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シンポジウム ~持続可能な農業を考える~ 2019年5月20日(月)スマート農業を日本の“当たり前に”

2019年6月17日

未来の農業をいま考える

 「担い手不足」や「高齢化」が深刻になり、持続可能性の観点から大きな転換期を迎えている日本の農業。いま、様々な課題を解決する策として注目を集めているのがロボットや情報通信技術(ICT)を活用する「スマート農業」です。農作業における省力化・精密化や安価で高品質な農作物生産の実現、新規就農者の確保、栽培技術の継承など、多くの効果が期待されています。スマート農業など、先端技術の活用によって農業現場や流通、私たちの食卓はどう変わっていくのか、そして、どのように持続可能な農業を実現できるのか。

 政府や企業の有識者が集まり、日本の農業の未来や先端技術の活用方策について議論するシンポジウムが先月、都内で開催されました。

主催:
読売新聞社
共催:
農林水産省
協賛:
オイシックス・ラ・大地株式会社、日清医療食品株式会社

基調講演

「持続可能な農業の実現に向けて」

「実証実験」と「交流促進」で支援

農林水産省 農林水産事務次官 末松 広行

 日本の農作物は、味や安全性の面で国内外から高い評価を受けています。今後我が国で国際的なスポーツの大会が開催されることもあり、需要はますます高まるでしょう。農林水産省も様々な農政を行っていますが、特に力を入れていることの一つが輸出の促進です。日本の人口減少が進む中、海外市場を取り込むことで農家の方が安心して働ける環境を作れるのではないかと思っています。2019年は輸出額1兆円を目標にしているので、達成に向けてしっかりプロモーションをしなければなりません。

 もちろんスマート農業の支援にも尽力しています。大きな取り組みは二つ。一つ目は新技術の実証実験です。効果が出る保証のない技術や機械を一般の農家の方に使ってもらうわけにはいきません。我々が試行錯誤しながら改良を進めていき、成果が望めるものだけを広めていきたいと考えています。二つ目が農業者と技術者のマッチングです。いままでも「現場の声」と「最先端テクノロジー」を掛け合わせることで、我々では思いもつかないようなアイデアが次々と生まれてきました。農業への情熱を持った多様な立場の人が交流することで、スマート農業の技術がより早く確立するのではないでしょうか。

 農業が発展していけば人も地域も元気になります。おいしいものを食べて健康になった方々が、生きがいを持って農作業に取り組んでいる。そんな場所がもっと増えるように、これからも支援を続けていきたいですね。

「先端技術による農業イノベーション」

無理なく・稼げる農業の実現を

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター エクスパート 三輪 泰史

 現在、多くのメディアで「農業人口が減っている」「耕作放棄地が増えている」といわれていますが、ピンチをチャンスに変える逆転の発想が重要です。農家にとっては使える農地が広がるということを意味しているからです。しかし、耕作面積が増えた分、仕事量が多くなっては、農業の未来は明るいものになりません。労働環境を整えながら、稼げる農業システムを作っていく必要があります。

 そこで重要になってくるのがスマート農業です。ドローンを使って農薬を自動散布したり、無人トラクターで田畑を耕したりと実作業を効率化できるのはもちろん、ビッグデータを利用した収穫予測などもできます。こうした技術を取り入れることで、どんな農家でも「もうかる農業」を実現できるようになります。私たち日本総合研究所は、「MY DONKEY」という自律型多機能ロボットを作って農家の方に利用してもらいましたが、「重いものを運ばなくてよくなった」などの声をいただきました。

 スマート農業がもっと広がれば、みんなの取り組みをシェアできたり、ベテランの方が積極的に弟子をとることができたりと、人と人のつながりがより強固なものになると考えています。体力、ノウハウ、資金、人間関係など様々な問題がなくなることで、農業をやりたい人が誇りを持って仕事に取り組み、農業を好きな人たちが集まって、活発な地域を作る。そんな社会になるように、これから努力していきたいと考えています。

プレゼンテーション

最新技術で「経験と勘」を伝える

株式会社ルートレック・ネットワークス 代表取締役社長 佐々木 伸一

 これまでの日本の農業は経験と勘を頼りに行われてきましたが、それが大きな転換期を迎えようとしています。農業人口が減り、個人の知見が後世にうまく伝わらない可能性が出てきたからです。こうした現状を打破するためにも、スマート農業の普及は重要な課題の一つでしょう。例えば、弊社が提供するAI潅水施肥システム「ゼロアグリ」は経験に頼るところの大きい「水やり」と「肥料やり」を自動化することで、収支の向上や新規就農者の支援を図ります。また、各種データもクラウド上に保存されているので、栽培が「見える化」され、効率の良い農作業を行うことができるんです。実際、システム導入者の多くが収益アップや品質向上に成功しました。高齢化や過疎化など、日本の農村と同様の問題を抱えている国や地域が多数あるので、国内で確立したモデルケースをそのまま利用して利益を上げるということも十分可能だと思っています。

 さらに、スマート農業はSDGs※の達成においても大切な役割を果たすでしょう。適切な潅水による水の節約、食料確保や雇用創出による貧困対策など、持続型社会の実現に向けて多方面から貢献できます。最低限の資源で生産性を向上させるためにも、スマート農業の発展をさらに加速させていかなければなりません。

 我々のような企業や国、農家がお互いに切磋琢磨し、品質にこだわって農作物を作ることで、日本の農業が世界から脚光を浴びるようになればと考えています。

農家の想いまで食卓に届ける

オイシックス・ラ・大地株式会社
統合マーケティング本部 ORD生産者の会準備室 室長 犬塚 龍博

 野菜の個人宅配やミールキットの販売などを行う弊社は、全国約4000の農家さんとお付き合いをしています。しかし、スマート農業を導入している方はまだまだ少ないのが現状です。現在うまくいっている農家さんほど、リスクを考えて最新技術を使うのをためらう傾向にありますね。なので、スマート農業が一般的になるのは、いまの若手が主力になってくる5年後、10年後くらいなのではないでしょうか。ただ、その時を待つばかりではなく、少しでも早くスマート農業が広がるような取り組みをしなければなりません。弊社では様々な勉強会を主催し、経験や知識の共有を図っています。二酸化炭素の濃度によって自動で扉が開閉するハウスを自作されている方のお話は、皆さん興味津々でした。

 また、生産者と消費者をつなぐ活動も行っています。お客さんの投票によって、その年一番おいしかった野菜を決める「農家・オブザイヤー」というイベントは毎回好評。2019年は全自動空調管理のハウス内で育てられた「あめトマト」、2018年はフィルム水耕栽培で作られた「みつトマト」が受賞するなど、最先端技術を用いた栽培が品質の向上につながることを周知するきっかけにもなっているんです。

 農家の方々は強い信念を持って野菜を育てられています。我々がその想いや各農業者のストーリーを伝えることで、消費者の皆さんがより豊かな食事を楽しめるようになればうれしいです。

人にも環境にもやさしい農業を

総合司会・コーディネーター
フリーアナウンサー
政井 マヤ

 「先端技術が創造する未来の農業」と題して行われたパネルディスカッションでは、技術の活用法や課題のほか、最新農業とSDGsの関係、フードロス削減に向けた取り組みについても話し合いがなされました。スマート農業が当たり前になることで「農家・消費者・地球環境にやさしい社会」が実現されることを皆さん期待されている様子。

 司会を務めたフリーアナウンサーの政井マヤさんは「母親として、どのように食育を進めていけばいいのか、いつも悩んでいる。今日の話を聞いて、普段私たちが食べているものがどのように作られ、どのように届けられるのかということに思いを馳せるのが大切だと気付きました。子どもには最新技術の話題をきっかけに農業や食について興味を持ってほしい」と語っていました。

G20 新潟農業大臣会合

世界が一丸となって、持続可能な農業の実現を目指す

 2019年5月11、12日の2日間、「農業・食品分野の持続可能性に向けて-新たな課題とグッドプラクティス」をテーマに、G20新潟農業大臣会合が開催されました。メンバー国や招待国のほか、FAO(国連食糧農業機関)やWTO(世界貿易機関)など、計34の国と機関の代表者が出席。新技術の活用方策や農家の収益向上施策、SDGs達成に向けた取り組み等について話し合いました。

 「次世代の農業を担い革新を起こす人づくりと新技術」、「フードバリューチェーン全体に着目した農家等の収益向上策等」、「SDGsの達成に向けた、関係者の対応方法」の三つが主要論点となったG20新潟農業大臣会合。会合の中では吉川大臣から我が国におけるスマート農業や人づくりへの取り組み状況、東日本大震災からの復興状況等の紹介があったほか、各国が一致団結してアフリカ豚コレラに対処することの重要性なども議題に。広く世界の食料問題について議論が交わされました。

 最終日には「2019年G20新潟農業大臣宣言」を採択。ICT、AI、ロボット工学といった技術の活用を通じて、農業のイノベーションを奨励することの重要性が盛り込まれました。

 また、新潟市内の現地視察においては、自動運転トラクターなど、我が国の最先端技術の実演が行われ、各国の参加者から称賛の声が上がりました。

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