社会全体で取り組む認知症
SDGs:すべての人に健康と福祉をSDGs:住み続けられるまちづくりを

2020年9月30日

 9月21日は「世界アルツハイマーデー」。アルツハイマー病の啓発を目的として、国際アルツハイマー病協会とWHOが制定した記念日だ。この病気も原因の一つとなる認知症はいまや、誰にとっても「自分や家族などが患う可能性のある身近な病気」となりつつある。近年では共生・予防に向けた取り組みが官民で進められており、ニューノーマル(新常態)においても、私たち一人ひとりが認知症を「自分ごと」として捉え、正しく理解し、よりよい付き合い方を模索することが求められている。

5年後「高齢者の5人に1人」に

 認知症とは「脳の働きが低下して生活に支障をきたしている状態」を指す。記憶や会話、計算能力などをつかさどる「認知機能」が低下する他、記憶障害による不安から暴力的になるなど、周囲との関係性の維持が難しくなる可能性もある。症状が進行すると自立した生活が難しくなるケースもあるため、早期に発見し、リスク低減に取り組むことが重要だ。

 その患者数は年々増え続けており、「平成29年版高齢社会白書」(内閣府)によれば、認知症を患う高齢者は約462万人(2012年時点)と、高齢者人口のおよそ7人に1人。今後もその数と割合は増加し、「2025年には700万人に達し、5人に1人になる」という推計もある(下図)。

65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率

 国もこの事態を重く受け止め、対策を打ち出している。19年6月、政府は尊厳を保ち同じ社会で生きる“共生”と、発症を遅らせるなどの“予防”を考え方の両輪とした「認知症施策推進大綱」を取りまとめた。また同月には、認知症施策を省庁の枠組みを超えた課題として捉えた議員立法「認知症基本法案」も提出されている。この「共生と予防」という考え方は、私たちが個人として認知症と向き合う際にも重要だ。

社会参加でリスクを低減

 認知症の方と同居する場合は「徘徊」が問題となることもあるが、そのリスクを低減するのに役立つのが、玄関に設置する専用の人感センサーだ。導入費用には介護保険が適用され、自己負担が月2千円程度に収まることもある。近年増えている認知症専門のデイサービス(認知症対応型通所介護)を利用すれば、本人の意思を尊重した生活の助けになるのはもちろん、家族の負担も軽減され、お互いに暮らしを維持しやすくなるだろう。また、介護保険給付の対象とならない「散歩の付き添い」や「話し相手」としてのヘルパーを派遣したり、お店や公共交通機関で困っているお年寄りへの声かけを推進したりする自治体もある。こうした製品やサービス、取り組みは、認知症を患う人との共生をサポートしてくれるものであり、当事者やご家族は活用を検討されるとよいだろう。

 一方の予防については、健康的な体づくりの基本「食事と運動」に加え、積極的な「社会参加」も重要とされている。日本老年学的評価研究プロジェクトが実施した調査によれば、「ボランティアグループなどの地域組織への参加割合が高いエリアほど、認知症リスクを有する後期高齢者の割合が少ない」という。少子高齢化により社会的役割の全てを現役世代が担うことが難しくなる中、高齢者が地域貢献を積極的に果たしていけば、本人の自己実現や生きがいにもつながるはずだ。

 「人生100年」といわれる長寿命時代を迎えたいま、認知症がQOL(生活の質)に影響を及ぼす期間も長くなっている。いざという時には民間サービスや公的な補助を活用できるよう準備しつつ、日頃の生活の中で可能な限りの予防策を講じるよう心がけたい。

年配のご夫婦

たとえ発症しても社会の一員として

 認知症を発症した後も、可能な限り従来の生活のあり方を維持し、その後の人生をいきいきと過ごすための様々な活動が広がっている。認知症の当事者を中心とした団体である「日本認知症本人ワーキンググループ」が一昨年に表明した「認知症とともに生きる希望宣言(下図)」はその代表的な例であり、今後も共生に向けた取り組みが多方面で活発化しそうだ。

認知症オレンジプロジェクト

 読売新聞社が認知症への「予防」や「備え」、「共生社会の実現」のための課題について、関連団体や協賛各社と一緒に取り組んでいきます。

後援
◆経済産業省 ◆厚生労働省
  
◆公益社団法人 認知症の人と家族の会(家族の会)
  
◆一般社団法人 日本認知症本人ワーキンググループ(JDWG)

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