伊勢志摩サミットで未来をひらけ!集会 in東京 2015年11月27日(金)ベルサール飯田橋駅前

2015年12月25日

 2016年5月26・27日には「伊勢志摩サミット」が開催されますが、過去のサミットにおいて、各国の首脳は何を主張し、何を決めたのでしょうか。
これまでに日本で開催された5回のサミットで主要テーマとなった「エネルギー」「市場開放」「環境」「IT技術」に関して、日本の取り組みと現在に続く課題について語り合う“集会”が先月、都内で催されました。

主催:
読売新聞社
共催:
内閣官房

サミットとともに進化してきた日本

 集会ではまず、これまでに日本で開催された5回のサミットについて知るための25分間の映像「未来をひらけ!伊勢志摩サミット」が上映されました。この映像では、東京サミット(1979年)で「石油の消費を減少させ、石油以外のエネルギー源の開発を促進する」という東京サミット宣言が採択されたことや、環境・気候変動への対策などについて話し合われた北海道洞爺湖サミット(2008年)において議長国・日本が議論をリードしたことなどを紹介。来場者は、当時の時勢を懐かしく振り返りながら、各課題について理解を深めました。

パネルディスカッション

サミットの歩みを振り返る
伊勢志摩サミットに向け、いま何に取り組むべきか。

 パネルディスカッションには各分野に精通する4名の専門家が参加。コーディネーターを務めるフランス文学者・荻野アンナ氏による進行のもと、それぞれの分野における現状や課題、見通しについて論じ合いました。

コーディネーター】
荻野 アンナ氏(フランス文学者、小説家、慶應義塾大学文学部教授)

エネルギー 課題への対処が強みを生む

嶋津 八生氏(ジャーナリスト、元NHK解説委員)

 1973年の第1次石油危機によりエネルギー価格が高騰し、インフレと不況が同時に起きました。それがようやく収まってきた頃に、第2次石油危機が発生し、回復しかけていた世界経済が再び低迷。そんな中、エネルギー問題を最大のテーマとして開催された1979年の東京サミットでは、先進各国の原油の輸入量に上限が設けられることになりました。以降、日本はエネルギーの多様化と省エネの推進によって「脱石油」に取り組みましたが、そのことは結果的に、日本の産業の競争力強化にもつながったと思います。

 今後は2050年、2100年に向けて、さらに飛躍的な技術革新に取り組むことが必要でしょう。個人のレベルでは、極端にエアコンの使用を控えたりすると熱中症なども心配されますから、住宅に断熱材を使用するなど、無理のない省エネを心掛けていくことが大事だと思います。

環境 今後のさらなる技術と社会の革新に期待

江守 正多氏(国立環境研究所 気候変動リスク評価研究室 室長)

 2008年に開催された北海道洞爺湖サミットでは地球環境問題が重要な議題となりましたが、その後のリーマン・ショックや東日本大震災に伴う原発事故により、地球環境問題が話題に上る機会は減少してしまいました。

 世界気象機関の発表では、今年の世界の平均気温は観測史上最高になり、産業革命前の平均からの気温上昇が1度を超える見通しです。地球温暖化をくい止めるためには、2050年頃に世界におけるCO2の排出量を半分にし、今世紀中にはゼロにしなければなりません。最近では、再生可能エネルギーの普及も進みつつありますが、今後はCO2を出さずにつくるエネルギーの割合をさらに増やしていって、最終的には100%にすることが必要でしょう。たとえば、化石燃料を燃やす際にはCO2を大気に出さずに高圧で地中に封じ込めてしまう技術「CCS」の実用化も必要になってくるでしょう。

市場開放 日本の食の魅力を世界に発信する好機

木内 博一氏(農事組合法人和郷園 代表理事)

 私たちは「春に芽を出し、夏に茂り、秋に実をつけ、冬に枯れる」という自然のサイクルの中で作物を育てたり、きれいな水を低いコストで使うことができます。この「四季」と「きれいな水」は、日本の農業の大きな強みです。

 海外とのビジネスに関しては、車を海外の工場で生産して現地で販売しているのと同様に、世界へ出向いて〝適地適作〟で生産することも考えるべきでしょう。日本の食は世界でも高く評価されていますから、農業は他の産業とも連携をし、生産からサービスまでをトータルで提供していければ良いと思います。

 来年の伊勢志摩サミットにおいても、日本の農業のあるべき姿を世界に打ち出し、〝攻めの農業〟の元年となることを期待します。

IT技術 IT技術でより豊かな社会を

手塚 悟氏(東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 教授)

 IT技術は今後、エネルギー問題や環境問題の解決にも貢献していくでしょう。例えば、最近の住宅では、ネットワーク上で電力の使用状況を把握・コントロールできるようになりつつあります。これにより、電力使用のピーク時間帯などの情報が蓄積されて、予測をすることが可能になり、最終的にはCO2の削減にもつながっていくわけです。

 一方で、ITを使いこなせる人とそうでない人との間に生じるデジタル・デバイド(情報格差)の問題も発生しており、2000年の九州・沖縄サミットで発表された沖縄憲章でも、その解消の重要性が強調されています。伊勢志摩サミットにおいても、サイバー攻撃などから暮らしを守るための方策等について、しっかりと検討してもらいたいと思います。

当日の様子は政府広報オンラインよりご覧いただけます。

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