SDGs:すべての人に健康と福祉をSDGs:住み続けられるまちづくりを

2017年2月2日

会場ホワイエには、第一生命経済研究所による「隠れ脳梗塞チェック」や「乳がん触診体験」などのブースも。多くの来場者が参加し、賑わいを見せた。

 日本は世界一の長寿国ですが、一生涯を健康に過ごせているのでしょうか。「未来貢献プロジェクト—未病を考える—『がん』・『循環器病』・『長寿医療』のこれから」をテーマに、日本を代表する3つの国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)が一堂に会するセミナーを東京・仙台・福岡で開催。「寿命=健康寿命」とする重要性と、そのために何ができるのかについて参加者らは耳を傾けていました。

主催:
読売新聞社
共催:
国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センター
協賛:
第一生命保険株式会社
後援:
[3会場共通]内閣府、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本薬剤師会
[東京会場]東京都、東京都医師会 [仙台会場]宮城県、仙台市医師会
[福岡会場]福岡県、福岡市、福岡県医師会、福岡県歯科医師会

12.9 in 東京会場(学習院創立百周年記念会館正堂)

3つの国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)が一堂に会し、現代の国民病について解説します。

ゲストスピーチ 「新たな健康領域『未病』について」

健康リテラシーを高めよう

大谷 泰夫氏 (前内閣官房参与、日本健康生活推進協会 理事長)

大谷 泰夫氏

 病気か健康かの二つの概念ではなく、最近はその中間域にあたる「未病」という考え方に新しく注目が集まっています。健康寿命を延ばすために、この「未病」の状態できちんと健康意識を持つことが重要です。生きる目標を意識することで健康への意識も高まります。これからは、自分で自分の健康を考える時代です。健康リテラシーを高め、自主的な健康づくりに役立ててほしいと考えています。

協賛社あいさつ

健康寿命の延伸に尽力

渡邉 光一郎氏 (第一生命保険株式会社 代表取締役社長)

渡邉 光一郎氏

 第一生命には戦前から当時の国民病であった結核予防に尽力する等の歴史があります。近年では、日本を代表する四つの国立高度専門医療研究センターと包括的連携協定を締結し、現代の課題である「健康寿命の延伸」に貢献すべく、最新・正確な情報をお客さまにお届けし、また、地域毎の課題に合わせて自治体との提携による協力等の社会貢献活動を全国で展開しています。これからもお客さまの「一生涯のパートナー」として全力で取り組んで参ります。

講演1 がんの原因と予防

正しい知識と検診でがん予防を

中釜 斉氏(国立がん研究センター 理事長)

(なかがま・ひとし)ヒト発がんの環境要因及び遺伝的要因の解析とその分子構造に関する研究に従事。分子腫瘍学、がんゲノム、環境発がんが専門。2016年4月より現職。

 日本では、2人に1人が一度はがんになり、3人に1人ががんで亡くなるなど、がんは今では一般的な疾患になっています。正常な細胞に傷が入ってがん細胞ができ、全身に転移するまでには数十年かかるとされますが、進行を止めることも不可能ではありません。最近は、異常な遺伝子だけをターゲットにする薬が開発され、より効果的に進行を止められるようにもなっています。

 とはいえ、がんの発症要因を知り、予防することも重要です。発症要因は、遺伝要因と環境要因の二つに分けられ、大部分のがんは生活環境や生活習慣の環境要因が6~7割、体質等の遺伝要因が3割の比率で寄与するとされます。よってがんの予防には、生活環境、生活習慣が重要です。

 日本人の場合、喫煙、飲酒、感染症が発症の大きな要因となっています。例えば、喫煙者は非喫煙者よりも 年程度寿命が短く、しかも長期間、大量に吸うほど肺がんのリスクが高まります。ただし、禁煙すると肺がんリスクも下がり、 年以上禁煙を続けると非喫煙者と同程度まで低下します。

 ピロリ菌や肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がんの原因)など感染症が原因のがんも多いです。いずれも早期に要因を発見し、早い段階で治療を行うことで発症を抑えることが可能です。また、糖尿病患者は健康な人に比べてがんになるリスクが高くなることもわかっています。

 がんを予防するには、がんの原因を知り、それを避ける生活の見直しを行うこと、そして検診で早く発見することが重要です。当センターの研究成果をもとに、がん研究振興財団がまとめた「がんを防ぐための新 か条」をご紹介します。  がんを予防することは健康寿命を延ばすことにもつながります。「新 か条」を参考に、生活環境、生活習慣を見直してください。

講演2 循環器病予防と治療のいま

自己診断での早期発見も有効

小川 久雄氏(国立循環器病研究センター 理事長)

(おがわ・ひさお)熊本大学医学部循環器内科教授、国立循環器病研究センター副院長などを経て、2016年より現職。循環器病全般と多施設共同臨床研究が専門。

 心疾患と脳血管疾患は、がんとともに日本人の3大死因のひとつです。昨年4月に起きた熊本地震では、車中泊する人のエコノミークラス症候群が大きな問題になりましたが、これも循環器病のひとつ。長時間同じ姿勢で動かずにいることで足の静脈に血栓ができ、起き上がったときなどに移動して肺の血管に詰まり、肺塞栓症が起こります。座った姿勢は平坦なところで寝るよりも足を動かしにくいため、静脈環流が悪くなることが原因です。寝たきりで足を動かさない人にも起きるため、手術後の長期臥床時や介護の現場でも問題になっています。

 狭心症や心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患は、いずれも動脈硬化が原因で起きる病気です。心臓の血管が細くなると狭心症、血栓が詰まると心筋梗塞で、後者は心筋が壊死し戻りません。心筋梗塞の原因は、男性の場合、1位が高血圧、2位が喫煙、3位が糖尿病。女性の場合には、喫煙、糖尿病という順番になります。また、40代の働き盛りの場合は、糖尿病とコレステロールが主な要因です。つまり、生活習慣と減塩などの食事を見直すことで予防ができます。

 なお、心停止から3~4分で脳障害が始まりますが、心臓マッサージや除細動器などで対処できます。除細動の開始が1分遅れると死亡率が10%高まることも覚えておいてください。

 心臓の血栓が脳に詰まって起きる心原性脳塞栓症は、大きな脳梗塞を起こす病気です。原因のひとつとなる心房細動を早期発見し、治療すれば予防できます。ちなみに、心房細動は自己診断が可能です。手首に指をあてて脈を測り、リズムが不規則なら要注意。血液がよどみ、血栓ができる可能性があります。循環器内科を受診し、検査や治療を受けましょう。

講演3 認知症の予防とケア

鳥羽 研二氏 認知症はもはや他人事ではない

鳥羽 研二氏(国立長寿医療研究センター 理事長)

(とば・けんじ)日本老年医学会理事、日本老年学会理事、日本認知症学会理事のほか、厚生労働省の認知症、終末期などの研究班班長を務める。専門は老年医学。認知症に関する著書も多数ある。

 65歳以上の認知症罹患率が15%を超え、両親のいずれかが罹患する確率が96%となった今、認知症は他人事ではありません。

 がんや循環器病同様、認知症も予防と早期発見が重要です。予兆としては、同じ話を繰り返す、探し物が増えるなどがあります。また、歩く速度が遅くなった、筋力が衰えた、痩せてきたなどの身体症状も見られます。例えば、昨日の夕食のメニューをたずね、思い出せないなら認知症を疑ってもいいかもしれません。

 予防法は、生活習慣の改善も重要ですが、中でも頭を使うこと。読書や夫婦で今日一日を振り返る。足踏みをしながら数を数えるなど、頭と体を同時に使う「コグニサイズ」は、脳が活性化するので非常に有効です。趣味のスポーツを続けるのもいいでしょう。週2~3回、1回に30分~1時間程度、行うようにします。

 知的活動には、認知症の進行を遅らせる効果があります。例えば、「回想法」といい、古い道具の使い方をたずねたり、アルバムを見ながら昔を思い出すことで、前頭葉の血流が増えることが確認されています。家族だけでは対応が難しい場合には、「認知症短期集中リハビリテーション」の活用も。介護老人保健施設入所から3か月、週3回、1回20分以上のリハビリを受けることができます。

 認知症では、患者を抱える家族の孤立や介護疲れも問題です。これについては、すべての市町村に「認知症初期集中支援チーム」が設置され、きめ細かな相談と粘り強い支援を行っています。認知症の人と家族を支えるボランティア「認知症サポーター」も動き始めています。認知症は予防も大切ですが、罹患後のケアも大切です。認知症の人が地域で安全に暮らせるよう、何ができるかを考え、他人事ではない気持ちの共有が必要です。

ダイジェスト 9.1 in 仙台会場

 仙台会場(9月1日、仙台国際センター)では、冒頭のあいさつで第一生命保険 執行役員・生涯設計教育部長の瓜生宗大氏より、東北6県の食文化の背景を紹介し「塩分摂取の過多は病気になるリスクが高い」と説明、皆さまの健康第一を考え、地域に合った医療情報を発信する重要性を紹介した。引き続き、国立がん研究センター がん対策情報センター長の若尾文彦氏、国立循環器病研究センター 病院長の峰松 一夫氏、国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長の佐治直樹氏による講演と、タレントのアグネス・チャン氏による乳がん体験談が語られた。

 若尾氏は「知れば安心 がん情報」をテーマに講演。がんに関して正しい情報と商品の勧誘など悪意のある情報が混在していると指摘。「がんを確実に治せる代替治療や健康食品はない。治療に有害な場合もあるので、利用する前は必ず主治医に相談してほしい」と訴えた。峰松氏は「心臓病と脳卒中~知っていれば怖くない~」で、心臓発作と脳卒中の症状(顔の片側が下がる、片腕に力が入らない、言葉が出ない、ろれつがまわらない)を紹介。「治療の遅れが命に関わる」とし、症状が表れたらすぐに救急車を呼ぶ重要性を強調した。

 佐治氏は「認知症とその予防」で、軽度認知障害(MCI)を紹介。MCIは発症から5年程度で約半数が認知症になる可能性があるものの、記憶機能や注意力、実行力(計画力)を維持向上することで「MCIから回復することもある」と説明した。

【あいさつ】
瓜生 宗大氏(第一生命保険 執行役員・生涯設計教育部長)

【講演1】
若尾 文彦氏(国立がん研究センター がん対策情報センター長)

【講演2】
峰松 一夫氏(国立循環器病研究センター 病院長)

【講演3】
佐治 直樹氏(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター副センター長)

【トークショー】
アグネス・チャン氏(歌手・エッセイスト・教育学博士)

ダイジェスト 12.21 in 福岡会場

 福岡会場(12月21日、福岡市民会館)では、国立がん研究センター がん対策情報センター長の若尾文彦氏、国立循環器病研究センター 理事長の小川久雄氏、国立長寿医療研究センター 副院長で老年学・社会科学研究センター長の荒井秀典氏らが講演を行った。

 開会にあたり、第一生命保険 執行役員・生涯設計教育部長の瓜生宗大氏があいさつ。「持続可能な社会を築くためには、私たちの健康寿命を延ばすことが重要」と強調、元気で長生きするための秘訣は「生活の質を改善し、寿命=健康寿命」を保つことが大切と説明した。

 若尾氏は「知れば安心 がん情報」で、がんへの誤解から「『がん』の診断を受けると仕事を辞める、あるいは辞めさせられる人が多く、社会問題になっている」と指摘。発病後も働き続けている人や企業によるサポート事例をWEB発信していることに触れ、「がんを正しく理解することが必要」と訴えた。小川氏は「循環器病予防と治療のいま」をテーマに講演。「介護の現場で心不全が問題になっている」ことを紹介した。階段をのぼると息切れがする、尿量の減少、手足の冷え、全身の倦怠感、体重の急増、むくみなどの症状が続く場合は心不全の可能性があるとし、「心不全は治療ができる病気。異常に気づいたら早く診断を受けることが重要」と強調した。

 荒井氏は「介護を必要としないための認知症・フレイル予防」で、「フレイルとは、健常と要介護の間の状態で、要介護状態や認知症になる可能性が高い」ことを説明。「毎日8000歩を目標に歩き、外出が困難なら室内でストレッチを行う。食事は毎食タンパク質とカルシウム、ビタミンDを取り、ビタミンDが活性化するよう1日20分は日光にも当たる。また、奥歯でしっかりかむことが認知症・フレイル予防につながるので歯科検診は必ず受けてほしい」と呼びかけた。

【あいさつ】
瓜生 宗大氏(第一生命保険 執行役員・生涯設計教育部長)

【講演1】
若尾 文彦氏(国立がん研究センター がん対策情報センター長)

【講演2】小川 久雄氏(国立循環器病研究センター 理事長)

【講演3】荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター副院長 老年学・社会科学研究センター長)

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