウハウで対応

左右田稔(そうだ・みのる)
1947年愛知県生まれ。東海大学政治経済学部中退。水道工事業などを経て、東建コーポレーションの前身、東名商事を創業し、現在、代表取締役社長兼会長。

——倒壊や火災の恐れ、防犯面から空き家が問題になっている。

左右田 総務省が昨年7月に発表した2013年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は過去最多の820万戸で、前回調査(2008年)から63万戸増加し、総住宅数に占める空き家率の割合も13・5%と、こちらも過去最高を更新しました。その中心は老朽化した木造の戸建て住宅です。一方、すべての入居者がいなくなり、アパートそのものが空き家になっているケースはあまり見受けられません。

——その理由は。

左右田 アパートは入居者に貸して収益を生み出すために建てた、いわば資本と考えれば分かりやすいでしょう。ですから所有者は、老朽化して入居者が少なくなるなど収益率が低くなれば、建て替えるか、取り壊して別の収益を上げる方法を考えます。入居者がすべていなくなったアパートをそのまま放置しておく所有者はいないのです。

——では、戸建ての空き家が多いのは。

左右田 自分が住むために建てた住宅は税制面で優遇されているからです。戦後、住宅不足を解消するため、国は持ち家の取得を奨励してきました。現在、住宅が建っている土地(200平方メートル以下)の固定資産税は更地に比べ、6分の1で済みます。居住していなくても、どんなに古くても適用されます。ですから、住まなくなったからといって、高額な解体費用を使って取り壊し、その結果、固定資産税が高くなることを選ぶ人はいないでしょう。売れる当てがなければ、そのままにしておこうと、残してきたのが空き家です。

——国や自治体も対策に乗り出した。

左右田 国は今年2月、空き家の判断基準を「1年間を通して使用されていない建物」とする基本方針を公表しました。倒壊の危険など著しく迷惑をかける恐れのあるものについては「特定空き家」とし、撤去勧告や修理指導、固定資産税減額廃止など、詳細な基準づくりを進めています。強制的に取り壊したり、罰則を課したりする自治体も増えており、撤去費用を補助するところもあります。

——土地活用に実績がある立場から、何か妙案は。

左右田 そもそも空き家が増えてきたのは、核家族化、少子高齢化が一因ですが、所有者も好んで空き家を放置しているわけではなく、多くの方が悩んでいます。当社では、アパート・賃貸マンションの設計、施工から入居者仲介、完成後の物件管理、メンテナンスまで一括して行い、資産形成のお手伝いをしてきました。

次世代型のバリアフリー賃貸マンションのイメージ図

現在、提案しているのは、自宅を併用した賃貸マンションの建設です。マンションの一部を住宅として使えば、住宅ローン、アパートローンの両方が使えますので、資金調達はそれほどむずかしくありません。家賃収入を得ることもでき、放置しておくのはもったいないですね。

——ただ、入居者の確保が心配という人もいる。

左右田 その通りです。当社では創業40年の歴史で培ったノウハウがあり、入念なリサーチをしています。全国の不動産情報を提供する仲介専門店のネットワーク「ホームメイト」をつくり、入居者が確保できるよう、いつもバックアップしています。2012年8月からは「施設検索 ホームメイト・リサーチ」という検索サイトを開設しました。

——どういうものか。

左右田 自分自身のことですが、ゴルフの練習場に近い物件を探そうと思いましたが、当時はそうした施設から部屋を探す方法はありませんでした。利用したい周辺施設から検索できれば便利だろうと始めたのがきっかけです。病院、保育園、学校、役所など、あらゆる情報を取り込み、地域別、沿線別だけでなく、施設からでも賃貸物件を探せるようにしました。現在、ホームメイトでは9000店舗のネットワークで全国の賃貸物件を提供していますが、間取り、家賃から絞り込めるだけでなく、住みたい地域の施設情報からも物件を検索できるのが最大の特長です。

——住まいを提供し、資産を形成する仕事の意義は。

左右田 衣食住は、人が生活していくうえでの基本です。「住」はなくてはならない大切なものです。借り手、貸し手を仲介し、双方が幸せになるお手伝いをしていると思っています。かつては貸し手市場でしたが、少子高齢化が進み、不動産業を取り巻く環境は厳しくなっています。しかし、人が快適な生活を求めていることに変わりはありません。これからも土地の有効活用をキーワードに、人々を結び、活力ある地域づくりに貢献していきたいと考えています。

スポーツ・文化後押し

 「源泉100%掛け流しの個室露天風呂付きの客室もあります。ゴルフをプレーされる方だけでなく、温泉を楽しみに宿泊される一般の方も増えてきました」と、東建コーポレーション広報IR室の八橋幸雄次長(53)。毎年、男子プロゴルフツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」が行われる東建多度カントリークラブ・名古屋(三重県桑名市)のクラブハウスには、天然温泉の「ホテル多度温泉」が併設され、一般客も利用できる。

 現在、今年9月の完成を目指し、8階建ての会員制リゾートホテルを増築中だ。会員用13室、一般用8室で、ゆったりとくつろげるつくりにするという。岐阜県可児市のゴルフ場「東建塩河カントリー倶楽部」にもホテルの建設構想がある。

 ツアー開幕戦は1993年から主催してきた。当初は鹿児島県・祁答院ゴルフ倶楽部で開催してきたが、10年ほど前から会場を東建多度カントリークラブ・名古屋に移し、今年4月で23回目を迎える。尾崎将司、松山英樹、石川遼、藤田寛之選手らが熱戦を繰り広げてきた。

 また、本社ビル(名古屋市中区)の3・4階は「東建ホール」として、一般に有料で貸し出している。客席数428席の多目的ホールで、会議、学会、演劇、ファッションショーなどに利用され、地域の文化事業を後押ししている。

上)今年も男子プロゴルフツアー開幕戦が行われる東建多度カントリークラブ・名古屋
中)天然温泉の多度温泉露天風呂
下)会議、学会、演劇など多目的に使える東建ホール
(写真=東建コーポレーション提供)

東建コーポレーション

1974年9月、愛知県刈谷市で「東名商事」として創業し、92年から現社名。アパート・賃貸マンションの設計、施工、入居仲介、賃貸管理のほか、ホテル、ゴルフ場などを運営している。本社は名古屋市中区。東証、名証1部上場。

\ この記事をシェアする /