2021年3月24日
未来貢献プロジェクトのオンラインシンポジウム「コロナと、未病と。働く女性のWell‐beingを考える」(読売新聞社主催)が2月17日、ウェブセミナー形式で生配信された。神奈川県立保健福祉大理事長の大谷泰夫さんと女優の杉田かおるさんによる対談や、未病に関する商品を扱う企業の取り組み紹介の後、参加者がコロナと未病について意見を交わした。
- 主催:
- 読売新聞社
- 後援:
- 神奈川県、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本薬剤師会
- 協賛:
- ファムメディコ、住友生命、ファンケル
男性目線の政策に変化を
大谷 泰夫氏(神奈川県立保健福祉大理事長)
未病は、健康か病気かの二分論で考えるのではなく、健康と病気の間で変化する状態を指す。ある日突然病気になるのではなく、予兆があったり、いったん病気になっても治療して日常生活に戻ったりする。
一方で、新型コロナウイルスは従来の二分論で、未病とは対極にある健康課題だ。だが、感染を防ぐために3密を避けて家にこもり、健康を守っているつもりが、運動が減ったり、食生活が偏ったり、社会とのコミュニケーションがなくなったりして、認知症が進行するケースもあるという。コロナと未病を切り離して考えることはできないだろう。
未病といえば、中高年の男性に多いとされる生活習慣病が思い浮かぶかもしれない。だが、女性は生活習慣病になる前から、妊娠や出産をはじめとする生理的な変化の中で家庭や職業生活を送っている。男性よりも若いうちから心身の不調に直面し、生きづらさを感じているのかもしれない。自分の健康問題を訴えるのは難しいことかもしれないが、女性にはより積極的に訴えてもらいたい。
企業が女性を有力な戦力として生かしていくためには、女性のライフスタイルを考えた商品やサービスを開発する発想がないと、立ち行かなくなるだろう。女性の健康問題を女性同士で理解し合うだけでなく、男性も含めて考える必要がある。男性目線で作られた健康政策に変化を求めていきたい。
自身の健康への投資重要
杉田 かおる氏(女優)
運動や食事など、健康に関する正しい知識力を認定する「日本健康マスター検定」の名誉リーダーとして、検定の普及に努めている。勉強を通じ、人生100年時代を楽しく健やかに過ごすには、自分自身の健康リテラシーを上げなくてはならないと思うようになった。
朝早起きして、テレビを見ながら体操している。忙しくて2日間くらい休むと、調子が出ないこともある。やはり毎日コツコツ続けることが大事だと実感している。
美容などにお金をかけていくように、自分の健康に投資していくことも重要だろう。健康でかわいいおばあちゃんを目指して、日々、学んでいきたい。
正しい知識と適切な検査を
浜中 聡子氏(クレアージュ 東京レディースドッククリニック総院長)
吉田 穂波氏(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションスクール教授 産婦人科医・医学博士・公衆衛生修士)
女性専門の外来として14年、更年期症状や加齢に伴う病気リスクなどを見てきた。その中で、早期発見・治療がいかに大切かを痛感してきた。
人間ドックや会社の健康診断などはあるが、性差を踏まえた検査をしている方はまだ限られている。男女共通の検査で終わっているケースがほとんどで、これでは不十分だと感じる。
働く女性の8割は女性特有の症状や病気を抱えているというデータがある。労働損失は、4911億円に上ると推計されている。女性に必要な検査を正しく行うことで、早期発見ができ、予防、治療につなげることができる。そこから、働き方改革や生活習慣の改善につながると思う。仕事と治療も両立しやすくなるだろう。
女性に必要な検査で、子宮・卵巣、大腸、そして乳房の三つの部位に特化して啓発している。絵で表現したときの形から「YOU健診」と名づけている。正しい知識を持ち、適切な検査を受けてもらう必要性を伝えていきたい。
短期目標決め運動習慣に
梅村 好美氏(住友生命 バイタリティ推進室副長)
半年後、1年後にこんな自分になりたいと目標を定めて、ダイエットや筋トレなどをした方もいるだろう。そのとき、目の前のケーキなどの誘惑に負けた経験があるのではないか。
行動経済学でいう「双曲割引」というもので、遠い将来のことより、近いものの価値がよく見えてしまい、それに負けてしまうことを指す。1週間や1か月後など短い期間の目標を設定することで、運動習慣がつくなど成果を出せるかもしれない。特別なことをしなくても、スーパーに歩いて行くなど、日常を少し変えるところからスタートするといいだろう。
住友生命の保険「バイタリティ」は、行動経済学に基づき、リスクに備えるだけでなく、リスクを低減させることを目的にしている。運動をしたり、健康診断を受けたりすると保険料が安くなるなど、継続できる仕組みを取り入れている。保険を通じ、多くの人々を健康にしていきたい。
新習慣に加え サプリ導入も
玉城 賀子氏(ファンケル 健康食品事業戦略グループ課長)
新型コロナウイルスの影響を調査したところ、テレワークをしていた全ての年代で、8割以上の方がコロナ前よりも健康管理の大切さを感じたという回答を得た。
一人でご飯を食べる機会が増えることで量が増え、体重が3キロ・グラム以上増加したという結果もある。また、日光を浴びることで体内で生成されるビタミンDの不足や、マスクをつけることによって肌が赤くなったり、皮脂が減ったりして、肌が敏感になるといった変化もあるようだ。一方で、自宅で一人でできる運動を増やしたという結果も出ている。
環境の変化によって、ダイエットや生活習慣病予防、免疫向上などへのニーズが高まっている。自分の健康は自分で守ろうと意識しているのだろう。
ファンケルは、免疫機能の維持を助けるプラズマ乳酸菌を配合したサプリメントを販売している。マスクや手洗いなどの新習慣に加え、サプリなども取り入れながら、健康を維持してほしい。
パネルディスカッション
コロナ契機の未病を議論
【パネリスト】
杉田 かおる氏 (女優)
浜中 聡子氏 (クレアージュ 東京レディースドッククリニック総院長)
梅村 好美氏 (住友生命バイタリティ推進室副長)
玉城 賀子氏 (ファンケル 健康食品事業戦略グループ課長)
【進行役】
小坂 佳子氏 (読売新聞 大手小町編集長)
シンポジウムの最後には、女優の杉田かおるさん、医師の浜中聡子さん、住友生命の梅村好美さん、ファンケルの玉城賀子さんが、新型コロナをきっかけにした未病にまつわる新聞記事を取り上げながら、パネルディスカッションを行った。進行役は、読売新聞の小坂佳子・大手小町編集長が務めた。
「2020年1月から9月に企業や団体の健康診断を受けた人が3割減った」という記事について、浜中さんは、「女性の方が受診控えが多かった印象がある」と指摘。コロナが原因で亡くなった人のニュースでは、基礎疾患の有無が報道されたことから、「基礎疾患を見つけるのは健診。自覚症状があってからでは進行してしまっているケースもある。病院などは感染対策をしっかりしているので、必要な検査は先延ばしにせず、受診すべきだ」と訴えた。
杉田さんは、「自分のことを知るには健診が大事。代わりを立てることができない仕事なので、常に健康を意識し、自主的に健診を受けている」と話し、「新しいもの好きの健康マニアなので、新しい検査が出てきたら試してみる」と会場を沸かせた。
次にテーマとなったのは、「ストレスで乱れる食習慣」。在宅時間が長くなり、物理的にも精神的にもストレスを抱え、食生活が荒れたり、お酒への依存が問題視されたりしたことに対し、注意を促す記事が示された。
玉城さんは「糖や脂肪の吸収を抑えるサプリメントや、ウコンを配合するサプリも人気が高い。自宅での食べ過ぎや飲み過ぎを気にする方は増えているようだ」と分析。睡眠の質を高めるサプリや、テレワークでパソコンなどの画面を見る時間が長くなった影響か、目の疲労に効くサプリも堅調だという。その上で、「年齢によって必要な栄養素が変わるので、その時の自分が何を摂取すべきかを知ることが重要だ」と話した。
お酒が好きだという杉田さんは、マグネシウムとビタミンDなどのサプリを摂取しているといい、「日々の生活で気をつけることで、健康状態を自分でコントロールできることもある」と話した。
外出自粛が続き、運動不足になることへの対処として、「動画見ながら『家で運動』」を取り上げた記事について、梅村さんは「コロナの影響で、活動量が明らかに減ったというデータがある」と話した。住友生命が配信する自宅でできる運動コンテンツの参加者は、8割ほどが女性だという。「家でできるので、服装やメイクも気にせず、汗をかいたらすぐに風呂に入れる便利さが受けて、好評だ」と話した。
玉城さんは、ファンケル社内で朝の朝礼時に行うストレッチを紹介した。指先を肩に付け、大きく回すだけ。外回し、内回しを各10回するだけでも、体が温まるという。「朝はけだるい時もあるが、ストレッチをすると、頑張ろうという気持ちになる。ちょっと疲れた時などにやってみてほしい」と勧めた。
コロナと未病について意見が交わされたパネルディスカッション