伊勢志摩サミットで未来をひらけ!集会 in横浜 2016年1月14日(木)ラジアントホール

2016年2月12日

 5月26・27日に開催される「伊勢志摩サミット」を前に、現在の日本、そして世界が抱える課題について語り合う〝集会〟が1月14日、横浜市内で催されました。「エネルギー」「環境」、そして「世界経済」に関して、有識者らによって展開されたパネルディスカッションの内容等についてご紹介します。

主催:
読売新聞社
共催:
内閣官房

専門分野を超えて活発な議論を展開

 集会ではまず、これまでに日本で開催された5回のサミットについて紹介する映像「未来をひらけ!伊勢志摩サミット」を上映。当時の社会情勢や課題、日本の取り組みについて、懐かしく振り返りました。

 その後に行われたパネルディスカッションには、各分野に精通する3名の専門家が参加。モデレーターを務める元外務大臣・川口順子氏による進行のもと、各人の専門分野を超えた、横断的で白熱した議論が交わされました。

パネルディスカッション

サミットの歩みを振り返る
伊勢志摩サミットに向け、いま何に取り組むべきか。

田中 伸男氏(公益財団法人笹川平和財団 理事長、国際エネルギー機関(IEA)元事務局長)
北野 大氏(工学博士、淑徳大学人文学部 教授)
勝間 和代氏(経済評論家、中央大学大学院 客員教授)

【モデレーター】
川口 順子氏(明治大学国際総合研究所 特任教授、前参議院議員、元外務大臣、元環境大臣)

信頼関係を深め世界に結束示す

川口 いよいよ5月に伊勢志摩サミットが開催されますが、サミットとはどのようなものだとお考えですか?

勝間 〝世界規模の町内会〟と例えられるかもしれません。町内会では住人たちが話し合って、ゴミ置き場の掃除や雑草取りなど、町を維持するためのそれぞれの役割を決めます。その規模がものすごく大きくなったものがサミットだといえるでしょうか。

田中 いくつかのサミットに参加して感じたのは、先進国の首脳たちの間で、ファーストネームで呼び合えるような深い信頼関係を構築できるかが、大きなポイントだということ。それが結果として様々な課題の解決に向けた第一歩となるのです。

川口 限られた先進国のみが集まるからこそ、結束を強めやすく、そしてそれを世界に示していくことができるのかもしれませんね。

温暖化問題解決に技術と制度で貢献

川口 昨年の11月から12月にかけてパリでCOP21が開かれましたが、これまでのサミットでも環境分野で多くのことが話し合われてきました。

北野 地球温暖化問題は重要な議題の一つです。1992年の地球サミットにおけるリオ宣言では、あらゆる国に責任がある一方、その重さが違うことを示す「共通に有しているが差異のある責任」という表現が登場し、2007年には地球温暖化問題における戦略「美しい星50」を日本が提案しました。これらを踏まえて2008年の北海道・洞爺湖サミットでは「2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減する」という目標が示されたのです。我が国は、技術によるブレイクスルーや様々な制度による後押しを進め、目標の達成に貢献していかなければなりません。

田中 環境に寄与する技術の開発は、伊勢志摩サミットでも主要なテーマの一つになり得るでしょう。イノベーティブな取り組みにはどうしてもコストがかかるため、資金力に優れた先進国が率先して行う必要があるのです。CO2を地下に封じ込める「CCS」という技術の活用などについての議論が期待されますが、水素社会の実現に向けては、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI」が発売されたことで、日本は世界から先行的なイメージを持たれ始めています。

勝間 再生可能エネルギーについては、実施国によっては機能しなかったケースもある「FIT(固定価格買取制度)」の是非とともに、生産性の向上についての検討が求められます。現在の太陽光や風力を使った発電は不安定なものであり、火力発電によるバックアップに頼らざるを得ません。

日本の省エネに改善の余地あり

川口 いま日本では、ほとんどの原子力発電所の稼働が停止しており、環境面への配慮から化石燃料も積極的には使いづらくなっています。今後、エネルギーをうまく使用していけるのでしょうか?

田中 現在はエネルギー源の約9割を中東から輸入しています。第2次石油危機の時のような事態を避けるためにも、依存度を減らしていく必要があるでしょう。また、日本は省エネ先進国ではありますが、住宅の分野で他国に遅れをとっていたり、その住宅や自動車、交通など、業界ごとに異なる省エネ基準が設けられていたりと、省エネへの取り組みにおいて、まだ改善の余地が残されています。

北野 電源構成のうちの原子力発電の割合を増やすことも想定されますが、その場合はトラブルが発生しても常に安全な状態に制御される「フェイルセーフ」と呼ばれるシステムのもとで発電を行うことが絶対条件です。

田中 日本も含めた先進国では、今後は当分、エネルギー需要が減少していくと考えられています。伊勢志摩サミットでは、これから需要が増える途上国、特に中国とインドにかかる問題が議論されるべきかもしれません。

技術移転で途上国をサポート

川口 中国経済の停滞や株価の下落などが話題となっている世界経済。伊勢志摩サミットで議題に上るべきテーマとは?

勝間 経済の発展が進んでいる間は、国民の貧富の差が縮まっていく傾向にあるのですが、いま世界全体で経済成長が鈍化しています。つまり全世界的に不平等が広がっているのです。これを解決するためには、途上国への技術移転が有効でしょう。例えば、技術移転によって農業の生産性が上がれば、直接的な援助を行うよりも、根本的に問題を解決することができるのです。伊勢志摩サミットでは、技術移転に関する枠組みについての提案があることを期待します。

川口 お三方の話を聞いて「環境」「エネルギー」「世界経済」の各分野において〝技術〟がキーワードになっているように感じました。あらゆる技術開発を進めて世界に広げることが、日本の重要な役割なのでしょう。

北野 これまでの〝物の豊かさ〟ではなく〝心の豊かさ〟を重視する価値観へと移行していくことも大切です。次の世代へよりよい社会を引き継ぐ責任を自覚すれば、自ずと行動も伴ってくるのではないでしょうか。伊勢志摩サミットでは、日本独自の〝もったいない〟という言葉を世界の首脳に投げかけてほしいですね。

田中 主催国としては、いかにリーダーシップを発揮するかがカギです。今回のサミットを存在感を示す機会とし、各国をつなぐ〝顔役〟になっていくことを望みます。

勝間 一般の皆さんも積極的に伊勢志摩サミットに関わってください。サミットの話題について周りの人と話すだけでも間接的に参加したことになりますので、全国民でこの素晴らしい機会を盛り上げていきましょう。

当日の様子は政府広報オンラインよりご覧いただけます。

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